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intermezzo~ パッサウ再会篇3

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「ユリウス…今、あなたどうしているの?なぜ…この駅に?そもそもあなた、外国へ行ったことは何となく分かっていたけれど、一体…今までどこの国で、どうやって暮らしていたの?」

駅舎のベンチに並んで腰かけたレナーテが矢継ぎ早にユリウスに訊ねる。

「待って待って…。母さん。…それは、ヴィルクリヒ先生と、それからぼくの妹にも会ってから…みんなに順を追って説明するよ。…それより母さん。ダーヴィトから聞いたよ。…ヴィルクリヒ先生と一緒になって…ぼくにとっては妹も出来たって…」

ユリウスの言葉にレナーテが頬を僅かに染め、コクリと頷く。

「ユリウス…あのね、ヘルマン…ヴィルクリヒ先生はね、母さんの、遥か昔オルフェウスの窓で出会った恋人同士だったの…。あの窓の伝説に従って…その時は生木を裂く思いで別れたのだけれど…」

「じゃあ…母さんのゲオルクスターラーの人って…」

レナーテが再びコクリと頷いた。

「そう…そうだったの。あのね、実はぼくとアレクセイも、あの窓で出会ったんだ」
― ね?

ユリウスに同意を求められて、アレクセイが大きく頷く。

「まあ…。そうだったの!?」

「うん…」
アレクセイがユリウスの肩に優しく手を置く。
その手にユリウスが自分の手を重ね、愛おし気に夫を見上げる。

「あなた…、本当に美しくなった。あの時私の元を羽ばたいた事を…私は神様に感謝しなくては…ね」

「母さんも…よかった。あれから本当に、心から愛した人と幸せな人生を過ごしていて」

ユリウスは母の両手を握りしめた。

「あれから…故国を出てから、母さんの事だけが心配だった。…あの街に…あの家に残してきた母さんが…形見の狭い思いをしてやいないだろうか…。その事だけが気がかりだった」

声を詰まらせてそう言うと、再びユリウスが肩を震わせしゃくり上げた。

「ユリウス…。ありがとう。…母さんの事を心配してくれていたのね。…やっぱりあなたは優しい子だわ…ありがとう」

肩を震わせてこみ上げる嗚咽を押さえるように口を押えて涙を流す娘の髪を、背中を優しく撫でさする。

「ねえ、ユリウス。あなたの事を傍らで優しく見守っているあなたの旦那様と…あなたによく似た可愛い…私の孫を紹介して頂戴」

そう言ってレナーテは娘の身体を優しく撫でながら、そんな二人の様子を手を繋いで傍らで見守っていたアレクセイとネッタの方へ視線を向けた。

「あ!そ…そうだね。改めて紹介するよ。母さんも知っていると思うけれど、ぼくの夫のクラウス…本名はアレクセイ・ミハイロフというんだ。それから、ぼくたちの長女のアルラウネ。…小さなアルラウネでアルラウネッタ。それを縮めてネッタと呼んでるの。アレクセイ、ネッタ。ぼくの…母さんだよ」

涙に濡れた顔をクシャっと笑顔にして、ユリウスは母と、夫と娘を引き合わせた。

「改めて…。ユリウスの母のレナーテと申します。あなた…アレクセイというのね。…ロシアの方だったの?」

「はい。あなたの大事なお嬢さんを…20年前黙って連れて行ってしまい…本当に申し訳ありませんでした。でも…彼女と連れ添って、僕にとってもとてつもなく幸せな人生でした」

そう言ってアレクセイがレナーテに頭を下げた。

「ネッタ、おばあ様よ。…ご挨拶して」

ユリウスに背中を促されたネッタがニッコリとレナーテに笑いかける。

「おばあ様、初めまして。アルラウネです」

「初めまして…。ネッタちゃん。おばあ様ですよ。…あなた、お母さんの子供の頃にそっくりだわ」

感慨深げに、レナーテが、ネッタのふっくらとした白い頬に手を伸ばし、頬を、そして母親譲りのクルクルと波打った金の髪を撫でた。