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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 艶やかな微笑みでもってロザリアが告げると、ルヴァは堪えようにも堪え切れない笑みがゆるゆると浮かんだ。
 その笑顔は瞬く間に顔中に広がり、何を言わずとも彼の心の中の有様を伝えている。
 そんな分かりやすい変化を目の当たりにして、ビアンカがくつくつと笑う。
「あーらら、嬉しそうな顔しちゃって。かぁわいい」
 ビアンカの声に、両手で頬杖をついていたポピーが不思議そうな顔で口を開く。
「ね、お母さん。ルヴァ様ってあんな感じだった? なんかもうちょっと、大人だった気がするんだけど」
 隣で机に直接顎を載せていたティミーもポピーの言葉に頷く。
「だよね、もっと淡々としてなかった?」
 ビアンカからすれば、ルヴァはいつだって少年のような純粋さでアンジェリークを想っているように見えていたため、特に変わった印象などない。
 この五年で子供たちの精神面が成長したのだと分かり、彼らと同じ淡い青の瞳をにっこりと細めた。
「……あなたたちが大人になってきただけよ。ルヴァさん、前からあんな感じだったもの」
 母の言葉にまだどこか腑に落ちない様子で顔を見合わせている双子をよそに、ビアンカはサンチョへと視線を飛ばす。
「サンチョさん、どうしたの」
 何かを言いたげな様子でビアンカを見ていたサンチョが頭を垂れた。
「ビアンカ様、別件で少々ご相談が……」
「ここで聞いてもいいかしら?」
「はい……ポピー様が聖地へ旅立たれる前に、ラインハットへ援軍を頼んでおりましたが」
 ラインハットと聞こえてルヴァの視線がサンチョ達へと注がれた。
「ええ、そうするように決めたわね。そういえば」
 バタバタしていてすっかり忘れていた────とビアンカは思い返し、何か言いにくそうに口ごもっているサンチョを視線で促した。
「……今もまだ、何の返答もなく」
「おかしいわね。ヘンリーさんやデール王がそんなことするはずないし……」
 ふむと考え込んだ母へ向け、ティミーが問い掛ける。
「落ち着いたし、ルーラで訪ねてみる?」
 リュカがいない今、顔見知りとは言え少々の行き辛さを感じ、ビアンカは言葉を濁す。
「……向こうからの知らせが届いてないのかも知れないわ。こっちはあれだけ騒ぎになっていたんだから」
 そう自分に言い聞かせるような調子で一気に喋ると、一人で大きく頷いている。
「あっちは大きな国だし、ヘンリーさんもいるんだから心配しなくてもいいでしょ。それよりリュカを探さないと」
 そこでルヴァがゆったりと、不安を払拭するような声音で話し出す。
「……あちらのほうが国としては軍事力も高いようですしねえ。今は何が起きるか予測ができませんから、我々はあまり別行動を取らないほうが安全ですが」
 ルヴァはそこで一旦言葉を区切り、王妃へと視線を投げかけて言葉を続けた。
「もし行くのであれば、砂絵のあるお城に行く前に、全員で立ち寄ってみるというのは如何ですか?」
 柔らかく口角を上げて告げられた言葉に、ティミーがぱちりと指を鳴らす。
「そっか、ルヴァ様とアンジェ様もヘンリーおじさんと会ってるもんね」
「ええそうです。ご挨拶がてら、顔を出してくるのも悪い話ではありませんからね。私たちには次の目的がありますし、そう長居もできません。私と陛下以外は城下町で待機していてもいいでしょう」
 なるほどと一同が納得する中で、ポピーだけがむっすりと黙りこくっている。
「…………」
 への字口で嫌そうな顔をしているポピーへ、ティミーが問う。
「ポピー、どうした?」
「……わたし、お留守番してもいいかな」
 苦々しい口ぶりに、ティミーが何かに気づいた様子で眉を上げる。
「あー……あれか。あんなの気にしないで無視しとけばいいじゃん」
 さっぱり話の筋が見えず、ルヴァは説明を求めティミーに問いかける。
「ティミー、あんなの……とは?」
「こいつコリンズ王子にめっちゃ好かれてて、顔合わせると口説かれるから嫌がってるんですよ」
 更にむすぅっと顔をしかめたポピーを見て、苦笑いを浮かべたビアンカが補足する。
「お嫁に欲しいんですって。わたしにも直談判してくるくらいなの」
 半笑いの母と兄をよそに、ポピーはどんより沈んだ心の内を顔に表しながら言葉を紡ぐ。
「彼氏は欲しいけど、あんなヒョロくて我儘俺様なの、絶対嫌だ。せめてお兄ちゃんやお父さんより強くて優しい人がいい!」
 その言葉に、とうとうアンジェリークが吹き出して呟いた。
「早々いないんじゃ……」
 ティミーの戦いぶりを目にしていたランディとゼフェルも続く。
「ポピー、かなり条件厳しいよそれ」
「一気に選択の幅がなくなったな」
 ビアンカが額を押さえて盛大にため息をつき、何やら複雑そうな顔をして口を開いた。
「まーたそういうこと言って。まだ若いからどうとでも言えるけど、そのうちほんとに嫁ぎ先なくなるわよ。こんなムキムキの王子が世の中にゴロゴロいるわけじゃないんですからね!」
 母からそう言われてもなお、唇を突き出して不貞腐れているポピー。
「じゃあいいよー、別にお嫁に行かなくても。お兄ちゃんと一緒にいるからいいもん」
 また始まった、という呟きが王妃の口から漏れ聞こえ、年少守護聖たちが一斉に笑いを堪えている。
 ムキムキ呼ばわりされたことは意に介さず、ティミーが満更でもなさそうな顔で口の端を上げた。
「……ま、無理して相手探すこともないんじゃないの。な?」
 そう言って笑ったティミーの手が、いまだ膨れっ面の妹の頭をぽんぽんと叩いた。

 それからマーリンのしゃがれた声が室内に響く。
「……では、わしはそろそろお暇しますぞ。念のため過去の文献に見落としがないか調べなくては」
 マーリンの言葉についと顔を上げたルヴァも立ち上がる。
「あー、マーリン殿。それなら私もご一緒しますよー。もう少し情報が欲しいと思ってましたのでね」
「それは心強い。是非ともお助け願いたい!」
 目尻の皺を深くさせたマーリンが嬉しそうな声音で答えた。そこでルヴァの視線がちらとアンジェリークに注がれ、視線をかち合わせた彼女が小さく頷く。
「わたしは中庭へ行ってくるわね。サクリアの調整をしないと」
 ルヴァとアンジェリークが別件で離れると分かり、ロザリアがすいと隣へ歩み出た。
「では陛下、わたくしが付き添います。誰を連れていかれますの?」
「そうね……ジュリアス、リュミエール……あとは、ランディとマルセル、オリヴィエも一緒に来てください」
 呼ばれた五人がアンジェリークのほうへ顔を向け、その中でジュリアスが真一文字に閉じていた口を開く。
「御意。陛下、他の者についてはどうなさいますか」
「散策してもいいし、自由にして貰って構わないわ」
 そこで双子が顔を見合わせて、それからティミーが話を切り出した。
「ねえ、アンジェ様。ぼくたちも見てていいかな。邪魔しないから」
 何だかわくわくしているそぶりの双子を前に、アンジェリークが機嫌よく返事をする。
「ふふっ、いいわよ。守護聖がサクリアを使うところはかっこいいんだから〜」
 衣擦れの音があちこちから聞こえる中、闇の守護聖だけが座ったままアンジェリークへ声をかける。
「……お待ちください、女王陛下」