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第二部24(97) 交渉

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も一つおまけ 橙色の幸せ



―今回同行していなければ、私にも何か選んでいただけただろうか・・・?

侯が自ら女性陣への土産を選ばれるのを横目に、私はこみ上げる複雑な気持ちを押し戻しながら、何の気なしに目の前の棚に陳列されたマフラーを手に取っていた。しかしあまりに滑らかな手触りの良さに、自分用にと思い立った。

―そうだ、せめて〈侯が選んだ店〉で私も・・・。

気を取り直し、あれらのショールと同じ素材のマフラーを買おうと、やはり何色もある中から見繕い始める。

「この色がいいぞ・・・」

すると少し離れた処に居られたはずの侯が、徐に近づきその一本に手を伸ばし・・・

「これでよいな?」--すまんがこれも頼む。

私の返答も待たず、先程のショールをラッピングする売り子に事も無げにそれを手渡された。

「え・・・!?よ、よろしいのですか?」

「あの緊迫した状況での冷静な通訳にはかなり助けられたからな。礼だと思え」

「任務ですので・・・でも、ありがとうございます!・・・あ!それは包まなくていい・・・すぐに使うから」

買い物を終えて外に出ると、この街お決まりの霧がたちこめ、どんよりとうすら寒い空気が纏わりついて来る。しかし私は、身も心も陽ざしを抱いたように温かで晴れやかな気分だった。
首元には、侯が私の為に選んでくれたそれが巻かれていたから・・・暖かな太陽を思わせる橙色のマフラーが・・・。

―あなたが私の為に選んでくれた橙色...あったかい…(ポッ)

「ふ・・・そういえばおまえ、子供の頃喉が弱かったな・・・行くぞ」

侯はボルサリーノハットを目深に直しながら私を見ずに呟かれると、霧の中へ踵を返した。

「リョ・・・は、はい・・・!」
―幼き頃から、あなたのその優しさに私は・・・そしてこれからもずっと!
ああ、リョーニャ!!

倫敦の街のど真ん中、橙色のマフラーを巻いた私は永遠の愛を心で叫びながら・・・いつものように、愛しい人の背中を追いかけていくのだった・・・。


作品名:第二部24(97) 交渉 作家名:orangelatte