天衣創聖ストライクガールズ 第二章:ターニャ・ナッツ
「そういうもんだと思って。エクスタシオは女性の体の方が馴染むからって言われてはいるけど。」
「なんだそのエロゲみたいな設定・・・ん?そうなるとその状態からエクスタシオを取り出すにはどうしたらいいんだ?」
「・・・保有者を、殺すのよ。」
それを聞いた龍之介は憤慨した。
「ふっ・・・・・・・・ざけた話だなおい!彼女たちは承知の事なのか?それ!」
「洗脳は伊達じゃないって事ね。」
「なんだよ・・・なんなんだよそれ。ますますエクスタシオ渡しちゃいけないって話になっちまったな・・・てか、考えてみたら俺も他人事じゃないんだよな。俺ってさ・・・一生このままなのかな。」
「それは大丈夫。龍之介さんの自己治癒力で少しづつエクスタシオの負担は減っているわ。そして最後に完全に体が治ったらエクスタシオは龍之介さんの体を離れるわ。」
「それっていつごろ・・・なのかな。」
「分らないわ。即死してしまうほどの大怪我を治癒するって聞いた事無いからどれだけ掛かるか・・・」
「OK。それでいいや。いつかは元通りになるってんならそれで充分だ。」
「およ?そう言えばセフィーナお姉さまは?」
そのキリスの一言で一同はその場からセフィーナがいつの間にかいなくなっている事に気がついた。
「頭を冷やしてくるって言ってたぞ。」
そう、セラを除き。
そのころセフィーナはひとり、日も落ちかけて薄暗くなった旅館近くの浜を歩いていた。
「なんで私、あんなに取り乱しちゃったんだろ・・・マスター、変に思わなかったかな・・・」
その口を突いて出るのは昼間の醜態の後悔の言葉ばかりだった。
「今日、はっきりわかった。私、マスターの事好きなんだ・・・でも、いつの間にこんな好きになってたんだろ。」
彼女は龍之介のいい所を数えてみる事にした。
「まず、顔。・・・これは普通よね。身長も・・・普通だし、外見的には本当に普通な人なのよね。でも、竹刀振ってる時はかっこいいし、優しい人だし、ちょっとエッチな所あるけど、それで逆に照れたりするのがかわいいし・・・それにセラ助けた時は本当にかっこよかった!感動したもん!」
「セラ・・・裏切り者の名前か。」
そこにいきなりセフィーナの背後から声が掛かった。彼女は驚いて振り向くが、声の主を見る前のその目に大量の山吹色の光が飛び込んだ、と思った瞬間その体を重い衝撃が走り、彼女の意識は途切れた。
そのころ。旅館の露天風呂ではセフィーナ以外の女性陣が入浴中だった。
「ミ~ン~ト~お姉さまっ!」
浴槽に浸かっている四人。そのミントの両胸を背後に回り込んだキリスががばっと掴んだ。
「きゃあっ!キ、キリスちゃん何を!ちょ、ちょっとやめなさいって。」
「ぐふふふふ、たまんねえですこの乳。どうですか?ええのか?ええのんか?」
揉みしだきながらなぜか関西弁が混じるキリス。
「ちょっと、ほんとにやめ、きゃうん!先っちょはだめえ!」
「本当に仲良くなったわね、この二人・・・もう、悪ふざけも程ほどにしときなさいな。それからセラ、うん、別に霊視はしなくていいから。」
一方男湯。こちらには龍之介が入っていたが、彼は女湯から聞こえて来る嬌声に悶々としていた。
「まったく・・・楽しそうだなおい。いっそ覗いてやろうか・・・ってそんな度胸ありませんけどね。」
彼がそんな独り言を漏らしていると脱衣場から誰か一人入ってきた。
「・・・・・んなあああっ!?」
何気なくその方向を見た龍之介は思わず奇声を上げた。そこにはタオル一枚で胸から股の辺りまでを隠しただけという姿のターニャがいたのだ。
「こんばんわ。だんさん。」
「おおおおおお、お、お前!ここ男湯だぞ!幸い今俺一人だけど誰か来たらどうすんだ!」
狼狽える龍之介だったが彼女は意に介さない。
「ん?まあそんなの関係あらへん。まただんさんには会いに来るゆうたろ?ウチはエクスタシオ手に入れなあかんのや。」
そう言いつつ彼女は浴槽に足先からゆっくりと体を沈めていく。
「ん~~~~っ!きっくぅ~~~~!」
「お、おい!タオル付けたままって、マナー違反・・・」
「ん?なんなら取ろか?取って欲しいん?」
「やっぱそのままでいい!」
そして肩まで浸かった彼女はそのまま龍之介ににじり寄る。
「やっぱり肌身離さず、やってんな。こっから気配するわ。」
「な、何を・・・」
「せやからエクスタシオちょーだい!いややゆうならまた実力行使やで。」
そう言いながら彼女はニターと笑う。
「だ、だから恥ずかしくないのかよお前!」
「だんさんも恥ずかしがり屋やなあ、せやったらこれでどないや?」
そう言うと彼女は目をつぶった。
「そういう問題じゃ・・・うひい!」
ターニャはまた龍之介の体をまさぐり始めた。
「どこや?ここか?ここか?お、これか!」
「うぴゃあ!!!」
「それ」は再び握られた。
(龍之介さん、大変です!)
「な、なんだ、うひ、エクスタシオ、や、やめてえ!」
ターニャから逃れようとしながらエクスタシオと会話したため妙な台詞になってしまったが、ターニャはその会話に気付いた。
「なんやだんさん・・・今エクスタシオに呼び掛けるような・・・エクスタシオと喋るて、まさか融合してはる?」
このわずかな情報でターニャはその事実に気付いた。やはり彼女も天衣乙女だった。
(大変なんです!セフィーナさんが!)
「セフィーナが!?どうしたって!?」
龍之介は思わず立ち上がった。ターニャの握った手もそのままに。
「あ・・・」
自分が握っていた物の正体を見たターニャはさすがに顔を赤くし、そっと手を離した。
(助けて、という強い思いが伝わってきました!イメージからして光属性のヴィーン・ボウと遭遇したようですが、それ以上は判らないです!)
「光属性の・・・ヴィーン・ボウ!?」
思わず復唱した龍之介の言葉にターニャは真顔になった。
「どこだ!どこにいる!」
(おそらく浜の方かと・・・今は意識が無いので追えませんが・・・)
「くそっ!」
龍之介はそう吐き捨てて浴槽を飛び出し、置いてあったタオルを腰に巻くと女湯に向かって叫ぶ。
「みんな!セフィーナに何かあった!一緒に来てくれるか!」
「セフィーナが!?すぐ出るわ!待ってて!」
龍之介はそのシルクの声を確認すると、浴室を後にしようとしたが、その背後から声が掛かった。
「待ってや。」
「今急ぐ。エクスタシオなら後にしてくれ。」
彼はそう言って急ごうとするが、ターニャは尚も告げた。
「光属性のヴィーン・ボウ。ウチに心当たりがあるんや。一緒に行ってもええか?」
「・・・知り合いなのか?」
「かも知れへん。」
「分かった。あんたも来てくれ。」
「おおきに!だんさん!」
ターニャはそう言って立ち上がった。だが、タオルは当に外れていた。その光景に目を丸くした龍之介。その反応から自分の姿に気付いたターニャは水しぶきを上げてまた湯に浸かると、
「見んといて!スケベ!」
顔を赤くしてそう言った。龍之介は
「あ、ああ・・・早く来いよ!」
そう言ってその場を後にした。
(裸同然な格好は大丈夫なのに裸は恥ずかしいんだ・・・)
そんな事を思いながら。
第五話 奥の手、使いますー。
作品名:天衣創聖ストライクガールズ 第二章:ターニャ・ナッツ 作家名:andrew