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第二部14(87)返信

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「旦那さんは、たまにあんたと一緒に市場へ来る、あの背の高いお兄さんかい?」

おばさんが持って来たルバシカとサラファンに袖を通しながらアレクセイの事を聞かれて、ぼくはコクリと頷いた。

「そうかい。なかなかハンサムな、男振りのいいお兄さんだったね。ユリちゃんあんた中々面食いだね」

おばさんにアレクセイの事を褒められて、ぼくは嬉しくなって大きく頷いた。

「ごちそうさま。でもあんたとは美男美女でお似合いだったよ。二人とも随分若く見えるけど、あんたたち幾つなんだい?」

おばさんに年を聞かれて、ぼくはおずおずと答えた。

「今度の…7月の誕生日で16になります」

ぼくの答えた想像以上に若いその歳に、おばさんは一瞬驚いたように目を瞠った。
だけどおばさんはそんなぼくを非難するでもなく、

「ああ、だからこのサラファンもよく似合ってるんだね。これはね、わたしらの娘がちょうどあんたぐらいの時に誂えたものだったんだよ。…もっとも、サラファンなんて今時古臭くてカッコ悪いって、殆ど袖を通さずじまいだったけどね」

おばさんはそう言って、ルバシカの襟ぐりを直して、ぼくの髪を手櫛で整えながら、一本のお下げに編んでくれた。

「そら。可愛いロシア娘の一丁上がりだ。サラファンならばお腹も楽だろう?」

そう言っておばさんは僕の肩を抱いて姿見の前に案内してくれた。

ー …可愛い!

おばさんのお嬢さんのものだったというその民族衣装は、袖口と襟ぐりに綺麗な刺繍の施されたルバシカとライラック色のジャンパースカートが何とも可憐で、ぼくはアルラウネのドレスに初めて袖を通した時と同じぐらい心がときめいた。
両手でスカートの裾をつまんで、姿見に横向きや後ろ姿を映してみる。

そんなぼくに

「気に入ったかい?」

とおばさんが目を細めてぼくに尋ねた。

ぼくはおばさんに大きく頷いて、満面の笑みを返した。

作品名:第二部14(87)返信 作家名:orangelatte