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Lovin 'you ~If~ 後編

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『嫌だ!目覚めたくない…現実に戻りたくない!』
〈君を迎えに来た…〉
『え?』
〈私の手を取ってくれ…アムロ〉
アムロの目の前に、何度も縋り、求め続けた手が優しく差し出される。
『あ…』
それは、何度も夢見たあの人の手。
その手を支えに…耐えて来た…。
『…シャア…』
アムロの瞳から涙が溢れる。
〈アムロ…〉
目の前に差し出されるその手に、思わず手を伸ばす。しかし、触れる寸前にララァの死の瞬間がフラッシュバックする。
『あっ!!』
伸ばし掛けた手を引き、反対の手で抱え込む。
『ダメだ…。私にはあの手を取る資格がない…私は罪を償わなくては…』
アムロの瞳から涙が溢れて止まらない。
〈アムロ…〉
『ああ…シャアの声だ…。懐かしい…。』
胸が…締め付けられるくらいに懐かしく…そして愛しい声…。
初めてサイド6で会った時、一目で赤い彗星だと…シャアだと解った。いつも自分を追い詰め、倒そうとしてくる敵であるはずなのに、不思議と恐怖は感じなかった。
それどころか、優しい声でアムロに手を差し伸べ、助けてくれた事に喜びすら感じた。
そして、その時、シャアの傍らにはララァがいた。雨の日の出会いの後、もう一度会えた事がとても嬉しかった。それと同時に…シャアと共にいるララァが、少し羨ましかった。

その後、ソロモンでの戦闘の最中、ニュータイプとして覚醒していく事に戸惑う自分に、シャアは“同志になれ”と手を差し伸べてくれた。
ララァもシャアの元に来てと言ってくれた。
でも、その時は、敵である自分に何でそんな事を言うのかと驚いて言葉が出ず、結局は手を振り払ってしまった。
それに、ホワイトベースのみんなを見捨てる事は出来なかった。色々あったけど、幾度も死線を潜り抜け、一緒に戦った仲間だ。裏切れる訳がなかった。
けれど、心の底では…本心では、その手を取りたかった。


そしてあの日、自分はララァの命を奪ってしまった。ララァの叫びと、シャアの深い悲しみが脳裏を駆け抜けた。
自分は取り返しのつかない事をしてしまった。
唯一心を通わせたララァをシャアの大切なララァを殺してしまった。
シャアはララァを奪った自分を恨んでいた。
そして、私のニュータイプ能力は危険だと…生きていてはいけないと、私に刃を向けた。
過去の出来事が次々とフラッシュバックし、アムロの心を締め付ける。
『ごめんなさい…ごめんなさい…貴方から…大切な人を奪ってしまって…ごめんなさい…』
アムロの瞳から次々と涙が溢れ出す。
そんなアムロを、誰かが優しく包み込む。
その温かく、優しいぬくもりに思わず縋って涙を流す。
『ごめんなさい…ごめんなさい…私は…どうやって償ったらいい?シャア…シャア…!』
泣き縋るアムロに、優しい声が届く。
〈もういいんだ…君だけのせいではない。アルテイシアも言っていただろう?あれは…お互い様だった…〉
『そんな事ない!私が!私がララァを!』
〈アムロさん!!お願いです!自分を責めないで!話を聞いて!みんな、貴女を待ってるんです!〉
シャアとは違う…けれども聞き覚えのある少年の声が、沈み込もうとする心を引き留める。
『誰…?』
〈アムロ…もう泣くな…君は一人では無い…〉
『え?』
その言葉にアムロが目を見開く。
〈お願いだ…私の手を取ってくれ…〉
『でもっ!』
〈アムロ…君が必要なんだ…〉
『必要?』
〈アムロ…君の声が聞きたい…君の笑顔が見たい…〉
『シャ…ア?なぜ?』
シャアは自分を殺したい程憎んでいる筈だ。そんな筈…
〈アムロ、君と共感した時、私の心が見えただろう?君を求める私の心が…〉
『シャアの…心…』
あの時、互いの剣が突き刺さり、シャアの顔を間近に見て、目と目とが合った。その瞬間、宇宙が拡がって…シャアの心が見えた。
色々な辛い事、ララァとの出逢い…自分を憎む気持ち…そして、その奥底に…
『シャアが…私を…求めてくれてる…必要と…してくれてる…私は…生きていていいの?』
〈アムロ、君が必要だ…君が…欲しい…。好きなんだ…どうか…私の手を取ってくれ…〉
その切ない程のシャアの声に、アムロの心が揺れ動く。
『私は…この手を取ってもいいの…?』
すると突然、白い白鳥がアムロの目の前に舞い降りる。
そしてその姿はララァへと変わっていく。
『ララァ!?』
『アムロ、大佐の手を取りなさい。大佐は貴女を必要としているわ。』
『ララァ!でも私は…ララァを…!』
『アムロ、大佐はもう貴女を憎んでなんかいないわ。それどころか貴女を求めている。償いをと思うのなら…大佐の手を取って、傍で支えて頂戴。』
『ララァはそれでいいの?私が…シャアの傍にいてもいいの』
『アムロ、私は貴女の事も大好きよ…貴女には笑っていて欲しいの』
『ララァ…』
『アムロ、大佐の想いを受け止めて』
その瞬間、唇に温かいものを感じる。
柔らかく、優しく私を包み込み、求めてくれる温もり…。
アムロはゆっくりと瞳を開く。
すると、真っ暗な闇の隙間から、眩しい光が差し込んでくる。
「アムロ!」
「アムロさん!」
シャアと…他にも…自分を呼ぶ声がする。
瞬きをしながらゆっくりと目を凝らし、眩しさに目を細めながら…アムロは明るい光の中へと手を伸ばす。
そして、その手は大きくて温かく、優しいぬくもりに包まれる。
あの辛い日々の中、求め続けたその手を、アムロはようやく取ることができたのだ。


ーーーー

「アムロ、目を覚ませ。君を迎えに来た。私の手を取ってくれ…アムロ」
シャアは何の反応も返さないアムロの手を握り、優しく語り掛ける。
「アムロ、アムロ」
一瞬、ピクリと反応を示したアムロだったが、また反応が無くなってしまう。
しかし、シャアは根気よく、何度もアムロを呼び続ける。
すると、またアムロの身体がビクリと震え、その琥珀色の瞳に涙が溢れる。
「アムロ!」
そして、アムロに唇が動き、何かを呟いている。声には出ていないが、その動きで言葉を読み取る。
“ごめんなさい…ごめんなさい…貴方から…大切な人を奪ってしまって…ごめんなさい…”
その言葉に、シャアは思わずアムロを抱きしめる。
その腕に、僅かにアムロの手が動き、シャアの腕を縋るように掴む。
そして、今度は掠れながらもアムロが声を出して呟く。
「ごめんなさい…ごめんなさい…私は…どうやって償ったらいい?シャア…シャア…!」
その切ない言葉に、シャアはアムロを抱く腕に力を込める。
「もういいんだ…君だけのせいではない。アルテイシアも言っていただろう?あれは…お互い様だった…」
「そんな事ない!私が!私がララァを!」
涙を流しながら自分を責め続けるアムロに、カミーユが思わず叫ぶ。
「アムロさん!!お願いです!自分を責めないで!話を聞いて!みんな、貴女を待ってるんです!」
その悲しみに引き摺られ、アムロとシンクロしてしまったカミーユが両目から涙を流して訴える。
「アムロ…もう泣くな…君は一人では無い…お願いだ…私の手を取ってくれ…」
尚も涙を流すアムロの髪を優しく梳きながら、その耳元で囁く。
「アムロ…君が必要なんだ…君の声が聞きたい…君の笑顔が見たい…」
シャアのその言葉にアムロがピクリと反応を示す。
作品名:Lovin 'you ~If~ 後編 作家名:koyuho