第二部22(95) sturm
二発の銃弾が、物陰から炸裂し、そのうちの一発がアネロッテの手にしていた注射器ごと、撃ち抜いた。
「ぐう…」
驚愕と、腕を襲った骨をも貫くような焼きつくような痛みと衝撃に、アネロッテが撃たれた腕を掴みその場に崩れ落ちる。
部屋の、死角になったクロゼットとドレッサーの間から、銃を構えたままの帝国警察の刑事と、ダーヴィト、そして、執事が現れた。
「特等席で…全て聞かせて頂きましたよ。呪われたアーレンスマイヤ家の…いや、あの忌まわしいスパイ事件の真相を。あんたがこれから行くのは、アメリカじゃなくて、警察の牢獄だ。アネロッテ・フォン・アーレンスマイヤ。マリア・バルバラ・フォン・アーレンスマイヤ殺人未遂の現行犯で逮捕する。後はじっくり…警察で聞かせて貰おう」
帝国警察の男がアネロッテの負傷した手にハンケチを縛り手早く止血すると、もう一方の手に、手錠をかけた。
「幕は下りたよ。マリア。もう、芝居は終わりだ」
ダーヴィトの声に、マリア・バルバラがゆっくりとベッドから上体を起こす。
その蒼ざめた顔には、深い悲しみと哀れみ浮かんでいた。
「ハ…ハハ。なぁんだ。すっかり騙されてたわ。…あんたも中々やるじゃない。悪人の素質…あるわよ。って、私にそんなこと褒められても嬉しくもないか」
嘲笑交じりにそう言うと、アネロッテは狂れたように笑い出した。
作品名:第二部22(95) sturm 作家名:orangelatte