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景琰と林殊

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「ねぇ、だしてだして───、景琰、早く───!。」
小さい子供とのやり取りは埒があかない。
普段穏やか景琰だが、話の通じない小殊に段々とイラつき出していた。
「景琰───、きつね──、ねぇ、きつねきつね────。」
「そんなにダダ捏ねるんなら、小殊と遊ばないよ。ここに置いていく。」
少し強めに言って、林殊のいる岩山に背を向けて、一、二歩、歩き出した。
「まって、景琰!!やだぁ───。いやだよ──!!。」
「じゃぁ、狐、諦める?。」
景琰が振り返って、一言。
「、、、、、、、、、、うん。」
効き目は抜群だった。景琰も林殊の扱いには随分慣れた。
「じゃ、下りておいでよ。岩に上がってたんじゃ遊べないよ。」
「、、、、、、おりれない。」
「えぇ〜〜。だって自分で登ったんだろ?。」
「おりれない、、。」
━━━どうせ、牡丹も折っちゃったんだし、太監、呼んで来ようかな、、、後で誤りに行かなきゃ、、、。
小殊には皆、甘いから、大丈夫かな、、、。━━━
御花園の牡丹を折った犯人を、きっと探すだろう、、。
隠すよりも、正直に謝ったら分かってくれる。
「じゃ、小殊、誰か呼んで来るから、ここで待ってて。」
「いっちゃやだ───、、。」
「すぐ来るから。」
また、背を向けて、人を呼びに行こうとした矢先だった。
、、、何かをする時の小殊の目だった。
次の瞬間、小殊は岩の上から飛んだのだ。
「小殊!!!。」
景琰に向かって飛んできた。
思わず景琰の手が出たが、景琰だって子供なのだ。受け止めきれる訳がなく、二人はそのまま倒れて、景琰は肩と腰を打った。
「痛ったぁ、、、、。」
この辺は地面にも石が敷いてあった、ざらざらとでこぼことした石に打ち付けられたが、林殊を受け止め、咄嗟に身体を横に捻ったので、丸々二人分の重さがかかった訳では無かったが、それでも景琰は直ぐには起き上がれなかった。
「、、小殊、大丈夫?。」
ようやく身体を起こして、林殊を見た。
目立った怪我は無かったが、左手を擦りむいていた。
林殊は段々と血が滲む自分の手を見ていた。
━━━あ、、泣くかも、、、小殊は泣き虫なんだもん。━━━
「ぅぅぅ、、、うわぁ───。」
やっぱり泣いた。
擦りむいた傷は大したことは無いが、血を見てしまえば、痛さが倍増だ。
「小殊、大丈夫だよ、擦りむいただけた。母上の所へ行こう。」
「いた──い───。」
こうなると、暫く泣き止まなくなくなるのだ。
「い───たぁ───。」
勝負は、本気泣きに入る前までだ。
「、、、、、。
小殊、小殊、祁王兄上が、男は簡単に泣かぬものだって言ってたぞ!!」
「ひっ、、、ひっく、、きっ、、きおう??」
祁王の名を出されて、泣き声が止まる。
小殊の憧れは祁王なのだ。
「祁王が泣くのを見た事無いだろう??。」
涙が伝う頬が、二度三度と頷く。
「私も、祁王兄上の様になりたいから、泣かぬのだ。」
そうだ、景琰も泣いたのは見たことが無い、林殊はそう思った。
自分も男になって、祁王に誉められたい。
祁王どころか、誰からでも赤ん坊扱いなのだ。
祁王から、せめて景琰位の扱いを受けたいのだ。
「、、ふっ、、ぐっ、、、、。」
頑張って涙を止めて耐える林殊が可愛らしく、健気なのだが、どこか可笑しくて、、、。
━━━笑ったら、きっとまた泣き出すかも、、。━━━
そう思って、景琰は頑張って笑いを堪えていた。
林殊は泣き止み、自分の袖で涙を拭いた。
景琰が、にっこり笑っているから、林殊も笑顔になる。
「アハハ───」
「ふふハハハ──」
二人とも顔を見合わせて笑い合った。

「あ〜ぁ〜、折っちゃったね牡丹。」
「ふん??」
「皇后に謝りに行かなきゃ。」
「むふ、いいにお──い。」
嬉しそうに牡丹の匂いを嗅いで、目だけ景琰を見る。
林殊の目が笑う。
この調子だから、皆、怒る気にならなくなるのだ。

林殊の後ろ、、だいぶ向こうの方から、誰かが来た。
侍医の格好をしている。一人だけだった。

「小殊、隠れよう!。」
「??」
林殊を立たせ、急いで岩の陰に生えた、背丈ほど伸びた菖蒲の影に隠れた。
━━━あの侍医は嫌なヤツだ。━━━
林殊が怪我をして、医局に治療をしてもらいに行くと、いつも嫌味を言う奴だ。
幸いにも、景琰も林殊も、誉王や献王ほどの煌びやかな衣装は着ていない。動かなければ、隠れているのは分からないだろう。
「小殊、し──っ。嫌なヤツだ、隠れていよう。」
「うん!!。」
何だか林殊から、ワクワクしてるのが伝わって来る。
こういう時は素直に景琰のいうことを聞く。
侍医は滝のある辺りに来て、中々去ろうとはしなかった。
━━━早く行っちゃえばいいのに、、、。━━━
そのままずっと同じ所に立ち、動かないでいる。
━━━何してるのかなぁ、、小殊が飽きちゃうよ。━━━
「ふぁ〜〜〜、、、。」
林殊は欠伸などもし出した。
すると程なくまた誰かが御花園に入って来たようだ。
景琰は草の切れ間から、様子を伺う。
妃嬪の一人のようだった。
よくよく見れば、皇后のようだ。
景琰は益々動きが取れなくなる。
皇后は太監と官女を途中に置いて、一人だけでこちらに近づいてきた。この侍医は皇后を待っていたのだ。
二人で何か話をしているようだ、、、。
「、、、、晨妃、、、、しなけ、、、、、、わか、、。」
「はい、、、、、、して、、中々、、、、。」
あまり良い話では無いのか、直感で分かった。
そう大きな滝でもないので、話が全て掻き消されることは無く、話の所々がどうしても話が聞こえてしまうのだ。
━━━嫌だ、、嫌な話だ、コレ、、。━━━

━━━聞きたくない、、、。、━━━
自分も聞きたくないのだが、林殊にはもっと聞かせたくなかった。
後ろ向きに抱っこして座っている林殊の両耳を、景琰は両手で塞いだ。
林殊は暴れはしなかった。
もう、塞ぐ手は無い。聞きたくはないが、塞ぐ手も無いのだ。
どうしようも無くて、景琰はぎゅっと目を閉じた。
何を話していたのか、どの位話していたのか分からない。
早く終われ、早く終われ、と景琰は祈ってじっと身を潜めていた。

ようやく話が終わったようで、皇后が帰り、侍医が去ったのが分かる。
ほっとして林殊の耳から両手を外した。
どういう訳か、林殊の体がぐらりと自分の方に倒れて、体の重さが景琰にかかってきた。
林殊を見ると、目を瞑り意識が無いようでぐったりとしていた。
「小殊?小殊??。どうしたの?。」
揺すっても目も開けず反応も無かった。
「小殊、小殊!!」
━━━さっき岩から飛んで転んだ時、頭でも打ったんだろうか、目も覚まさないなんて、、、。大変だ!!、。━━━
母親の静嬪の所へ連れて行けば、きっと何とかしてくれる。
母親は名医なのだ、自分や宮の官女が具合が悪くなっても、たちまちに治して痛みや苦しみを取ってくれるのだ。
景琰は小殊を抱き上げて、走り出した。
なるべく頭を揺らさないように、、でも、出来るだけ早く。
景琰には中々難しかった。
垣根の薄い所から、無理無理二人で抜け出す。
なるべく林殊の頭や顔に、枝が当たらない様に、後ろ向きで御花園の外に出て、また走り出した。
「殿下〜〜〜。」
後ろから声がして、振り返ると自分付きの官女の小春だった。
作品名:景琰と林殊 作家名:古槍ノ標