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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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「えーっ、リュミちゃん残るの? じゃあ私も残ろうかな。畑のこととか別に詳しくないし」
「おいおい待てよ、そこの勇者くんが案内するなら、レディが一人になってしまうじゃないか。護衛として俺も残ろう」
 まーた始まった、とオリヴィエとティミーが呆れている中、ルヴァが冷静に突っ込む。
「ええっ? さっきソロ殿に化けて大変いさまs」
 言いかけたルヴァの口をオスカーがばむっと抑え込み、何事もなかったように爽やかな笑みを浮かべた────シンシアへ向けて。
 きょとんしたシンシアを見て、ティミーが眉間にしわを寄せて盛大にため息をつき、言葉を紡ぐ。
「……オスカー様が残るんだったら、シンシアさんが別の意味で危ないからぼくも残る。大丈夫だよな、ポピー」
 ティミーはニッと白い歯を見せて笑み、妹へと視線を向けた。
 ソロは勇者で剣さばきは先程見た通り、ポピーとルヴァも高位呪文を難なく使いこなす。戦力としては十分だろうと判断を下し、妹に委ねることにしたのだ。
「うん、任せて。すぐ戻ってくるね」
 双子はいつもの合図でぺちんと両手を合わせ、祈りの言葉をささやき合う。
 魔物たちも人里から離れたこの村に残ることとなり、ソレッタへ向かうのはソロとポピー、ルヴァ、マルセルの四人と決まった。
 手荷物も少ないソロへ、ティミーが声をかけた。
「ソロさん、天空の装備で行く?」
「ん? いや要らないだろ。トヘロス使っときゃいいし」
 あっさりと断るソロにティミーはもう少し食い下がる。
「じゃあ剣だけ持って行ってよ。はい、交換」
「あ……あぁ、じゃあ、借りるわ」
 戸惑いながらもティミーから剣を受け取るソロ。
 ラフな緑のチュニック姿だったがやはり本家本元と言うべきか、天空の剣は驚くほどソロの手に馴染んでいる。
「うわー……かっけー!!! 伝説の勇者だあ!!」
 これまで自分以外に装備できる者のいなかったティミーにとって、生まれて初めて他人が装備したのを見た瞬間である。
 無邪気に喜ぶ子孫の姿に苦笑しつつ折角だからと大げさに素振りをしてみせると、ポピーも一緒に大喜びで拍手していた。
「ま、オレが本家だしな?」
 照れ臭そうに笑って、こほんと小さく咳をした。
 そうして、ポピーたちはソロの移動呪文ルーラでソレッタへと旅立っていった。

 すぐにソレッタへと到着したポピーたちは、ソロに連れられ王との謁見に臨んだ。
 ソレッタ王はソロを見るなり満面の笑みで一行を出迎える。
「おお、君は! 久しいな、元気そうで何よりだ。諸々の活躍の話は耳に届いているよ。相変わらず大した娯楽もないが、ゆっくりしていきなさい」
 そう言ってソロの肩をぽんぽんと叩いた王の顔には、優しい気質の滲み出た笑い皺がくっきりと現れている。
 この土地は旅を始めて間もなく訪れた場所のため、ソロも懐かしそうに目を細めながら単刀直入に話を切り出す。
「ありがとうございます。あの、ここへパデキアを貰いに来た旅人っていました?」
 やはり行方不明ということもあり気持ちが逸るのだろう、ポピーがやや前のめりに話をし始める。
「長めの黒い髪で、たぶん白い服で、頭と外套に紫色の布を巻いていたと思うんですけど……」
 両手を組み祈るようなまなざしで問うと、王は顎髭をさすって刹那考え込み、すぐに口角を上げた。
「ああ、そんな青年なら二、三日前に来たぞ。大きな猫を連れていた。あれは賢い生き物だったなぁ」
「……お父さんとプックルだ!!」
 王の言葉に、ポピーは顔中に安堵の色を広げ涙ぐみ、その潤みは彼女の唇をわななかせた。
 ポピーの内心抱え続けた不安が溶けゆくような声音につられ、思わず涙ぐんだマルセルが彼女の頭をそうっと引き寄せ、言葉をかけた。
「良かったね、無事だったならすぐに会えるよ」
 金髪の色味と髪質が似ているせいかティミー以上に兄妹(見方によっては姉妹)にも見える二人の前で、リュカが来た経緯を知る王が口を開いた。
「おや、あの青年の娘さんなのか……そう言われてみれば、目元が似ているね。遥々探しに来たんだね?」
 成長したとはいえ王から見ればまだ年端の行かない少女である。細い肩を震わせて泣き出したポピーを慰めるように、王は大臣を手招いて一行に茶を振る舞うよう小声で告げる。
「興味があるなら畑を好きに見て回ると良い。生憎、彼が次にどこへ向かったのかまでは分からず申し訳ないが……」
 ソレッタ王はゆったりとした足取りで畑の様子を見に行き、一行はポピーが落ち着くのを待ってから王の後を追って畑へ出た。
 畑仕事に精を出す村人へ声をかけていた王が、近づく足音に振り返る。
「落ち着いたかね?」
 ポピーへ向けてかけられた言葉に、彼女ははにかんで答えた。
「はい。お気遣いありがとうございました」
「事情は彼から聞いているよ。パデキアは多めに渡しておいたが、君たちも持って行くか?」
「いいんですか? ぜひそうしていただけると助かります」
 王とポピーがそんな会話をしている間、マルセルとルヴァは早速畑の様子を見て回る。
 屈み込んだマルセルが両手で土を掬い取り、親指でさらさらと感触を確かめる。ルヴァはその隣に並び立ち、興味深そうに彼の動作を眺めた。
「どうですか、マルセル。何か分かりそうですかー」
 今度はぎゅっと握りこみ、鼻先を近づけていく。
「ふかふかしてて凄く保水性のある土ですけど……これなら他の地域でも作れそうなのに」
 そう言って、マルセルはうーんと唸る。
「土の配合次第で水はけや保水性はある程度変えられますし、気候だってハウスを作れば手間はかかるけどできなくもないですよね。ここの土壌にしかない何かって、なんだろう……」
 しばらく考え込んでいたマルセルが、立ち上がって王のところへ走っていく。
「王様、お話中すみません。ちょっとお伺いしたいんですが、パデキアには何の肥料をお使いですか」
 ソロと雑談をしていたソレッタ王が振り返り、マルセルの問いに答える。
「生長があっという間だからそれほど使ってはいないが、強いて言うなら牛や馬のふん、野菜くず、あとは海水を少し撒いているよ」
「海水……そうか、ミネラルを足してるんだ……」
 思い当たる節でもあるのか、顎に手をやり頷きながら呟いていると王が言葉を続けた。
「堆肥も見ていくかね?」
「はい、是非!」
 すぐに目を輝かせたマルセルを王は眩しそうに見つめ、目尻の笑い皺が一層深くなった。
「来なさい。君のように若い子が農業に興味を持ってくれるのは頼もしいね」

 マルセルが堆肥の説明を受けている間、ルヴァはポピーとソロのところへ戻ってくる。
 ポピーが大きな麻袋を広げ、そこへソロが黙々とパデキアの根っこを入れていた。
「おや、これがパデキアの根っこですか」
 ルヴァはそう尋ねて木箱に入れられたパデキアの根っこを一つ手に取り、しげしげと観察を始めた。
 ソロが視線をパデキアに止めたまま、ルヴァの言葉に応えた。
「そう。一度全滅したんだけど、南の洞窟に種を保管してあって、魔物だらけだったからオレたちが取ってきたんだ」
 そこでルヴァの青灰色の目がゆっくりと勇者ソロへと注がれ、二人の視線がかち合った。