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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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「おい。ご先祖様は止めろって言っただろ!」
 ぶはっと噴き出しながら、ソロは天空の剣を空へ掲げる。
 隣ではティミーもまた同じ動きをしていて、それがソロには微笑ましく映った。
 どちらからともなく視線が絡み合い、二人の呼吸がぴったりと合わさる。
「ギガデイン!!」

 二人から放たれた火花は激しく爆ぜながら上空へと舞い上がり、黒雲に吸い込まれた。間髪を容れず裁きの雷が激しさを滾らせてイゴーへと降り注ぐ。
「……っ!」
 白銀に輝く雷はイゴーの身体を貫き、その姿を地面に縫い留めた。咄嗟に顔を庇った両腕から、黒煙が立ち上る。
 そしてそれを皮切りに、仲間たちが続々と攻撃を始めた。
 ピサロはギガデインの詠唱を聞きつけてすぐに後ろへ下がっていたが、イゴーを貫く二つの雷を間近に見て、思わず呟きを漏らした。
「ギガデインが二発……」
 隣でその呟きを聞いたバトラーも、勇者二人の攻撃を前に口角を上げる。
「ティミー様は未来の勇者ですよ。母親が天空人の血筋でして」
「成る程、だから『ご先祖様』か」
 何故か誇らしげに胸を張るバトラーの前でピサロは最後まで笑いを堪えきれなかったのか、語尾が若干吐き捨てる形になりつつも、その表情は柔らかい。
 敵として対峙した時期を超え、共闘するのはこれで二度目だ────そんなことを考えながら、導かれし者たちの闘いに暫し魅入る。
 視界の先ではアリーナが既に地面を蹴り、赤子に向けて得意の回し蹴りを入れたところだ。
「髑髏が邪魔ーっ! 腹立つー!」
 鮮やかに蹴りを叩き込んだもののピサロたちの攻撃と同じく髑髏に阻まれ、着地したアリーナが悔しげに叫ぶ。だが、一度で蹴り飛ばした髑髏の数が十を超えていたのは流石と言える。
 続いてルヴァも理力の杖を大きく振った。僅かに輝きを増した杖から放たれた白刃の光はイゴーの大腿部を裂き、瞬く間に血を溢れさせる。
 その攻撃方法を目の当たりにしたブライが驚きの声を上げた。
「……魔力を刃にしただと!?」
 ブライの横ではクリフトも目を丸くして、唖然とした表情になっている。
「あのような使い方は、見たことがありませんね……」
 どこか感心した声色で話す二人へ、ポピーが会話に交じる。
「こちらの世界でもそうなんですか? わたしたちの時代でも杖を魔力で硬化させてますけど、男の人で装備出来たのも、あの攻撃方法もルヴァ様だけなんです」
 ポピーの言葉にクリフトとブライはきょとんとして、先にクリフトが口を開く。
「理力の杖なら私とブライ様も装備できますよ」
「え、そうなんですか? 数百年の間に何があったんだろ……人間はわたしとお母さんだけで、あとは魔物さんしか装備できないです」
 不思議そうに小首を傾げたポピーへ、二人も言葉を返す。
「ふうむ、同じ武器でも装備対象者が変わっているのか。面白いもんじゃの」
「時代の流れってものなんでしょうか。不思議ですね」
 彼らの雑談をよそに、イゴーは一際黒煙を上げる両腕をゆっくりと解き、真っ直ぐに一行を睨み据えた。その瞳全てが赤く光を放っていることに気づき、ピエールとリュカが身構える。
「来るぞ!」
「全体攻撃です、防御を!」
 叫んだ二人の声に反応したクリフトがすかさずスクルトを、ミネアがフバーハを唱える。
 一行がふんわりと優しい光の衣に包まれた矢先、イゴーの体から煙のように立ち上った光が遥か頭上に集まり、その光球が勢いよく弾けた。
 王者のマントを奪われているリュカを気遣い、ピエールが盾を構えて前に出る。リュカもまたピエールの考えを察知して、彼の陰で跪き上空へと視線を向けていた。
 息をする間もないほどの激しさで降り注ぐ、夥しい数の光の矢────鋭いそれは痛みよりも先に衝撃を与え、次いで熱を与え、最後に痛みと裂傷をもたらす。
 体力のあるライアンが丸腰のデズモンを庇い、守護聖サイドでは大柄なクラヴィスとオスカーが率先してリュミエールとマルセルを庇ったために攻撃が集中し、傷だらけになっていた。

「ぐっ……!」
 痛みを堪え切れず、思わず呻き声を漏らしたクラヴィスが姿勢を崩し、がくりと片膝をついた。
 黒い衣装のあちこちが裂け、そこから滲み出る血が白肌を汚していくさまに、庇われていたリュミエールが絶句し、どうにか名を呼んだ。
「クラヴィス様……!」
 続いてマルセルも涙目になりながら声を上げた。
「お、お二人とも大丈夫ですか!? 凄い怪我ですよ!」
 ある程度戦闘向けの装備と言えるオスカーもそれなりに傷を負い、こめかみから垂れ落ちる血を手の甲で拭いつつマルセルへ視線を向ける。
「大したことはない。そう心配するな」
「でも……!」
 不安気なマルセルへ笑みを向け余裕を示したオスカーは、それから表情を引き締めてオリヴィエとルヴァを見る。
「そっちは大丈夫か」
 身を屈めていた姿勢からしなやかに立ち上がったオリヴィエの衣装も、所々が裂けて血が滲んでいた。
「私はなんとか……遠隔攻撃とは恐れ入ったね」
 オリヴィエは一切の笑みのない顔で服の埃を強く払い落とした。長い睫毛に囲まれた瞳に隠し切れない怒りを湛え、ぼそりと毒づく。
「……ほんっと卑怯で嫌なヤツ」
 守護聖の中ではクラヴィスの被ダメージが大きいと判断したルヴァは、すぐに回復呪文ベホマラーを唱えた。
「柳絮(りゅうじょ)よ、広く降り注げ────」
 杖から溢れた青い光は柳の綿毛のようにふわふわと舞い落ちて、傷口を優しく覆っていく────瞬く間に傷が塞がり、乾いて糊のように貼り付いていた血液がぱりぱりとひび割れる。
 比較的軽傷だったオリヴィエがニッと口角を持ち上げ、ルヴァへ向けグータッチを示して労う。
「サンキュ、ルヴァ! さっすが頼りになるね」
「いえいえそんな。クラヴィス、お加減はいかがですか」
 ゆるゆるとグータッチをして見せながら、ルヴァはそれよりもクラヴィスの容体が気になり、視線はそちらへ向いた。
 黒衣の上からも明らかに分かるほどの出血量────無事に傷が塞がったのか、傍目には分かりにくい。ルヴァの声にはそんな心配が含まれていて、クラヴィスの紫水晶の瞳はそこで険を解く。
「ああ……問題ない」
 本当のところを言えば、傷が完全に塞がっていたわけではない。ベホマラーは全員を等しく回復させる高度呪文だが、効果としての回復量はそれほど高くもないのだ。
 誘惑の剣を片手に、オリヴィエがクラヴィスの前に立つ。視線は敵へと縫い止めたままで口を開いた。
「クラヴィス、立てる?」
 呼びかけられたクラヴィスはちらとオリヴィエの端正な横顔を見上げ、それからゆっくりと立ち上がった。
「心配無用だ。だが……」
 袂から取り出した銀のタロットが、ほんのりとクラヴィスのサクリアの色に染まる。
「このお返しは丁重にせねばなるまい」
 この闇の守護聖は一見大人しそうに見えて、実は割と直情型な一面があると知る仲間たちは、彼が内々に怒りを溜めていることに気づく。
 指先から飛び立つように投げられたカードはイゴーの頬を掠めて、ひらりと進路を変えクラヴィスの手に戻ってくる。
 受けた傷の大きさとは比較にならない程度の反撃ではあったが、狙い通りイゴーの体は守護聖たちへと向き直る。