こらぼでほすと 秋刀魚3
「まあ、ママにちょっかいかける奴は、しばきあげとくよ、トダカさん。」
「頼んだよ。」
以前、ヘブンズビーチでも盗撮やら口説くのやらがいたので、そこらは厳重に注意しておく。ここにいるスタッフは、映像などが流出するとマズい面々なので、そこいらは厳しくするのが基本だ。ついでにニールにちょっかいかける輩がいたら、それは確実にしばきあげることは決まっている。トダカの掌中の珠に手出しなんぞされたら、トダカが本気で怒るからだ。お父さんは本気だ。そこまでするバカはいないだろうが、軽く見せしめにはなるだろうから、その場合は凹ることになる。さて、そろそろ配置につきますか、と、アスランが号令をかけてスタッフも散らばる。
時間通りに店の前に車がやってくる。ほぼ全員が同時刻にやってきた。主賓と、その部下ということなので、各チームが数台に分乗してやってくる。店の前でダコスタが、それらを内に報告する。トランシーバーで伝えていくから、エントランスに鷹とハイネがスタンバイだ。
「ようこそ、いらっしゃいました。」
鷹が代表して挨拶して案内する。次が、ハイネだ。鷹とハイネの衣装に、おおっという声は上がっているが、そこいらはスルーする。ホールまで来ると、そこには黒の琉装のトダカと皇女姿のニールが待っている。二人がぺこりとお辞儀する。
「ようこそ、吉祥富貴へ、お客様。しばし、ホールで、お待ちください。」
「正装とは思わなかった。すまないな、トダカ。カジュアルななりで。」
「いやいや、せっかくだから正装させてもらったのさ。みんなが揃うまで、待ってくれ。」
「トダカの娘さん、ごきげんよう。すごいな? 」
「すいません、お父さんが、どうしても正装で、と、言うもんですから。」
「いや、カガリ様から衣装を借りたとは聞いてたんだ。きみ、似合うなあ。」
と、話していると、次の客だ。主賓だけが、トダカに挨拶する。部下たちは、そのまま左右に分かれて黙って待機しているが、そこいらも監視されている。四人目の主賓の部下が、何かしら動いたら、八戒が笑顔で近づいた。ここにはセキュリティーが仕掛けられていて、盗聴盗撮のメカには反応する。それをキラが知らせて来た。何か所かで反応していたが、派手なところから攻める。
「お客様、懐のものはいただけますか? 」
「は? なんのことだ? 」
「そのような無粋なものは、うちの店では没収になります。お返しすることもできませんので、あしからず。」
「なっ何を失礼なことをっっ。」
と、相手が怒鳴ったら、紅が容赦なくホールでお客様を投げた。一応、ケガさせてはいかんので、ソファに叩き付ける程度にはしているが、それでも衝撃はある。お客様? と、笑顔で八戒が手を差し出すが、それでも渡さないので、さらに笑顔で気功波で、吹き飛ばす。この段階で機械も衝撃で壊れているとは思われるのだが、八戒も容赦はしない。笑顔で近づく。
「うちの店、そういうものはセキュリティーでひっかかるんですが? お客様、まだ渡してくださいませんか? 」
うわっ、本気だよ、八戒さん、と、スタッフは愉しそうに成り行きを見守っていたら、その主賓が飛んできて、部下をぶん殴る。「出せ。」 と、命じて小型のカメラを取り上げた。
「申し訳ない。注意はしてあったんだが、不心得者がいた。」
「はい、では処分させていただきますね。あと、その方は、お返しくださいませんか? 」
「わかった。・・・・おまえは帰れ。」
ニコニコと手にしていたカメラは気功波で粉々に粉砕された。携帯端末だったとしても、同じように破壊しますよー、と、笑顔で八戒が宣言する。さらにキラから指示された悟空が、他の反応があった客のところへ出向いて、ソファに向かって客を投げる。他の主賓たちも、慌てて自分の部下から機材を没収する。大騒ぎしているうちに最後の主賓が現れた。その状況を眺めて、自分の部下に先に機材を出すように命じた。
だいたいの没収が終わった頃に、木の靴を履いた皇帝服のキラが、ぱっからぱっからとやってきた。出された機材を眺めて、にっこりと微笑んで首を傾げた。
「これだけ? 」
「キッキラ様? 」
「携帯端末にも、いろいろと仕込んでるみたいだけど? あのねーうちでは、きみたちの携帯端末は使えないようにしたから無駄だよ? ここから出ても、余計な情報は飛ばせないようにしてあるけど。それでも試したら携帯端末が壊れるので、そのつもりで。僕の噂は知ってるよね? 」
ピカピカのプリンス様仕様でキラは小首を傾げて微笑んでいる。キラの噂は有名だし、つい、この間もウヅミーズラブの二桁組の携帯端末が壊れた。キラだけでなく、シンやレイ、その他のトダカの関係者の映像を撮って残していたからだ。チェックから漏れたと思っていた二桁組の人間は、しめしめと保存したのだが、そうは問屋が卸さなかった。携帯端末は完全にデータを壊されたので、すべてがパアになったらしい。その話は、一桁組でも知られていて、その部下たちも注意されていた。されていても機会があれば、と、思うのが人間というものだ。さて、どうする? と、キラが主賓たちに微笑みかけたら、全員が深々と頭を下げた。
「たっ直ちに処置いたしますっっ、キラ様。しばし、お待ちくださいっっ。」
主賓たちは、大慌てで部下たちに携帯端末を全部出すように命じた。携帯端末には、各人の情報が確保されているので、そのまま破壊されてしまうと大変なことになる。全員分の携帯端末がテーブルに置かれて、主賓たちも自身の携帯端末を置いた。
「これで全部です。店から帰るまで、お預けいたします。」
「はい、了解。紅、これ、事務室に運んで。それとカメラとレコーダーを持ち込んだ人は退場。」
テーブルの上の携帯端末は紅が大きな袋に叩き込んで事務室に運んだ。盗聴盗撮メカは、悟空が、その場で完全に破壊する。持ち込み不可の機械を持ち込んだものは追い出された。それが済むと、キラは、「ようこそ、吉祥富貴へ、お客様。お待ち申し上げておりました。」 と、挨拶した。
「本当に懲りないのがいるねぇ。」
「いや、本当にすまない、トダカ。」
「はははは・・・・ここから、何かあったら本気で対処されるから、おまえたちも覚悟してやりなさい。うちには猛者ばかりいるから。・・・・では、キラ様、はじめましょうか? 」
「そうだね、トダカさん。あと、僕のママに触れると八割殺しなので注意してね? 」
ニールにしなだれかかりつつ、キラは注意する。その様子にニールは溜息をついて、キラに申し渡す。あんまりなことをしたら、トダカの信用問題になると思ったからだ。
「こらこら、キラ。そんなこと言わないの。・・・みなさん、とりあえず乾杯を。」
「だって、ママ、綺麗なんだもんっっ。襲われたら困るじゃないっっ。」
と、キラが無駄口を叩いたので、ニールは微笑んだままで、拳骨だ。はははは・・・と爽やかに笑って、「黙れ。」 と、命じているので、お客様が全員、ポカンと口を開けた。
「うーーーーママ、横暴っっ。」
「お客様に失礼なことを言うなっっ。すいません、撮影とかは遠慮させていただいてますんで。」
「ママに触ったら、万死だからねっっ。」
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚3 作家名:篠義