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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

INDEX|168ページ/213ページ|

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 奥から漏れてくる空気を確かめていくと丁度人間一人が通り抜けできそうな範囲に漏れを確認し、その先に隠し通路、若しくは部屋があると予測した。
 引き返して応援を待つべきかと逡巡したものの、結局単独で突入することを決め、気合いと共に壁面へ拳を打ち付けた。
 ガラガラとあっけなく崩れた石壁の瓦礫を適当に退け、じっと暗闇に目を凝らす。
 視界の正面に見覚えのある赤い光がひとつ点り、ピーッと機械音が鳴った。
(起動音……! キラーマシンか!)
 この時代にはまだいなかったはずの魔物の登場に、流石のバトラーも目を瞠る。だがモノアイの点滅と同時にカウント開始の音が響き、すぐに攻撃態勢へと入った。
 グランバニアでも城内で暴走したロビンと対峙したバトラーは、落ち着いた様子で呼吸を整え灼熱の炎を吐き出した。
 暗闇を赤々と照らす炎がキラーマシン一機を包む。衝突の勢いで火の粉が舞い上がり、青い機体をおぼろに隠す煙の合間をちらちら瞬いては消え落ちる。
 ピピッ、と音が鳴った。それが標的を定めた音と知っているバトラーは、次の攻撃に備え正面に盾を構える。
 一も二もなく放たれた矢は動きの素早いバトラーでも完全にかわすのは難しい速さで、寸分の狂いなくバトラーの眉間目掛けて発射された。
「────っぐ!」
 盾越しのズドンと重い衝撃に腕が痺れたものの、続いてやってくるはずの攻撃へ意識を向ける。
 予想通り曲刀を振り回して激しく斬りつけてきて、盾では防ぎ切れなかった肩口に深い傷を負った。
「く……、やはり厄介なやつだな。ロビンほどではないが……!」
 体勢を立て直したバトラーが再び灼熱の炎を吐き出し、ようやくモノアイから光が消えた。
「……これで終わりか……?」
 音もなく縮こまっているキラーマシンの様子を注意深く確認しつつ、狭い通路の奥へと進んだ。

 キラーマシンは微動だにしないが、砂に変わることもなく沈黙している。
 その横をゆっくりと通り過ぎ、辺りを見回したバトラーは思わず驚きの声を上げた。
「……何だこれは……!」

 おびただしい数の骨が床から壁の中ほどの高さまで、山となっていた。
 それもよく見れば殆どがとても細く短く、バトラーの感覚で言うならば「柔らかそうな」骨ばかり────そして隙間を埋めるように隠れている頭蓋骨に目が留まる。
(恐らくは人骨だな。守護聖の危惧した通りか……偉大なるピサロ様の御膝元で、忌まわしい真似をしおって!)
 骨の山の内側から、かたん、と僅かな音が聞こえた。
 何かがいる気配にバトラーは飛び退き、じっと身構える。
 乾いた骨がカラカラと音を立てて山の上から崩れ落ちてきて、奥から小さな声が聞こえた。
「……ぁあー……」
 聞こえてきたのは赤子のような幼い声だ。余りにも不釣り合いな場面に、猛者と呼ばれて久しいバトラーの背をぞくりと戦慄が走る。
「……誰かいるのか」
 凍てつく波動をも上回る不快さに、バトラーの手の平がじっとりと湿り始めた。
「あぅ、あぁぁああー」
 声が大きくなると共に、骨の山が崩れていく。明らかにそこから何かが出てこようとしている────そう結論付けたバトラーは、一度引き返そうと後退った。
 そのとき、背後から駆け寄ってくる足音が聞こえて振り返る。城の兵士らしき死神たちがぽっかりと開いた出入り口────スラリンが吹っ飛ばした扉のあった場所────から入ってきて、ぐちゃぐちゃな室内の様子に驚いている。
 その内一人の死神がバトラーの姿を見るなり叫んだ。
「誰だおまえは!」
 死神兵士の怒りを孕んだ声に、背後から来るおぞましい気配が徐々に強まるのを感じたバトラーはすぐにその場から離れた。
 目の前にやって来たバトラーに剣先を突き付けた兵士へ、静かに問いかける。
「……気付いていないのか? あれの恐ろしい気配に」
「何の話だ!?」
 兵士たちに取り囲まれてもなお、バトラーの意識は骨山の中に向けられていた。
 かの地獄の帝王にも似た、油断すれば意識ごと持っていかれそうな支配の片鱗が、すぐそこにある。
 やがて怒鳴った兵士とは別の死神が奥の部屋に気付き、そこへ近づいて行った。
「やめろ、行くな!」
 咄嗟に引き留めたが、その声に警戒した兵士たちが一斉に剣先を近づけ、厚い皮膚を僅かに裂いた。
「んぅぅー……あー……」
 声に反応を示した兵士が骨山に手を伸ばす。
「なんだ、子供でもいるのか? なぜこんな場所に────」

 一部始終を見ていたバトラーや周囲の兵士たちの間に、緊張が走った。
 骨に触れたと思った瞬間、兵士は声を上げる間もなく消え去ったからだ。消えたと言うよりは、蒸発した、と言うべきかもしれない。
「な、なんだあれ……」
 兵士の一人がそう呟いた矢先、耳を聾するけたたましさで警告音が鳴り響き、骨山の周りからキラーマシンが続々と現れた。
 今度は我先にとこちらへ向かってくる。
「クソ、援軍か!」
 毒づきながら、流石にこれだけの数に一人で立ち向かうのは無謀と判断したものの、まずは自分を取り囲む兵士たちに退いて貰わねばならない。
 話をしようと口を開いたところで、先頭のキラーマシン一機のモノアイが強く光った。
 レーザー光線が発射され、バトラー含む兵士たちを横一直線に薙ぎ払う。
「ぐうぅっ!」
 堪え切れないほどの灼け付く痛みに、呻き声が漏れた。周囲から聞こえていた悲鳴が一斉に消え、キラーマシンの群れが近づいてくる音だけがまるで軍靴のように聞こえてくる。
 急いで構えた盾は、その役割を果たすことはなかった────否、レーザーは盾を貫通し腹部を横切っていたが、直撃を避けられたという意味においてはギリギリのところでバトラーを守り、そして役目を終えていた。
 真一文字にレーザーを浴びた盾はぱっくりと上下二つに割れ、舌打ちと共に投げ捨てる。
 偶然バトラーの陰になり生き延びた兵士がようやく状況を把握し、腰を抜かしたまま叫んだ。
「う……うわああぁ!!」
 バトラーは逃げ出そうとする兵士を片手で掴み、ぐいと背後に引き戻す。
「待て、動くと狙いを定めてくるぞ。ここに隠れていろ……死なせはせん」
 兵士は恐怖心の余り何度も首肯しながら見上げたバトラーの横顔に驚き、それから涙ぐんだ。
「あ、あなたは……ヘルバトラー様では」
 先程のレーザーがまたやってきては助からないと考えたバトラーは、彼からすれば小柄な兵士を背負い、群れを睨みつけながらじりじりと出口へ向かって後退する。死神兵士の発言に、厳しい顔を少し緩めて言葉を返した。
「ここへは会議以外で殆ど来なかった。知らんのも無理はないと思っていたが……そうか、オレを知っていたか」
 レーザーが届く範囲なのか、キラーマシンたちは遠ざかるバトラーを追ってはこない。
「亡くなられたとばかり……ご無礼をお許しください」
「些末なことだ。気にするな」
 キラーマシンの背後、骨の山が大きく動いた気がして目を凝らした瞬間、地面が大きく揺れて爆音が響き渡る。
 直後にやってきた爆風に兵士がダメージを負わないよう、背中の翼を伸ばして覆う。
 どうにか後退して建物の外に出たバトラーが兵士を下ろし、視線を合わせた。
「大至急ピサロ様にお伝えしろ」