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こらぼでほすと 秋刀魚1

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 トレイを置いて味見を頼んでくる。虎の趣味はコーヒーの味追及なので、こういう時は、非常に美味なものを口にすることができる。全員が、こくりと飲んで、ふあっとした顔をする。確かに酸味が効いていて、さっぱりしたものだ。
「味はおいしいですが、香りが弱いですね? 虎さん。」
「うーん、そこが問題なんだ。あまり焙煎を強くすると苦味が強くてな。アメリカンだと今度は味がぼやけるんだ。なかなか扱いが難しい。」
「僕は、これでも好きですねぇ。あっさりしていて。」
「ブレンディっぽいかな。」
 最後にニールが感想を言うと、事務机に虎が突っ伏した。最悪の感想だったらしい。ニールとしては、あっさりしているという意味だ。ちなみに濃い場合は、ネスカフェと表現されたりする。コーヒーに対する拘りがないので、飲ませても、こういう感想が多い。
「ブレンディか? ママ。」
「ええ、そんな感じですね。ん? まずかったですか? 虎さん。」
「いや、わかってる。俺の精進が足りんという意味だな。おまえには、もう少し表現力を覚えさせなければダメだ。」
「はい? ブレンディみたいに薄い感じってことですが? 」
「インスタントしか飲まないからなあ、おまえ。・・・・・少しコーヒーも豆を挽いて飲んでみないか? ママ。」
「面倒で。」
「三蔵さんと二人の時は、そういうこともできるだろ? 一式用意してやるから、やってみろ。」
「それなら、虎さん、紅茶も茶葉で用意しますよ。ティーパックじゃなくて、リーフの美味しさも、ママニールには体験して欲しいです。」
「アスラン、それ、おまえらが淹れてくれてるやつだろ? それなら体験してるぜ。」
「いえ、普段は定番にしてるんです。紅茶も、いろいろとあるので。」
「それ、ダージリンとかアッサムとかいうやつだろ? ティーパックでもあるって。」
「実は、ダージリンは種類が多い茶葉なんです。一般的に総称しているだけなので、分類は多種に渡ります。食前と食後でも、茶葉は違うものです。」
 アスランも、拘りというものがある。寺では人数が多いので、ティーパックか廉価版の茶葉になってしまうのだが、寺の夫夫だけとか少人数の時には、もう少し美味しいものを飲んでいただきたいと思っていた。
「じゃあ、後日、用意して寺に運ぶとしよう、アスラン。とりあえず最低限教えておかないと意味がない。」
「そうですね、虎さん。俺も、それは推奨したいと思ってました。」
 みな、一息ついて暇なものだから、そういうことに気付いていた。庶民派貧乏性なおかんなので、そういう高級路線も学んで、セレブな生活もしていただきたい。だいたい、普段、歌姫の別荘や本宅で用意されているのは、そういうものだ。それにニールは気付いていない。ただ、いい匂いだなあーとか思うぐらいで、豆がどうとか茶葉がどうとかいう言及はできないからだ。



 本気で 二日ほどして虎がコーヒーのカリタ方式のセットとミルを持って寺にやってきた。少人数用に小ぶりなものだが、本格的な一式だ。もちろん、コーヒーカップもペアの綺麗なものだ。
「カップは機能的なものにした。ウェッジウッドの定番だ。豆のほうも定番のブルーマウンテン、マンデリン、モカ、キリマンジャロの四種類。ちゃんとラベルがあるから豆の名前も覚えられる。ミルは電動だと味気ないから、手回しにした。」
 数々のブツが卓袱台に置かれて、へぇーとニールも大人しく拝聴する。なんせ、湯を沸かす専用の小ぶりのケトルまであった。これが電動で、あっという間に湯が沸く優れものだ。ミルに豆を入れるところから教えられる。最初はコーヒー用の計量スプーンで二杯と少し。これを、ミルでガリガリと砕いていくと下の引き出しに溜まる。それをカリタにペーパーをセットして、まずお湯を通す。全部の容器を温めることからだ。もちろん、カップにも、お湯を溜める。
「一番いいのは、ストローよりも細く山盛りのコーヒー粉の真ん中に、ゆっくりと落とす。絶対に、満水にしてはいかん。まず、これで豆を蒸らすんだ。」
 教えられるままに、ちょろりとお湯を真ん中に落とす。湯気が少し上がるぐらいで、しばし止める。コーヒーの香りが出てきたら、そこからは、また同じようにお湯を落とす。真ん中に、ゆっくりと落として、泡が出てきたら、また止める。ポタポタと下のコーヒーサーバーにコーヒーが落ちていく。
「半分ぐらい減ったら、またお湯を落とす。コーヒーの粉を、満遍なく湯で舞い上がらせるとコーヒーの細い粉が撹拌される。サーバーの2のところまで同じ要領でいけ。」
 実践させられつつ、そういや虎さんが淹れてくれる時は、こんなことしてるなーと思っていた。何度か目の前で淹れてもらっているが、虎はカリタとサイフォンと両方のやり方で淹れてくれている。
「あの、虎さんが淹れてくれる時ってサイフォンが多いと思うんですが? 」
「あのほうが豆をミックスさせてやるには最適なんだが、混ぜるタイミングと火を落とすタイミングが難しい。カリタのほうが、そういう意味じゃ簡単だ。・・・・・そろそろいいな。もうお湯を入れるな。後はコーヒーが落ち終わるまで待機。」
「砂糖とかミルクは? 」
「なるべくなら、ストレート。おまえはミルクを入れたほうがいいんだったか? 」
「あれは、俺の体調がよくないから薄めにしてたせいです。ストレートでいいです。」
「冬になったら、少しサーバーのままで温めたらいい。沸騰はさせるな、香りが消えてしまう。」
「レンジは? 」
「ダメだ。レンジだと沸騰する。」
 寺の亭主は檀家の回向に出向いているので留守で、リジェネのほうは興味がないから脇部屋でアニメ鑑賞だ。これを目の前でやってたら、時間がかかりすぎると亭主は怒るのではなかろうか、と、寺の女房は予想する。まあ、時間のある時に、のんびりするならいけるかもしれない。ポタポタと滴が落ちる速度が遅くなって、間が開いていくが、止まるまで少し時間がかかる。
「それで、ママは、どんな仮装をするつもりなんだ? 」
「トダカさんのですか? いや、アスランと八戒さんに、お任せしておきました。俺には、どういうのがトダカさんのツボなのかわかりません。虎さんは、どう思います? 」
「ふーん、トダカさんのツボか・・・・別に綺麗な恰好なら、なんでも喜びそうな気がするな。おまえの普段着は酷すぎるから、いつも溜息吐いてるぞ。」
「だって家事するのに、きちんとする必要はないでしょう。汚れるし。」
「店の出勤も、そのままだろ? あれはいかんだろ? あれは。」
「店も掃除するじゃないですか。どうせ着替えるんだから、別にいいかな、と。」
「あれ、シンデレラみたいだと、トダカさんが嘆いてる。」
「はい? 」
「家で掃除してるみすぼらしいシンデレラみたいで悲しいってさ。もうちょっと身なりを整えてやれ。お父さんは、あれで服を用意してるんだと思われる。」
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚1 作家名:篠義