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はじまりのあの日3 怪我とリボン

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彼の思いやりに包まれて、わたしはお店を巡る。騒々しさの中、彼と二人だけに思える楽しい時間。ただ、現実はそうもいかない。ファッションアイテムのお店の中。なんとなく、感じる視線。歌い手として、PROJECTとして。認められてきたこその視線なのだろう。10歳の黄色いチビと、27歳、紫の長身、超美形。押している車いす。そんな、異色の組み合わせだったことも手伝ったのだろうけど。紫の彼にうながされ、選んだのは、白のリボン。レース生地。金の糸で。刺繍の施された、美しいリボン。店員さんに頼み、試着させてもらう

「うん、似合ってるじゃない、リン。今日の黒ワンピにも、映えるしかわいいぞ」

そんなことを言われて、他のリボンを選ぶ気に、なれるはずなど無い。即座に決断する。会計へ向かい、支払いをする彼。店員さん、仲がよろしいのですか、と声をかける

「ええ、かなり」

そんな彼の返答が、ものすごく嬉しかったことをおぼえてる

「リン、昼ナニ食べたい。今日はとことん、リン、オンリー」

ふいにかけられた、彼の声。考える。彼の作ってくれるもの、すべておいしいのだけれど

「このモールの中にあるもので、な」

そうか、外食しようと言っていた。遠慮もなしに考えて

「うなぎが食べた~い」
「うな丼一つはいりま~す」

モール内の店へと連れて行ってくれた彼。うなぎのタレで、口の周りを汚すわたし。ぬぐってくれる、飲み物を持ってきてくれる優しい彼。楽しくておいしい、昼食を済ませ、食料品を買って帰る。彼の家で、ご機嫌で、晩餐会の準備をした。いや、手伝った。足をかばっているため、変な歩き方になる

「イスで出来る作業、お願いしようじゃない」

彼が言ってくれる。イスに腰掛け、作業する。要するに、ほとんど彼が準備したようなものだった

「がっくん、今日ありがとう。リン、温泉行くより楽しい」
「リンが元気になって、よかった。痛みもあったか、昨日から落ち込んでたみたいじゃない。元気なかった」
「だって、がっくんにも、みんなにも。迷惑かけちゃったから―」
「迷惑なんてないじゃな~い」
「でも~」
「リ~ン」

わたしの前に来て、ひざまずく。正面から、彼と目が合う。心臓がはねる

「俺は、迷惑になんか思ってない。みんなもそう。一生懸命、歌っただけじゃない。もう、ソノ話しは止めにしない」

思いやりに、涙が溢れる

「う、ありがとがっくん。っき今日、みんな―」
「泣くことないじゃない。さ、かわいい笑顔のリンに戻って。ご飯の用意、しようじゃない」

言って、抱き上げてくれて。わたしをポンポン、たかいたかい。たちまち、笑顔になるわたし。ふたたび、晩餐会の用意にもどる。そのうち、飲み物やピザ、おつまみなどを買い込んだメンバーが、ドヤどや帰宅