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　アイリス曹長もここまで言われるとそうなんじゃないかと疑い始めてしまった。
「よし、怖い話をしましょう」
　アイリス曹長は、話題を変えるため2人が苦手な怖い話をしようとした。
刹那2人が引いた。
「旧暦時代ある若者グループが」
「はい、そこまで」
　アイリス曹長が話を始めたがミサキ中尉が止めた。
「アイリスさん、こんな素敵な夜に何を話してるんですか？
それに霊とかいないし。
アイリス、幽霊とか見たことあるの？」
　ミサキ中尉がアイリス曹長に質問した。

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　旧リビア共和国のトリピアの軍港では、ファントムペインおよびオーブ派遣艦隊が整備と補給を行っていた。
「高分子フィルターの在庫は、10号ストレージです」
　タケミカズチのオペレーターが指示を出した。
格納庫では、ムラサメなどの搬入と損傷機の修理が行われていた。
「予備タービンの組み付けを急がせろよ」
　格納庫では、パイロットの怒号が響いていた。
「補給班、車をどかせてくれ」
　それに負けず劣らず整備員の怒号が響いた。
ブリッジも幕僚などが修理の指示を出していたがユウナは、自室で寝ていた。
「まあね。
まさかこちらも3機が3機ともやられるとは、思ってなかったからな」
　それは、ガーティー・ルーも同じだった。
「ええ。
でもそれをスエズにも戻らずにここでというのは、正直きついですよ」
　正直これだけの損害が出たならスエズに戻りたかった。
「分かっては、いるがね、
だがしょうがない。
ほかの部隊が完膚無きまでやられたならまだ言い訳は、つくがファントムペインに言い訳はできない」
　ファントムペインは、困難な任務を遂行するため優秀な人材と兵器が優先配備されるため敗北は許されなかった。
ネオ大佐の言葉に近くにいた別の兵士も消沈した。
「パイロットが無事だったのは、不幸中の幸いととらえるか」
　ネオ大佐は、パイロットが無事だったことだけでも喜ぼうと気持ちを切り替えた。
「そうですね」
　兵士もそれに賛同した。
「ロアノーク大佐」
　その時別の兵士が来た。
「どうした？」
　その兵士を見れば尋常じゃないことが起きたのは、明白だった。
「ロドニアのラボのことなんですが」
　兵士が問題を言った。
兵士2人は、顔を見合わせた。
「アクシデントで処分に失敗したようで。
更に悪いことにコロニー軍にも発見されました」
　兵士が深刻な事態を報告した。
「おいおい」
　ネオ大佐も仮面をつけているので表情は、わからないが焦っているのは自明だった。
「報告を受けてスエズも慌てているようです。
とりあえずお耳に」
　兵士2人も動揺が隠せなかった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※

　施設内にミハイル副艦長、マーカー艦長、サオトメとアンディー大尉が入り問題の大量の腐乱死体があるところに来た。
ミハイル副艦長は、あまりの光景と異臭で目を背け手で鼻と口を抑えた。
マーカー艦長もハンカチで鼻と口を抑えたがそのむごたらしい光景から目が離せなかった。
アンディー大尉は、通路の隅で嘔吐していたがそんな中サオトメは懐中電灯で死体を照らし異臭をものともせず表情一つ変えずにここで何があったのか観察した。
死体の中には、割れた窓から侵入した烏が死体をついばみ内臓が飛び出しているのもあった。
大人の死体は、どれも子供の死体に覆いかぶさるようにうつぶせに倒れていた。
ミハイル副艦長は、歩こうとしたとき小さなガラス瓶をけってしまった。
そしてそれが右壁に当たった。
その音にミハイル副艦長は、驚いたが大事なくほっとした。
しかしそれもつかの間壁を照らすと割れた大きなガラス容器に管がついた子供が入っていた。
「これは、一体。
何なんですか、ここは」
　ミハイル副艦長は、混乱のあまり絶叫した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※

　建物の外にいたサイジョウは、その声に反応したかのように建物を見た。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※

「用済みになり証拠を全て始末した」
　サオトメが語りだし皆がサオトメに注目した。
「ここの作業員は、子供たちを守るべく身を挺したものの弾は自分たちの体を貫き幼い命も殺めた」
　サオトメは、弾痕や死体状況から何があったのか推測した。
「でも何でこんな子供が？」
　ミハイル副艦長は、子供がいる理由がわからなかった。
マーカー艦長は、割れた大きなガラス容器に入っていた子供の顔に触れた。
死体は、すでに冷たくなっておりマーカー艦長はそれ以上死体を見ることができなかった。
嘔吐がおさまったアンディー大尉は、地球軍のやり方に強い怒りを感じた。
サオトメは、2人のリアクションを見て仕方なしと感じた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※


　アイリス曹長の自室の時計は、11時30分を指していた。
「アイリス、眠たくなってきた」
　ケイト中尉がパジャマ姿で訴えた。
「そろそろ寝よう」
　それにミサキ中尉も続いた。
「眠たい人間の顔じゃないんですが」
　アイリス曹長は、一瞬にして2人の心を見抜いた。
「よい子もうは、寝ないと」
「寝ないと」
　ケイト中尉とミサキ中尉は、アイリス曹長が寝るベッドの上で必死に誘ってきた。
「今ベッドを用意するので」
　アイリス曹長は、折り畳み式のベッドを出そうとした。
しかしミサキ中尉は、ベッドをポンポンと叩き無言で誘った。
「ポンポンじゃありません。
今すぐ降りてください」
　アイリス曹長がお願いしたが2人は、首を横に振った。
「じゃあ今すぐ帰ってください」
　アイリス曹長がとうとう帰るようにお願いしたが2人は、必死に首を横に振った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※

　サオトメたちは、ヒトの脳が壁一面にホルマリン漬けされている不気味な部屋にいた。
サオトメは、そこにあったコンピュータのデータ解析を行っていた。
ほかのものは、その異様なサンプルから目を離せなかった。
その時サオトメが何かを見つけた。
その異変に気づいたマーカー艦長が近づいた。
「64年7月、11廃棄処分3入所。
8月、7廃棄処分5入所」
　サオトメが記載されている記録を読み上げた。
「何ですかそれは？」
　ミハイル副艦長も何かと尋ねながら近づきアンディー大尉も近づいた。
「被験体、つまり子供の入室記録だな」
　サオトメが記録の正体を言った。
マーカー艦長とアンディー大尉は、その正体に衝撃を感じた。
ミハイル副艦長は、壁にあるサンプルはその研究に使われたものだと気づいた。
「連合のエクステンデッド。
艦長たちもご存知ですよね？」
　サオトメは、そういいながらヤキン・ドゥーエ戦役にて強化人間と戦った時のことを思い出した。
「ナチュラルを忌み嫌う連合、コーディネイタータカ派が遺伝子強化を施しかつ薬やその他の様々な手段を使って作り上げている生きた兵器。
戦うためだけの人間。
ここは、その実験と製造施設ですね」
　サオトメは、この施設の正体を見抜いた。
皆の衝撃は、すさまじかった。