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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 ティミーとポピーの声にも二人のソロは気を許すことなく、憎悪に満ちたまなざしでバトラーを睨み付けている。
 バトラーを攻撃していたソロが、忌々し気な口振りで声を荒げた。
「おまえは結界のほこらにいたヘルバトラーだろう。魔物が何の用だ!」
 斬り傷だらけになりながらも、バトラーは頬を吊り上げてにやりと笑う。
「ふ……やはりオレを倒した勇者だ、さすがに一撃が重い……」
「動くなと言っている!」
 バトラーの前にいるソロも剣を突き付け更なる警告に出るが、バトラーは気にも留めずにティミーへと話しかけた。
「ティミー様、剣を。どちらかがモシャスを使っているはずだ」
 様子を見ていたルヴァがすかさず理力の杖を構え、回復呪文ベホマを唱えた。
「癒しの柳絮(りゅうじょ)よ、ここへ────」
 小さな光の粒が降り注ぎ、バトラーの体を優しく包み込んで傷を癒していく。
 ティミーがその隙に剣を翳した────ティミーの背後にいた勇者の輪郭が解け、女性の姿に変わる。
 真っ直ぐな桃色の髪に尖り耳の女性がさっと飛び退き、ティミーを驚愕の目で見つめてから視線はトルネコへと移った。
「トルネコさん、なぜ魔物を連れてきたの? この人たちは何?」
 訝しみつつも先程よりは話を聞く体制になったと判断したトルネコが、どっと溢れた額の汗を拭いながら話し出す。
「落ち着いてください、二人とも。ソロさんの子孫とそのお仲間だそうですよ」
 勇者ソロとシンシアという女性は同時に唖然とした表情に変わり、ソロの口から抑揚のない呟きが零れた。
「……は? 子孫?」

 一行は色とりどりの花が咲き乱れる広場に案内され、めいめいに腰を下ろした。
 ティミーとポピーがいきさつを説明すると、ソロはこめかみを押さえながら眉間にしわを寄せている。
「はー……過去に行ける絵、魔物が仲間になって、更にはマスタードラゴンをベルで呼べる時代だぁ? 想像もできねぇな……」
 ポピーの膝の上でとろけているスラリンを、横からシンシアがぷにぷにとつついている。噛まないと分かりポポロも参加し始めたのを見つめながら、トルネコが話を繋いだ。
「でもソロさん、この子は確かにあなたの子孫ですよ。装備も本物、何より目の前でギガデインを見ましたからね」
「いやまあ、別に嘘だとは思ってないけど……パデキアだったらソレッタに行ってみれば?」
 ソロの言葉に、ティミーがすぐに地図を取り出してルヴァと共に覗き込む。
「ソレッタ……どこだろ」
「ティミー、ここですよ、ほら」
 ルヴァがいち早く指差した場所を見て、現在地からの距離を目で追う。
「う、わー……結構遠いね。これ何日かかるかなぁ」
 渋面を作りそう呟くティミーに、ソロはぼりぼりと後頭部を掻きながら話し出す。
「行くならルーラで連れてってやるけど」
 ぶっきらぼうな口調ながらもまたとない申し出に、ティミーが目を丸くさせた。
「……さっきは悪かったよ」
 バツが悪そうにちらとバトラーを見るソロへ、ティミーが柔らかく笑った。
「いざとなったらザオリクできるから大丈夫です。な、バトラー」
 いかつい顔に僅かな笑みが浮かぶ────人間に対してこれほどに優し気な顔を見せるのかと、ソロとシンシアの意外そうな視線が向けられた。
「心配無用、オレはそう簡単には倒れませんよ。盾の役割はきちんと果たしますゆえご安心ください。お二人に何かあれば、それこそリュカ様に顔向けできん」
 言葉だけなら人間と何ら変わらない。それどころか忠実な僕ですらある────と思ったソロが、ふっと口の端を上げた。
「元はピサロ配下の四天王が、今は人間の味方かー……凄い父親なんだな」
「それだけではない。リュカ様が治めるグランバニアは、人と魔物が共に暮らしているぞ」
 ピサロを呼び捨てにされても、同時にリュカを褒められたことでバトラーの意識は削がれていた。
 スラリンがぴょこんと飛び跳ね────案の定ルヴァがびくりと肩を揺らした────嬉しそうに話し出す。
「ボクたちを見ても、誰もいじめないよ。皆仲良しなんだー!」
 ティミーとポピーよりも少し紫がかった青の目が弧を描いた。
「そっか……良かった」
 ソロはスラリンのつるりとした肌に指を滑らせ、口元を緩ませている。何かを思い返しているようなどこか遠いまなざしは温かくも切なげで、彼は穏やかな表情で瞬きを繰り返す。
「…………良かったな、ほんとに」
 規則的に上下する睫毛は僅かに濡れて、先程よりも陽の光を多く湛えた瞳で呟く。
 ゆっくりと噛み締めるようなソロの小さな声は、青空に溶けて広がっていった。

 それからやや時を置いてトルネコ親子は自宅に戻ると山を下りて行き、ソレッタに行くならルーラでひとっとびできるからと先に昼食を用意することにして、神鳥守護聖たちとグランバニア勢の一行はしばし休息を入れた。
 ティミーとソロ、シンシアの三人は周辺の森でかまどの焚き付け用に使う枯れ枝を探す。やがて単調作業に飽きたらしいティミーがすぐ目の前にいるソロへ話しかけた。
「それにしても、ご先祖様って見た目よりおっかないね。いきなり襲ってくるから心臓止まるかと思った」
 茶化した言い方をしたティミーは背負った籠にぽんぽんと太めの枝を放り込む。長すぎるものは鉈で調節し、乾燥と薪割り作業が必要な太い幹はソロと二人で持ち帰ることにした。
 おっかないと言われたソロが唇を尖らせてティミーを睨む。
「見た目よりってなんだよ。魔物と人間が一緒に来たら警戒するっつーの」
「でもぼく天空の装備だしさー、見て気付かないものなの? トルネコさん親子も疑ってたし」
 一瞬ぴくりとソロの動きが止まる。だがすぐにぶっきらぼうに言い放つ。
「……だから悪かったって。オレの偽物が有象無象出て迷惑してるんだよ、勇者を騙って寸借詐欺とかな」
 何故襲ったかについて言葉を濁したソロの言葉に、少し前で小枝を拾っていたシンシアが振り返り、二人に向かって口を開く。
「天空の装備もね、トルネコさんのお店に行けば見れるから。あなたの鎧もうまく作ってあるなーぐらいに思ってたの」
 ソロとシンシアの言葉に嘘は感じられないが、どこか本当の理由を隠している気もする────とティミーは訝った。
「それにしたってあれは酷くない……? 完全に殺しに来てたよね」
 ティミーを見つめるソロのまなざしに、刺すような強さが宿った。
「…………色々あったんだよ、それ以上訊くな」
 脅すような声音の傍ら、まなざしの奥に深い哀愁を見て取ったティミーはこくりと頷きを返し、口を閉ざした。
「あとご先祖様はやめろよ、オレがジジイみたいだろ。ソロでいい」
「えっ、だってぼくの時代ではソロさんとっくにお墓に入っちゃってる……」
「人間が数百年も生きてたらそれも問題だろ!」
 奇妙な会話にシンシアがぶふっと吹き出し、必死で笑いを堪えている。
 ソロは思わずへの字に歪んだ口を誤魔化すように、手にした小枝を手でへし折り無造作に籠へと投げ込んだ。
「でも天空人って長生きだし、ソロさんも割と長生きしてたかもよ。お墓も形だけって話だったから」
「なんで引き続きオレの寿命の話になるんだよ……やめろってホント……」