こらぼでほすと 秋刀魚2
「同じ系統ではあるけどね。うちは気候が暑いから、ゆったりしてるんだ。悟空くんも試しに着てみるかい? 男物あるよ。」
「うん、着てみたい。」
それじゃあ、これくらいかな、と、悟空の背丈に合いそうなところを着付けてみることになる。ついでに、うちの女房にも琉装を、と、ちゃっかり悟浄がリクエストしていたりするのは、ご愛敬だ。着付けた三人を並べると、なかなか楽しい感じになる。
「なあ、トダカさん、最初は接待役が全員、琉装っていうのもいいかもしんないぜ? 俺と八戒は、少し地味目の女物衣装にすれば、ママニャンが引き立つんじゃね? 」
「そうだな。悟浄くんたちは男性ものにして・・・なら、お色直しも全員するかい? 」
「衣装の数が揃うなら、それでいいと思う。キラも最初だけ顔出しすんなら、あいつにママにゃんの対になる衣装を着せておけばいいさ。」
最初だけキラも挨拶に顔を出す算段になっているので、そこいらを琉装で揃えれば、見た目にも華やかになる。ホールのほうも、ウエイターたちは、その衣装で統一すれば、客とスタッフも混ざらなくてわかりやすい。今回、ホールのほうは立食の予定なので、それほどスタッフも必要ではないから、衣装の数も多くはない。
とかなんとか打ち合わせていたら、最終のキラとアスランがやってきた。きゃあーとキラは大喜びで、ニールにキスしていたりする。
「いやーん、ママ、かわいいっっ。お姫様みたいっっ。」
「ママニール、その衣装、似合いますね。」
「おーいっっ、アスラン。そこで感想述べてないで、このバカ、引き剥がせっっ。キラッッ、抱き着くなっっ。」
「なあ、キラも着てみろよ。」
「いいの? トダカさん。・・・・・あれ? これって・・・・」
琉装の悟空に言われて用意された衣装を見て、キラは気付く。そこにあるのは、某FFとか某グランブルーなんちゃらな衣装だ。ゲームの主人公たちの衣装があるのは、どんなコスプレ大会? と、首を傾げる。
「キラ様、それはオーナーが用意したものです。私ではありませんよ。」
「ああ、そうだよね。これ、ゲームする人しか知らないはずだもんなあ。・・・・ママ、これ、着てみない? 」
キラが取り出したのは、裾の長いマントのついた衣装だ。どっかの某FFの主人公のブツだったりする。アスランは知っているから、隠れてププッと噴出した。
「やだよ、それ、今回のに関係ないだろ? キラ。」
「でも、ラクスが用意したってことは見たいってことだよ。」
「グラブルのほうはメイリンのチョイスかな。・・・ママニール、すいません。こちらもお願いします。キラも着たほうがいいな。とりあえず、それ、試着して。それで、今のママニールと並んで撮影しよう。」
キラが差し出している衣装をキラが着て一枚。それからアスランが手にしているのも一枚。それからチェンジして撮影。ラクスたちが用意したブツは消化しておかないと後が五月蠅い。
「なぜ? 」
「オーナー命令だと思われます。」
ラクスが見たいから用意させたのだと言われれば、渋々ながらニールも従う。それなら、スタッフも着替えて撮影会にしましょう、とか言うことになる。厨房のほうも暇だから、紅と爾燕も着替えさせられる。もちろん、現役留学生な紅もゲーム衣装は気付いた。
「おい、キラ。」
「ちっがぁーうっっ。それは僕じゃなくてラクスからのオーダー。」
「なんで、ニール? 」
「だから、ラクスが見たくて用意したんだってば。」
「あーそういうことならアリか。」
「いやいや、俺、こういうの着る趣味はないぜ? 紅。・・・これならリジェネにも着せてやりたいな。連絡するか。」
ニール自身は趣味ではないが、リジェネには着せてみたくなる。携帯端末でリジェネに連絡して来させるとにした。
「ほらね? かわいいこには着せたくなるのさ。私の気持ちがわかるだろ? 娘さん。」
「俺、かわいくはないですよ? お父さん。リジェネなら中性的だし、黄色が似合いそうだと思うだけです。」
ちょうど目の前には黄色の琉装の八戒がいるので、それを眺めつつ親子で会話している。紅型という独特の織物で黄色が定番だ。黒髪の八戒には、よく似合っている。ニールは桃色の琉装だが、少し丈が足りない感じだ。
「なるほど丈が問題になるな。長いなら裾を持ち上げられるけど、足りないと隠しようがない。」
「だから試着しなくちゃならないんだよ、悟浄君。八戒さんには、ちょうどいいみたいだけどね。」
悟浄が、自分の女房に鼻の下を伸ばしつつ会話に参戦してくる。その隙に、ニールは桃色の上着を脱いで、カウンターに歩み寄る。そして、スツールでビールを飲んでいる亭主に羽織らせた。
「ああ? 」
「あ、意外と可愛い感じになりますねぇ、三蔵さん。」
話しかけつつ、となりのスツールに腰を下ろした。寺の亭主は、桃色の衣装を眺めて、けっ舌打ちする。
「俺までコスプレさせんな。」
「どうせなら一緒に? 」
「は? 死にてぇーのか? ママ。・・・・ちょっと水分摂れ。」
「はいはい。大丈夫ですよ。疲れてませんから。てかアジアだけても民族衣装は多いなあ。」
「おまえらもあるだろ? 」
「あるけど、基本、洋装ですから、ここまでのデザインなんかの違いはないような気がする。」
「というか、欧州方面は民族が混じっちまってるからじゃねぇーか? 」
「そうかもしれませんね。・・・・そろそろビールも限度です。」
「ちっっ、ハイボールの薄いの。」
「はいはい。」
「おまえもウーロン茶。」
「はいはい。」
カウンターの向こうへ回って、ニールが薄いハイボールを作り亭主に渡す。そして、当人はウーロン茶だ。それをカチンと乾杯して飲んでいるのだが、周囲はスルーだ。もう一々、ツッコミする気も起きない。他のスタッフたちにも冷たいものを用意して配る用意をしているので、ハイネも手伝う。
「ママにゃん、愛してるぜ? 」
「うるさい。それ、みんなのところへ運んでくれ。」
そこへリジェネが飛び込んでくる。一人でタクシーで移動してきた。きゃあーママかわいいっっ、とか、ニールに叫んでいるが、気にしてはいけない。いつものことたからだ。
土曜の午後前にニールとリジェネがトダカ家に遊びに来た。シンとレイにも連絡してあったので、シン、レイ、アマギあたりはトダカ家にいる。全員分のお弁当も用意してきたので、レイが吸い物だけは準備した。要件はコーヒーだ。虎から貰った高級品の豆でコーヒーを点てることになっている。その前に弁当を食べる。三段のお重に、みっちりオニギリとおかずだ。
「うわぁーうまそー。」
「これ、新作のおかずですか? ママ。」
「ああ、豚肉で、いろいろ野菜を巻いたんだ。お勧めはニラ。あとは定番。」
卵焼き、とりから、ウインナーあたりは定番だが、酒飲みのアテに鰆の西京焼きやらきんぴら、鶏の肝の煮物なんてものも入っている。これを制作しているのが西洋人なのがすごいところだ。寺のほうも同じものが用意してある。トダカとアマギは休日だから、ビールあたりから飲み始めている。
「一味をくれ、レイ。」
「あれ? 甘かったですか? トダカさん。」
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚2 作家名:篠義