第二部14(87)返信
「ユリちゃん、その格好はどうしたんだい?一体どういう趣向だい?」
買い物に行った市場で早速馴染みの八百屋のおじさんがいつもと違う格好のぼくに目を止めた。
「…ヘン…ですよね?」
ぼくは改めて自分の格好ー、アルラウネのお下がりのボウタイのついた白いブラウスに、裾をたくし上げたアレクセイのズボンを履いた自分の姿を見下ろすと、上目遣いでおじさんに答えた。
一方、おばさんは、ぼくの細い手足に不釣り合いな腹部の膨らみに何かピンときたようだった。
そんなぼくの格好をじっと見つめ、おもむろに、
「あんた、ちょっとしばらく一人で店番してもらってもいいかい?」
とおじさんに断わると
「ユリちゃん、おいで」
とぼくの手を引いて市場を出て行った。
手を引かれて連れて行かれた先は、おじさんとおばさんの自宅だった。
「ちょっと待っといで」
そう言っておばさんが両手に抱えて持って来たのは、色とりどりのサラファンだった。
「ユリちゃん、あんたお腹に子供がいるんだろう」
やっぱりおばさんにはお見通しだった。
作品名:第二部14(87)返信 作家名:orangelatte