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代打の代打
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はじまりのあの日7 線香花火と約束

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目指すはテラスでのバーベキュー。同室になっためぐ姉共々慌ただしく準備。浴衣に着替える

「は~い。リンちゃん、今日も可愛くできあがり~」
「ありがとめぐ姉~」

というか、着替えさせてもらう。そういえば、あの越後遠征中、ずっとめぐ姉と部屋が一緒だった。わたし、めぐ姉も大好きだから、楽しさ三割増しだった。部屋を出て、腕組みで、連れだってテラスに歩いて行く

「はやくはやく~。すっごく美味しそうだよ~」
「リンちゃ~ん、グミさ~ん、こっちこっち~」

大きく手を振るミク姉とIA姉。気持ちが急いで、めぐ姉と手をつないで駆けてゆく。用意されていた料理に驚く。たっぷりのお肉と夏野菜。ホタテやお魚、フランクフルト。イカ焼きに焼きそばまでついて。舟盛りのお刺身は全部で八種類、どれも肉厚。サザエも付いて船二艘(ふねにそう)鎮座している

「わ~すごいっ。豪華だねがっくん」
「みんなが揃ったら、まず乾杯しちゃおうじゃな~い。大人は刺身トカ、子供達はフランクなどなどで始めよう。肉や魚は、酒ヤリながら焼こうじゃない、カイト」
「だね、殿。めーちゃん、お酒オーダーしちゃっていいよ。オレも初めからポン酒にしよう。越後のお酒はホント美味しいよ、殿」

あまり『お酒派』でないカイ兄。初めから日本酒は珍しい。昨日飲んだお酒が、相当に気に入ったようだ

「めずらしいですわね、カイト兄様。ワタシはソフトドリンクをお願いします」

ルカ姉の声に、ホステルサイドがもてなしの品。特別に、と名産品、有名な洋梨の果汁100%ジュースが運ばれてくる。わざわざ用意してくださった逸品に、目の輝きが増すルカ姉

「アタシもカイトと、同じお酒をいただくわ~」
「ボクは米焼酎のロックを貰うぜ」

カイ兄のポン酒解禁令に喜ぶめー姉。テト姉も飲む気満々

「私は、この地元ワインを、白でいただけますか。飲まれない方には、地サイダーもお願いいたします」
「腹減った~、たくさん食べようぜセンセ。あ、ウチ蜂蜜アップルティーお願いしま~す」

甚平姿の彼、兄、キヨテル先生。言うリリ姉は、女性陣の中で、ただ一人甚平。先生の眼鏡に似たデザインの。銀縁だて眼鏡をかけている

「オ待たせモウシタ~。おお、ウマッソウでゴザルな」
「アル、あんたもお酒でしょ、何飲む~」

楽しげに訊くめー姉に、beer(ビール)と応えるアル兄。するとこちらにも、限定のビールが運ばれてくる

「にくにく、うおうお、もりだくさんさん」
「うっわ、たっまんね~、早く初めっす、みんな」

ぞくぞくと集まってくる。四時半には乾杯の火ぶたが切られた。色とりどりの声と飲み物、昨日の花火に負けじとあがる。紫の彼、刺し盛りを手に。カイ兄はフランクとイカ焼きを手に、焼き台へ向かう。瞬く間に、飲み物の蓋が開く。用意していただいた肉、野菜。彼と兄が調理してくれて。海鮮も、焼きそばも、焼き加減、味付け抜群。レア、ミデュアム、ウエルダン。どれもこれもフルコース。お刺身も、鮮度良く、油ものりノリ。大間に負けない中トロに、ルカ姉歓喜。総て絶妙で美味しかった。瞬く間に、宴は進み

「わあ~綺麗だね、がっくん」
「日本海に沈む夕日も綺麗じゃな~い」

ひとしきり食べて、飲んだ後。わたしは、〆の焼きそばを手に。彼はお酒を手に、見た夕日。海岸へ腰を下ろす。全方向、海の大パノラマ。少しだけ涼しくなった風、ほっぺたをくすぐる

「こんなシチュエーションも滅多にないわ~」

限定缶ビールを片手にめー姉ご機嫌。隣に座るカイ兄の肩に腕を回す。兄は、お米のアイスで上機嫌。メンバー、今度は海岸に集まり出す。薄暗くなっていく海岸線

「昨晩の大花火も素晴かったです。皆さん、今晩は、ささやかな花火もいかがですか」
「あ、い~じゃんっ。やろ~ぜ~センセッ」
「おお、コレも和のココロでゴザルな」
「先公が線香花火、っす」

線香花火を手に、やって来るキヨテル先生。ダジャレを言う勇馬兄。吹き出す先生とみんな

「勇~馬。面白いけどテルに謝れ。失礼だ、ぶっとばすぞ。謝ったら、飴ちゃんをくれてやろうじゃない」
「がくサン、自分でも思ったす。サーセン、テルサン」

素直に頭を下げる勇馬兄。先生は、気にしてませんと笑う。が、激怒したリリ姉が勇馬兄に跳び蹴りを見舞う。取っ組み合いになりそうな二人を、紫の彼がなだめる。二人共に飴を口に入れてあげる。線香花火大会の幕が上がる。浜辺にしゃがんで、着火用のろうそくを立てる。仄かな光。メンバーを照らす。さも、当然のように。彼の横に陣取って。線香花火に火を着ける。花火の閃光を見て、ふいに思った事を言う

「がっくんが来て、もう四年も経つんだね」

顔を、夜空に向けてあげる彼

「そうだな。もうそんなになるじゃない」
「四年か~。でも、それ以上に長い付き合いな気がするよ。殿」
「神威君が来て、ルカが帰ってきて。仕事、メンバー。増えたものねぇ」

とても感慨深げな、彼、カイ兄、めー姉。そう、年月以上に濃い時間を過ごしたと思う

「がっくん。これからもさ。こんな風に、みんなで食べたり飲んだり、歌ったり。花火したり。ずっとず~っと、一緒に仲良しでいよ~ね~」

一瞬、不思議そうな顔をした彼。でも、すぐに破顔して

「そうだな、リン。ありがとう。これからもよろしくな」

そう言った彼の顔は、少年のようだった。心拍が跳ねた。初めての感覚だった。と、二人同時に線香花火が落ちる

「あ、あ~何かやだなぁ、縁起悪ぅ~」
「ん、どしたリン」
「だってさぁ、ず~っと一緒に仲良くって言ったとたんにだよ。花火落ちちゃうんだも~ん」
「はは、気にすることないじゃない。でも、リンが気にするなら」

二本、線香花火を取って、一本を手渡してくれる。着火を促される。再び花火の柳がかかる

「これからも仲良くしようじゃない、リン」

言って、わたしの花火に、彼は自分の花火をくっつけてくれる。花火の珠がくっつく。合わせた線香花火から、二つの柳が跳ね落ちる

「こんな風に、さ。一緒にいようじゃない」
「がっくん。わ~、そうだね、ず~っと仲良しでいよ~ね」

素敵な彼の気遣い。たちどころに、気持ちが跳ね上がる

「あら、お暑い。なんだかんだで、リンは神威君がお気に入りよね~。神威君はどうなのかしら、ふふ、気になっちゃうわ」
「ゎ~、萌え萌え~。神威のに~さんとリンちゃん。ペア線香花火~」
「ん、気になるって何だ、メイコ。俺は俺で、気に入ってるぞ。リンもメイコ様も、このメンバー全員も~」

片手にお酒、片手に線香花火のめー姉に茶化される。IA姉が頬を染める。あの日は、その意味さえ考えなくて

「あ~、神威君、そ~じゃなくて~」
「うん、めー姉。わたしはがっくんお気に入り~」