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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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「迷子になってなければ、ソロと一緒にいるのかも知れないな。とりあえずもう暫く待とう」
「そのほうがいいです。入れ違いになっても面倒ですし」
 ポピーはそう話しながら肩掛けの鞄を下ろしてふうと息をついた。話が一区切りついたところを見計らって、リュミエールが話しかける。
「無事にご家族と会えて良かったですね、ポピー。ルヴァ様がお戻りになるまで、少しの間休んでください」
「そうします。細かい話はまた後で」
 そうしてルヴァたちが合流するまでの間、一行は束の間の休息を取った。

 ルヴァとティミーはその頃、教会の様子を見てからバトランド城内でソロたちを待っていた。
 二人はあれから空飛ぶ靴を配っている女がいないかを確認しに行ったものの、場所を変えたのかは不明だが教会には来ていない旨を神父から聞き出せた。
 通路の向こうから謁見を終えたライアンとソロが歩いてくるのが見えて、寄りかかっていた壁から背を離す。
 ぺこりとお辞儀をしたルヴァが早速話しかける。
「あー、ソロさんお疲れさまでした。謁見はいかがでしたか?」
「肩凝った。城下町の警備を厚くしてくれるってさ」
 率直すぎる感想に思わず苦笑したライアンが続く。
「今のところ取れる対策は打った。後は王にお任せするとして……そちらはどうだった?」
 ライアンの視線が二人へ注がれ、その質問にはティミーが答える。
「靴は配られてないっぽいよ。嗅ぎ付けたのかもね」
「ふむ、それならそれで良いだろう。これ以上この国で好き勝手はさせん」
 ライアンの決意がにじむ声音に頼もしさを覚え、ルヴァは大きく頷く。
「そうですね。早速宿屋へ向かうとしましょう、リュカのほうも心配ですし」

 そうして移動を始めて間もなく、交差路を過ぎたところで背後から男女の声がかかった。
「ソロ!」
「ルヴァー!」
 呼ばれて何事かと振り返れば、マーニャとオリヴィエが手を振っている。
 元気そうなオリヴィエの姿を見た瞬間、一気に破顔したルヴァが足早に歩み寄っていく。
「オリヴィエ、目が覚めたんですねー! 体は大丈夫ですか」
「ん、元気元気! ここで待つの退屈過ぎてちょっとブラブラしてたトコロ」
 ねっ、とマーニャへアイコンタクトを送るオリヴィエ。
「そうでしたかー。ああ、では他の皆さんも宿にいますよね」
「ブレインのあんたに話さなきゃいけないこと山積みなんだから、ほら行くよ!」
 オリヴィエに背を押されてつんのめったルヴァが、振り返って声を上げた。
「えっ、あっ、あああのオリヴィエ!?」
「なあにー、恋人の近況とか聞きたくないのー?」
「へっ? どういうことですか?」
 ルヴァとオリヴィエの会話に、ソロが割って入る。
「えっルヴァって恋人いんの」
 意外そうに目を丸くしたソロへ、オリヴィエがニイと口の端を持ち上げて話し出す。
「いるよー、お相手は私たち守護聖をまとめる女・王・サ・マ」
 そのやりとりの最中、マーニャがじいっとルヴァの顔を凝視したまま思ったことを口にした。
「色恋にはすっごく疎そうなのにね」
 マーニャの視線はちらと隣のライアンにも移り、ルヴァとともに苦笑いを浮かべて頭をかき、そっと視線を逸らした。
 宿屋が近づいてきた辺りで、ソロは前方に見慣れた三人組を視界に捉え、声をかける。
「アリーナじゃねーか。どうしたー?」
 ソロの声にアリーナはぱっと振り返り、それから満面の笑みでマーニャを指差した。
「見つけたー!」
 アリーナの行動をブライがすぐに窘める。
「人を指差してはなりませんぞ、はしたない!」
「ねえねえソロ、頭に布巻いた人見たの、これで二人目なんだけ……」
 ブライの小言を無視して無邪気にルヴァを見たアリーナが言うと、その話は後とばかりにクリフトがアリーナの視界を遮って話し出す。
「あの、ミネアさんは今どちらに?」
 問われたマーニャが長い髪を後ろに放りながら答える。
「ミネアなら宿屋にいるわよ。わたしたちももう戻るから、一緒に行きましょ」

 人が増え唖然としている宿の主人を横目に、一行は部屋に戻る。
 勢いよく扉を開けたオリヴィエがにこやかに室内へと足を踏み入れていく。
「たっだいまーっ。オリヴィエ様のお帰りだよー」
 オリヴィエに続いてどやどやと入ってきた者の中に、兄の姿を見つけたポピーが呼びかける。
「お兄ちゃん!」
 脊髄反射で妹の声に視線を向けたティミーが目を見開いている。
「あれっ、ポピー? えっなに、お父さんと一緒じゃないの?」
「お父さんね、先にホイミンさん探しに行くって……わたしたちはデスパレスへ行けって言ってた」
「あーそう来たか。了解」
 話を聞いていたマーニャが柳眉を片方持ち上げ、小首を傾げた。
「ねえ……ホイミンってあの吟遊詩人よね? 何があったのよ」
 そう言ってライアンへと視線を投げ、それを受けてライアンが重い口を開く。
「うむ……どうやら、何者かに連れ去られた可能性がある」
 苦々しさが張り付いたライアンの顔をマーニャはじっと見つめ、言葉の代わりにとんと肩を掴んだ。
 彼女なりの励ましが伝わったのか、ライアンの頬が僅かに上がる。
 最後に入室したサントハイム組は大人数がひしめき合っている室内を見渡して、ミネアを探す。
 部屋の奥のほうにいるのを発見して移動する間、アリーナは金髪に青い瞳の若者二人にちらと視線を向けた。
「クリフト、あの男の子のほう、天空の鎧でしょあれ」
 顔を近づけて声を潜めたアリーナに驚き、話しかけられたクリフトは内心の動揺を悟られないよう小さく咳をした。
「そのようですね。随分精巧に作られてるようですが……」
 ふうむと唸ったブライも続く。
「まさか本物ではあるまい。よくいる模倣者でしょうな」
 そんなやりとりを偶然耳にしたルヴァが、通り過ぎていく三人へ思わず話しかける。
「正真正銘、本物の天空の鎧ですよ」
 アリーナはぴたりと足を止めて振り返り、ルヴァの目を真っ直ぐに見返してくる。
 きょとんと瞬きを繰り返しているアリーナに、ルヴァは自己紹介がまだだったと思い、姿勢を正した。
「あーこれは突然失礼しました。私はリュカの友人、地の守護聖ルヴァと申します。ええと、あなた方はもしかして、サントハイムの皆さまでしょうか」
 手帳に記した導かれしものたちの中で、まだ会えていなかった三人だと推測してそう切り出すと、アリーナは気にした様子もなくにこりと微笑む。
「ええ。私はアリーナ、こっちが神官クリフトで、そっちが魔法使いブライよ」
 手短に挨拶を済ませ、ルヴァは改めて状況を整理するためにひとつ手を叩いた。
 それぞれで話し込んでいた者たちの視線が一気に集中し、ルヴァはこほんと咳払いをしてから穏やかに話を切り出す。
「えー、皆さんお揃いのようですから、改めて情報交換しませんかー」
 場を仕切るのは正直性に合わないと思うものの、この大人数で統制の取れない状況のままでいるのは危険と判断してのことだ。
 それにはソロも大きく頷きを返し、ルヴァの横に並び立つ。
「そうだな。なんかまた色々事件が起きてるし、一回状況まとめようぜ」
 そうして、狭い室内に集まった面々の情報交換会が始まった。