intermezzo ・白い花~未来への贐(はなむけ)
「おはよ・・・クラウス?」
「シーッ!」
まだ日が昇る前に家を出て約束の場所に向かった。
しゃがみ込んだクラウスの背中が見えて声をかけると、おまえもと手招きされて同じ態勢をとりながら隣に並ぶ。
「あいつが元居た所に放してやったらさ、結構しっかりと歩き出したんだ。時々飛び上る素振りもしながら。そしたら親鳥らしきのが飛んできてさ・・・ユリウス?」
「すごい・・・お花・・・」
そのおとぎ話の一ページのような光景に、ボクは目を奪われていた。少しずつ朝日が届き始めた野原には昨日は咲いていなかった白い小さな花が一面に咲き乱れ、日の光りをうけて一斉に柔らかな輝きを放つその様はなんとも幻想的で・・・。
その中でピー助ともう一羽が躰を寄せ合って、時に親鳥らしきが羽ばたき方を教えるように少し飛び上がっては一緒にと促しているようにも見えた。ピー助も、懸命について行こうとするように何度も羽ばたきを繰り返し始めている。
「頑張れ、ピー助!」
「もうちょっとだ!」
チチチチチ・・・!
「あ!」
あたりが全て眩しい朝日の光りに包まれたその時だった!
親鳥に引き上げられるようにしてピー助は羽ばたきと共に宙に舞い上がると、二羽で円を描きながら徐々に空高く飛び上っていく。
「やった!ピー助が飛んだ!」
ボクは嬉しくて嬉しくて、弾かれたように白い輝きの中に飛び込むと勢い余って転びながら、それでも構うことなく座り込んだまま宙を見上げて思わず両手を広げた。
ピー助は応えるようにボクの頭上まで飛んできて暫く戯れたけど、やがて朝日の煌きの中に飛び去っていった。
チ、チチーー!
「さようならー!」