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Lovin 'you after CCA 5 〈後編〉

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「でも…、あの子はあの人にそっくりだから…。」
アムロはシーツを握る手に力を込める。
常に先を見越して危険を回避し自衛する。普段はかなり慎重ではあるけれど、攻撃が最大の防御だと思われる時には大胆な行動を起こす。
それはもちろん父親であるシャアから受け継いだ頭脳や才能によるものだ。
『母や妹を守りたい。』その想いが彼にそんな行動を起こさせる。そんなところもそっくりだ。
「無茶な事をしなければ良いけれど…」
「大丈夫だよ。」
いつの間に現れたのかアルが病室の扉を閉めながらアムロの元へと足を進める。
「あの頭脳やカリスマ性は間違いなくクワトロ大尉から受け継いだものだけど、人の心に聡くて、いつも自分よりも他人を優先してしまうところはアムロにそっくりだよ。」
「アル…」
「それにクワトロ大尉と違うのは、頼れる大人が周りに沢山いる事だよ。それは大きな違いであり、何よりも大切な事だ。」
そう、シャア…いやキャスバルには頼れる大人が居なかった。父親の死後、庇護してくれる筈の母は優しくはあったがとても弱い人だった。
養父のテアボロ・マスも頼りになる人物だったがシャアを理解する事は出来なかった。
その為、全てを自分一人で背負い、母や妹を守らなければならなかったシャアのその生き方は次第に心を蝕み、自分を追い詰め、母の死をきっかけに復讐という行為へと走らせてしまった。
心に憎しみと孤独を抱えたシャアはララァを、アムロを求めた。自分を包み込み理解し支えてくれる存在を。
しかし、そのララァを喪い、アムロに手を振り払われ、彼はその類稀な才能を暴走せた。

「カイルはクワトロ大尉とは違う。僕たちがあの子を支えてあげられる。だから心配しないで。」
アルはアムロに微笑み掛けると、横に居るライラの頭を優しく撫ぜる。
ライラもアルの気持ちを感じ取るとアムロの手を握る。
「うん。ありがとう、アル、ライラ」
かつて、カイルがシャアの様にジオンの血に人生を狂わされない様にとシャアの手を振り払った。
あの時、自分だけで抱え込まずにもっと周りをよく見ていたらシャアの手を取れただろうか…。シャアを苦しませずにいられただろうか…。カミーユもあんな事には…。
傍に立つカミーユを見上げながらシーツを握る手に力が込もる。
『カミーユが元気になってくれて本当に良かった…。』
そんなアムロの思惟を感じ取り、カミーユが優しく微笑む。
「アムロさん。僕はもう大丈夫です。だからそんな顔しない下さい。」
「うん…。」
「さぁ、それよりもこれからが勝負ですよ。今からカイル君の作戦を伝えます。」
カミーユがグリプス戦役時の戦士の顔になる。
皆、その真剣な顔に息を飲み、これから起こるテロに立ち向かおうと心を引き締める。


その頃、病院に到着したジュドーはロビーを見渡していた。
「怪しい奴って言ってもなぁ。病院って少なからずみんな負の感情を持ってるから分かりづらいんだよなぁ~」
ロビーを歩きながら寒さにブルリと震える。
「なんだ?チョット冷房効きすぎじゃないか?」
他の患者も会計や薬を受け取ると早々に立ち去る。待っている患者もロビーで待つのではなく隣のフロアにある暖かいサンルームへと移動してそこで待っていた。
ジュドーは、ふとロビーに残っている人々に目をやる。
そこには私服を着ているが総帥が送り込んだであろう特殊部隊と、妙に時間を気にして患者にしては体調が良さそうな落ち着きのない男たち。
そして、その男たちの奥で妙に禍々しい気配を放つ中年の男。身なりのいい服装で、そのふとした動きは軍人のそれ。
ジュドーはカイルのプロファイルにあまりにも一致する男に息を止める。
『間違いない、こいつだ。』
そして、カイルの確かなプロファイリングに感嘆の声を上げる。
「すげぇな。」
それにこのロビーの状態はおそらくカイルの指示だ。患者達を混乱させる事なくロビーから遠ざける為わざと冷房の設定温度を操作している。全員は無理だとしてもかなりの人数をロビーから遠ざけられている。
そして、病院スタッフにも気取られぬ様に特殊部隊が包囲網を広げる。
ジュドーはテロリスト達に気付かれない様にその場を後にしカイルに報告する。
《ジュドーさん。ありがとうございます。流石ですね。》
カイルは端末を操作しジュドーから報告のあった人物に監視カメラを向けて姿を確認する。
そして、ハッキングした連邦のデータと照合して素性を突き止める。
《間違いありません。地球連邦軍 ニュータイプ研究所管理官 ブラウン大佐です。》
「ブラウンってアムロ隊長が連邦に復帰する時真っ先に被験体になる事を要求してきた奴だ!人の弱みに付け込んで散々隊長を!!」
アムロが連邦に復帰する際、シャイアンを脱走した事を咎めない代わりに連邦が要求してきたのはアムロにニュータイプ研究の被験体になる事だった。
アムロは復帰後、週に数回研究所に連れて行かれた。そして、その翌日はまともに歩く事も出来ないほどボロボロな状態だった。
そのせいでアムロの心臓は酷く弱ってしまった。あのアクシズショックや出産に耐えられたのはまさに奇跡だ。
ジュドーは拳を握り締め唇を噛み締める。
《ジュドーさん。落ち着いて…。冷静さを欠くと物事を正確に判断できません。》
「カイル…」
《この作戦を成功させる為にはジュドーさんの力が必要です。あの時はお母さんを守れなかった…でも今度は何があっても守りたい。》
「……」
ジュドーは深呼吸をすると心を落ち着ける。
「悪い、もう大丈夫だ。次はどうすれば良い?」
《今からお母さんの病室に行ってカミーユさんと合流して下さい。》
「了解。」
ジュドーは踵を返すと病棟へと急いだ。

「隊長!!」
勢いよく扉を開けるジュドーにアムロが目を見開く。
そして、手招きして呼び寄せるとゴツンと一発頭を殴る。
「痛てっ!」
「ジュドー、ここは病院だよ!騒がしくしない!」
「ううう。すみません」
そのジュドーをクスクス笑う声がする。
声の方を見ると、そこには昔、戦争で心を壊し、一人では何も出来ない状態だったカミーユがしっかりと自分の足で立ち、こちらを見つめていた。
「カミーユ!!」
ジュドーはカミーユの元に駆け寄ると思い切り抱きしめた。
「ジュドー!?」
突然の抱擁にカミーユが驚いて声を上げる。
カミーユよりも少し背の高いジュドーはバンバンとカミーユの背中を叩きながら「良かった、良かった」とカミーユの元気な姿を喜ぶ。
そんなジュドーにカミーユも「ありがとう」と答えた。

「感動の再会のところ申し訳ないが話をしても良いか?」
「総帥!?」
腕を組み、呆れた顔をして二人を見ているシャアにジュドーが驚きの声を上げる。
「何で総帥自らこんなトコにいるんだよ!危ないだろうが!」
思わず敬語も忘れて叫ぶジュドーに、シャアは思い切り嫌な顔をする。
「アムロの危機に総帥府でじっとしていられる訳がないだろう?」
「いや、いや、いや。でも立場ってモンがあるでしょうが!?それに普通トップっていうのは安全な所で指示を出すんじゃないの?」
「指示ならカイルが出している。」
何か文句があるか?と言わんばかりに答えるシャアにジュドーは言葉を失いアムロを見つめる。
作品名:Lovin 'you after CCA 5 〈後編〉 作家名:koyuho