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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 そして三人はルヴァの執務室の扉をそうっと開け、奥から小さく聞こえてきた男の声に凍り付いた。
「あっ、あぁっ、気持ちいい……もっと触ってくれ、もっとっ……」
 オリヴィエが更に覗き込んでみると、執務机近くの大机の上(だけではなく足元も)にはいつもの通り本が山積みになっていて、その本の向こう側にちらちらと見慣れたターバンが見えた。机の足元には服のようなものが無造作に落ちていたが、相手の姿は全く見えない。耳をそばだててしっかり確認したが聞き慣れない声だ。その声の後にルヴァの声が聞こえてくる。
「いい加減煩いですよ。静かにできないのなら、口に養生テープ貼っちゃいますからね……ええと、これはもう少し手前でしたっけ」
「ああっ……! ち、違う……それは後ろにっ……あ、んんっ」
「ちょっと、変な声出さないでください。気が散ります」
「あ、あんたがそんなふうに触るから、あ、ぅああっ!」
「そんなふうってどんなふうですか。あー、これはどこに挟みますかー?」
 ルヴァの声はいつも通りだ。だが相手の様子からして明らかに真っ最中のようで、オリヴィエとしては事実かどうかの問題より、これを未成年に聞かせていていいものだろうかと悩んだ。
「………………………………」
 横に視線を流せば、二人とも押し黙ったまま困ったように俯いている。
 オリヴィエはとりあえず開けっ放しはまずいと判断し、中に入って扉を閉めようと振り返った瞬間、ひくりと頬が引き攣った。
「へい、か……?」
 いかがわしい声がちょうど途切れたタイミングでにこにこと現れたのは、我らが金の髪の女王陛下────瞬く間にこの後の修羅場を予想して、三人は今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られていた。
「皆さん何してるんですか? 入らないの?」
 冷や汗をたらしながらぎくぎくと強張る三人を不思議そうに眺め、きょとんとしている翠の瞳。せわしなく動き回る眼球をどうにかそちらへ向けて、マルセルが決死のフォローに打って出た。
「あ、あの、ぼくたちルヴァ様にご相談があったんですけど、い、いま来客中みたい、です……」
 なんとか静かな時間がもう少し続いてくれることを願ったマルセルだったが、そこでルヴァの声がしてしまった。
「さて、これで準備はいいですねー」
 恋人の声にすぐさま明るい表情を見せたアンジェリークが声のほうへ足を向けたのを今度はランディが慌てて引き留めたため、結局三人は女王陛下と共にそのまま執務室へと足を踏み入れる羽目になってしまった。
 が、せめて悲惨な場面だけは見せたくない、なんとかこのまま穏便にお帰り頂こう────と思った矢先、とうとう相手が叫んでしまった。
「ひぎぃいっ……! ぅあっ、あ、ほんとに裂けちまうよ……」
 ぴたりとアンジェリークの足が止まり、たちまち怪訝な表情へと変わる。
「もう裂けてますよ、こことかね。うーん……よく見たらこっちも千切れそうですねえ……これは切っちゃいましょう」
 はさみで何かを切ったような音とほぼ同時に、男の絶叫が続いた。聞こえてきた内容がアレな割にルヴァの声はどことなく楽し気で、そのギャップにオリヴィエですら寒気を感じていた。
「すみません、見落としがあったようなので一旦拘束を解きます。ちょっと指を入れますから、我慢しててくださいね」
 拘束という一言がとても生々しい。こんなところで穏やかな地の守護聖の性癖を知ってしまうとは、とランディは目を伏せる。
 ある程度成熟していれば来客と何をしているのかが想像できてしまうやりとりがしっかりと部屋に響き渡り、ルヴァと相手以外は誰一人として、声はおろか物音を出すことはなかった。
「んっ、な、中を触るな! ……あぁぁあ痛いぃぃ!」
「うーん、何か奥のほうに塊がありますねえ……もう少しで取れそう、なんですけどっ……私の指では届かないようですね、ちょっと待っててください。ええとー確かここにあったはず」
 ルヴァは引き出しを物色しているらしく、がちゃがちゃと金属音がする。
「ありましたよー、これなら長さもありますから掻き出せると思いますが」
「いっ……嫌だ嫌だ、やめてくれえっ……! そ、そんなの無理……!」
 怯え切った男の声が物語る、これから行われるであろう恐ろしい行為に、オリヴィエもランディももはやすっかり足がすくんで逃げられそうもなかった。マルセルに至っては失神寸前で座り込んでしまっている。アンジェリークは顔面蒼白のまま、気丈にも唇を噛み締めて耐えていた。
 それから間もなくして聞こえた悲鳴に、マルセルがとうとう耐え切れずに気を失った。
「これでよし……と。さあ、続きをしましょうね」
「ひっ、ひいぃっ……! ふ、太すぎるだろそれ……もうちょっとなんとかなんないのかよ」
 これがもう少しお気楽な空気だったなら、誰かが恋人であるアンジェリークをからかえたかも知れない。しかし奥からはっきりと聞こえてくる会話からは、どうにもサディスティックな雰囲気ばかりが伝わってきてどうしようもなかった。
 結局そのまま倒れ込んでいるマルセルをオリヴィエが抱きかかえ、ランディはアンジェリークを慰めるように支えていた。
「すみませんねえ、生憎これしか持ち合わせがなくて。大丈夫ですよー、痛いのは多分最初だけですから……暴れないでくださいね」
「あああっ! やめ、裂けるっ、抜いてくれ、頼むから! いいい痛い痛い!」
「そんなに泣かないでください、すぐに済ませますんで……ああもう、じっとして!」
 痛いと泣き喚く男の声と珍しく声を荒げたルヴァの声、そしてガタガタと響く物音が導き出す想像を、それからすぐ近くに感じる物凄く恐ろしい気配について、オリヴィエとランディはできるだけ考えないようにしていた。

 男の微かな息遣いとともに、時折ガタッ、ガタリと木材がぶつかり合うような音が暫く続き、やがてルヴァがいつも通りの穏やかな調子で話し出した。
「どうしても怖いんでしたら、天井の飾りでも数えてみてはどうですか?」
「それを言うなら、天井の染みなんじゃないのか……いっ、いたた、頼むよ、優しくやってくれ」
「あはは、よくご存じですねえ……そうそう、あんまりこちらは意識しないようにね……どうです、ちょっとは良くなってきたでしょう」
「ん……楽になってきた」
「あー……この辺りは柔らかくなっているんで、抜きさしがしやすくていい具合ですよー……もう少しの辛抱ですからね、頑張って」
「……………………っ」
 真横で徐々に膨れ上がる怒りの気配に、ランディの額から汗が噴き出している。だが彼にはもうそちらへ視線を向ける勇気はなかった。当然ながらオリヴィエも同様である。
「う、んん……、どうしようオレ、こんな凄いの覚えちゃったら、もうよそに行けなくなっちまう……ああ……」
「はい、ひとまず終わりましたよー。良く頑張りましたね。こんなことしたのはあなたが初めてですけど、私の腕もなかなかじゃないかなーなんて思うんです。ね、そう思いませんか」
 上機嫌な調子の声がオリヴィエの耳に届き、苛つきを更に増やしてくれる。
(あんたのテクニックなんかどーだっていいんだよ! 早く終われっての!)