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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 訓練と称してリュカに連れ出される際には多少話すこともあったが、多くはバトラーの威圧に負けて話しかけても来ない。スラリンに対しても当初思っていたが、彼ら初期加入の仲間を雑魚と侮っていた己がなんとなく恥ずかしくなった。
 少し顎を上げじっと見下ろしてくる長身のピサロを前に、ピエールがバトラーに問いかける。
「あの、バトラー殿、この方は……?」
「この城の主、ピサロ様だ。おまえなら心配は要らんが失礼のないようにな」
 バトラーの言葉に頷きを返したピエールは、すぐに片膝をつき頭を下げた。
「お初にお目にかかります、スライムナイトのピエールと申します」
 見下ろしたままピエールの挨拶を聞いていたピサロがゆっくりと瞬いた。
「……今後さして関わりもないだろうに、律儀だな。まあ良い、おまえも戦うのか」
「はい。我が主に辿り着く者を少しでも減らします」
 迷いなく発された言葉にピサロは一瞬眩しそうに目を細め、それからピエールにバイキルトを唱えた。
「行くぞ」
 ほんの僅かに口の端を緩ませての一言に、ピエールはバトラーから聞いた通りのカリスマだと思う。
(これが魔物たちの長か……凄いな。立場で言えばリュカ様とそんなに違わないのに、どこか気圧される……)
 バトラーと同じくピサロの後をすぐに追うつもりが、惚けたせいで少々出遅れた。
 後方をちらと確認したピサロが声を低くする。
「何をしている。来い」
「は、はい!」
 魔族の王にすっかり圧倒され面食らったピエールを見て、バトラーはピサロに分からないようにこっそりと笑っていた。

「ピサロ様、キラーマシンに呪文は効きません。ですので────」
「私を見くびるなよ。こんなもの、壊せばいいだけだ」
 バトラーの話を遮ったピサロの赤い瞳が強く輝きを増し、鮮やかな緋色に呼応して全身から紫色のオーラが溢れ出す。
 雷のごとく鮮烈な輝きは魔界の剣を同色に染め上げて、ピエールは恐ろしさと同時にその美しさに惹きつけられてしまう。
 キラーマシンが発射したレーザーを高い跳躍で難なくかわし、冷たいはずの刃は燃え立つ光の軌跡を描きながら肩口へと打ち下ろされた。
 火花が舞い散り、バリバリと激しい音を奏でて機体が袈裟懸けに裂けていく。そのまま手首を返して横一直線に薙ぎ払い、キラーマシンの頭を易々と刎ね飛ばした。繰り出された技の威力は魔神を思わせるほどで、ピエールはバトラーが心酔した理由を肌身で感じ取っていたが、逃亡し始めたキラーマシンを逃すものかと足で相棒へ指示を出す。
「ディディ、回り込め!」
 速度を上げて群れの中を駆け抜け、頭部のないまま後退するキラーマシンに一撃を放つ。
「はっ!」
 掛け声と共に剣を振り下ろしたピエールの攻撃は的確に胴体中央に位置するコアを破壊し、キラーマシンの動きを完全に停止させた。

 単体、全体攻撃をどちらもこなし攻守ともに優れたピサロ、キラーマシンへの弱点攻撃が得意で盾にもなるバトラー、単体攻撃力の強さと判断の的確さがウリのピエール。この強者三名による即席チームは、続々と現れ続ける魔物たちを薙ぎ倒しながら少しずつ骨山へと近づいていた。
 そんな戦いの最中にふっと笑い出したバトラーを、ピエールは怪訝そうに見た。
「どうしたんです」
「いや……こうして、ピサロ様と共に戦う日がこようとは……と思ってな」
 くつくつと喉奥で笑いながら、楽しそうな声音で話し出す。
「結界を守る番人だったが、こうして肩を並べたことなどなかった」
 バトラーの話に答えようとした矢先、二人の前にライノソルジャーと死神が弾き飛ばされてきた。
「お喋りとは随分と余裕だな。それほど暇なら片付けろ」
 落ちてきた魔物たちはピサロがムーンサルトで体当たりをかました結果だったようで、素っ気なく言い放った当人はすぐに強敵であるキラーマシンへと斬りかかっている。
 ピエールは「口調は素っ気ないのに優しい方だ」と言いかけたが、魔物の多さにひとまず口をつぐんだ。

 出てきた敵をあらかた片付けたところで、ピサロたちは沈黙しているキラーマシンに警戒しながら骨山に近づいた。
「ぅ〜……」
 骨山の中央から確かに聞こえてくる赤子の声に、ピサロが二人にちらと視線を送る。
 度重なる爆発のせいかバトラーが見たときよりも崩れており、細い骨の多くが周囲に散らばっている。
 ゴロリと転がり落ちてきた頭蓋骨に、バトラーが目を留めた。
「……後頭部がせり出ている」
 最初にここを見つけたバトラーは人間の頭蓋骨と思っていたが、幾つかは形状の違う頭蓋骨が混じっていることに気付き、散らばっている骨に視線を彷徨わせている。
 ピサロが足元の頭蓋骨を拾い上げ、丸っこいそれを片手に口を開く。
「死神の骨だろう。人骨と混ざっているようだが……」
 人骨を手毬のようにぽんぽんと弄ぶピサロの横で、片膝をつき低い位置から観察していたピエールが話し出す。
「あの……頭蓋骨の向きが」
 ピエールの言葉にピサロとバトラーが目を向けた。
「向きが、全て外を向いていませんか」
 そう指摘するピエールが骨山を指差し、残る二人もつられてそちらへと視線を移す。
 円錐状に積み上げられた頭蓋骨は全て綺麗に外を向いている────中心部分の何かを守るように。
 切れ長の目を僅かに細めたピサロとバトラーが小さく頷く。
「ふむ……言われてみれば、確かに」
「意図的なものを感じますな。何かの儀式にも見える」
「ここが墳墓ならば主の死を悼んだ兵たちとも考えられるが……場所的にそれはない。とすると生け贄か、護衛か……」
 ピサロとバトラーの考察に答えようとしたピエールが、より険しい顔ではっと振り返る。
「……竪琴が」
 風に乗り微かに漏れ聞こえる音色に、ピエールは耳を澄ませた。ぴたりと動きを止めたピエールへ、バトラーは不思議そうに問う。
「ん? 何か聴こえるか?」
 バトラーの聴力は人間と同程度のため、聞き取れてはいないようだった。ピエールがどこか上の空で頷く。
(あれは、ホイミン殿の竪琴……?)
 ピサロは自身の耳に届いた筈の音色にも、ピエールの言葉にも答えることなく、片手に持っていた頭蓋骨を勢いよく骨山目掛けて投げつける。

 魔力が移っているのか、淡い紫の光を纏った頭蓋骨は真っ直ぐに骨山の中央部分へぶつかり、整然と積まれていた頭蓋骨が床に四散した。
「うあぁー、あ……あー……」
 大量の埃が舞う中、再び聞こえ始めた幼い声に三人は一斉に警戒を強め、身をかがめてそちらを注視する。
 突如凄まじい輝きが中心から放たれ、溢れ出る光は衝撃波となり三人の身を襲った。
 咄嗟にピサロを庇ったバトラーが、思わぬダメージに呻き声をあげている。衝撃波は頑丈な皮膚をいとも容易く切り裂き、体のあちこちから鮮血が溢れ出ていた。
「ピサロ様、ご無事ですね……?」
「ああ。問題ない」
 小さく首肯したピサロがベホマラーを唱え、今しがたつけられた傷の多くが回復した。
 不可思議な光の攻撃に、ピエールは恐る恐るピサロへと話しかける。
「い、今の攻撃は……?」
「……威力こそ大したことはないが、恐らくはマダンテだろう……どうやらあれの仕業と見ていい」