五十音お題。
くるっくー帝人君と臨也)
「鳩はいい、野良猫も素晴らしい生き物だ。そうは思わないかい? 帝人君」
「はぁ……」
臨也さんは理由はてんでわからないけど、上機嫌そうに笑いながら話しかけてきた。一体全体彼は週に何回、大嫌いな池袋に足を運んでいるのだろうか、と不思議になる。
「やだなぁ、そんな湿気た返事をしないでよ。別に取って食おう、なんて思ってないんだし」
ちょっと、話をしよう。と公園の入り口に立てられた車の侵入を防止するフェンスわ指差しながら臨也さんは言った。どうやらそこに座るという意味なのだろう。
「臨也さん。外にいると平和島さんに見つかっちゃいますよ」
「そうかも知れないね。じゃ、近くに喫茶店あるからそこに行こうよ」
顔を少しひきつらせながら(手持ちのお金が少ないと見える)指さされたお店へと、向かう事にした。なんだか悪い気がするのが半分と、ラッキーと思う面が半分である。
「そうですね。ところで臨也さん、鳩やら猫やらどうしたんですか?」
「あぁ。それは、さぁ」
窓の外が見えるように設置された、カウンター席に並んでアイスティーをちゅるちゅると啜っている、僕ら二人はどう他人から見えるのだろうと漠然と考えた。そうしていれば真っ黒な服に身を包んだ自称新宿の情報屋はにやにやと笑って、外を首を上下に動かして歩いている鳩を指さす。
「鳩とか野良猫とかって、自力で生きていくのは難しい生物だ。けど、どうして大量に繁殖していると思う?」
「簡単ですよ。僕らが餌を与えてしまうから」
外に見えた野良猫を指差せば、臨也さんは満足そうに笑った。そこにはベンチに座った男性が、食べているものを少しだけではあるが与えている姿がある。微笑ましいと言えば微笑ましいのだが、どことなく危機を覚える姿であった。
「そうだ。その通りだよ、帝人君! 俺の大好きな人間は、動物の環境を変えてはならないと言い続けているのに、影響を与えているんだよ。可笑しいと思わないかい? 凄く滑稽で溜まらないんだ!」
どこか熱の籠もった発言をする姿に回りの人は白く冷たい目で見ていたが、僕には臨也さんは人に対しても野良猫や鳩のように考えているのでは、と恐れた。