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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 老魔法使いブライは何か言いたげにしていたが、立場上まずは姫様からと思い静かに控えている。神官クリフトもまた、そんなブライの様子にちらちらと視線を飛ばしていた。
 自分たちが死んでいたと言われれば流石のアリーナも気色を害したようで、むっすりと不服そうな顔のまま口火を切った。
「……私たちが負けてたですって? 失礼ね。お父様もいちいち喋らなくていいじゃない、そんな変な夢!」
「そうは言ってもな。大事な一人娘に何かあっては、妃に申し開きのしようもないだろう? 私はあの世で叱られたくないぞ」
 呆れかえった口調で告げてから、王は真顔で言い含める。
「現に、おまえを負かした者が出た。違うか」
 笑みのない顔で問われたアリーナが、答えにくそうに口先を尖らせる。
「ちがわ、ない、けど」
 王は片肘をついて手の甲で頭を支えると、僅かに表情を緩めた。
「ソロと共に諸悪に打ち勝った、自慢の娘と従者たちだ。おまえの実力は私も認めているのだよ」
 優しく諭す父の声に、アリーナの顔からも険が取れていく。
「何かの異変が起きているのは確かだ。私は異変の尻尾の先を垣間見たに過ぎん」
「……もっと調査したほうがいいってことよね?」
「その通り」
「もー、そう言うなら自分で調べてよー!」
「すまぬな。頼りにしているぞ」
 悪びれもせず他力本願な父王に呆れ、アリーナは嘆息する。
「この話、ミネアにもしておいた方が良さそうね。ブライ、今からモンバーバラに行くわ」
 振り返ってブライを見ると、ブライの片眉がくいっと上がった。
「何を仰る……本日は午後からご公務があります。サボリは許しませんぞ」
「ちっ、バレたか……じゃあ明日行くから、二人とも予定空けておいてね」
 そうして王の間を後にした三人だったが、軽やかに階段を降りたアリーナは足を止めて振り返る。
「ねえ、さっきの話どう思う?」
 そう言った後で前を向いたアリーナの視線の先には、花畑に囲まれた人工池がある。
 立場上自由な外出が許されなかったため、城の者の目も届くこの場所で花冠を作ったり水遊びに勤しんでいたこともあった────ふとそんなことを思い出しながら、泳ぎ回る小魚を目で追いつつアリーナは二人に問いかけた。
 ブライがひとつ頷いて口を開く。
「先日の話よりもきな臭いですな。捕らえられたエルフとやらが、どうにも知っている者のような気がして落ち着かん」
 ブライからアリーナへと視線を移したクリフトも、真顔で頷く。
「……ロザリーさんだったらと考えてしまいますね」
「何か凄く嫌な感じがするの……お父様の予知夢、今回ばかりは外れて欲しいけど」
 アリーナはそう話すと、池に視線を縫い止めたまま口を閉ざした。
 刺すような闘志が宿り始めたアリーナの瞳を横目に捉え、クリフトは戸惑いを払拭し始めたと安心した様子で話し出す。
「ともあれ、我々の出立は明日ですね。まずは姫様のご公務が優先ですから」
 嫌そうに眉根を寄せたアリーナへ、クリフトは更ににっこりと微笑みを返した。

 翌朝、アリーナたちはミネアとマーニャを探してモンバーバラを訪ねることにした。
 彼女の占いの力はずば抜けている上に、マーニャが移動呪文を使えるため行き来がしやすい。危急の事態にも備えておくほうがいいと進言したのは、サントハイムのご意見番ブライである。

 すんなりと歓楽の都モンバーバラへと到着したアリーナたちだったが、どこを探し回っても姉妹が見つからない。
 街中くまなく探して嘆息しているアリーナへ、クリフトが声をかける。
「姫様、コーミズ村にも寄ってみませんか。ご実家のお墓参りをしているかも知れません」
 この街のトップスターであるマーニャは勿論のこと、ミネアも占い師として有名になり、今では二人とも忙しい毎日を送っている。
 毎年この時期には武術大会の応援を目的に、少し長めに休んで実家の手入れもするのだと聞いていたブライが、顎髭をさすって空を見上げた。
 キングレオ城に突入前、ブライとクリフトは当然のようにアリーナの補佐を務めようとして、姉妹と少し揉めた。
 元々勝気なマーニャはともかく、普段穏やかなミネアまでが一歩も引かず、ここは自分たちが行くと言って譲らなかった。
 戦いの後で姉妹は揃って頭を下げに来て、以前ここにいたのが親の仇だったと涙を浮かべていたことを思い出す。
「……人の住まない家はすぐに傷みますからな。かといって、住むには辛い思い出も多い筈」
 そんな老魔法使いの言葉に「意外とブライって優しいのよね」と内心思ったアリーナが小さく笑った。
「そうね……行きましょ!」

 その後訪れた長閑なコーミズ村にも、姉妹の姿はなかった。
 ふうと溜め息をつき、アリーナは髪を後ろに放って呟きを漏らす。
「どーこ行っちゃったのかなー。もしかして、入れ違いになってるのかなー」
 アリーナの声を耳にしたクリフトが、生家の周りをじっくり見回り始めた。
 どうやら既に手入れをされた後のようだ。周囲の雑草もきちんと取り除かれ、戸締りもしっかりしている。
 今年はここを掃除してから武術大会の観戦に来たのかもしれないと判断し、クリフトが話し出す。
「残るはエンドールしかないでしょうね」
 アリーナの薔薇色の瞳がすうっと細められた。
「まさか、まだカジノにいたり……?」
 その呟きへ、ブライが突っ込む。
「あり得る話ですな」

 そうしてすぐにエンドールのカジノを探し回ったものの、ここにも姉妹の姿は見当たらなかった。
 アリーナはバーカウンターのテーブルにゴンと額をぶつけ、盛大に溜め息をついた。
「うぅ……いないなぁ……」
 突っ伏したまま暫し考え込んだアリーナが、頭を上げてクリフトを見た。
「トルネコのところにいるとか、ないかな」
「行くだけ行ってみましょう。ここにいても恐らく時間を浪費するだけですから」
 聖職者であるクリフトはカジノ自体あまり好まず、できれば早く退出したい気持ちが言葉に滲み出ている。
 一行はすぐにカジノを後にし、トルネコの店へと向かった。
 店内には数人の客が来店し、ネネの隣でトルネコがアイテム鑑定をしていた。
 彼の手が空くのを待っている間に、奥から出てきたポポロが話しかけてくる。
「ア……、こんにちは。父に御用でしょうか」
 アリーナの名を呼びかけて一瞬口ごもり、咄嗟に一般客と同じような接客態度に切り替えるポポロ。
 顔はともかく名の知れ渡ったサントハイムの姫君である。先客たちが騒ぎ出しかねない可能性を考えての行動だったが、それに気づいたクリフトとブライが密かに感心していた。
「奥へどうぞ」
 ポポロに案内されて彼らの居住スペースで待たせて貰った。暫くすると先客のアイテム鑑定を終えたトルネコがやって来て、少し驚いた様子で目を丸くしている。
「これはこれはお揃いで。どうしたんです」
 トルネコが来客用の茶菓子を勧めながらそう切り出すと、アリーナがすぐに本題に入った。
「トルネコ、マーニャとミネア来なかった?」
「そのお二人なら、ソロさんのところですよ」
 トルネコの答えに、アリーナは露骨に嫌そうな声を出す。
「うええ〜〜〜っ、今度は山奥の村か〜……」
「何かあったんですか?」