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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 ティミーの肩がずしりと重くなり、華やかな香りが鼻先を掠めた。何事かと目を向ければ、オリヴィエが片腕を乗せてきていた。
「そうそう。まずは早いとこアンタたちの父親を迎えに行かないと、ね」
 そう話すとオリヴィエはティミーの張りのある金髪をくしゃくしゃに撫でて、ニッと口角を上げている。
「そうですね。でもその前に……そろそろ夕餉の時間かな」
 ティミーの言葉に、ランディとマルセルが同時に相好を崩す。
「待ってましたー!」
 傍で静かに控えていたロザリアが、手にしたストールをアンジェリークの肩に掛けながら話し出す。
「寒くなってきましたわね、戻りましょう」
 ロザリアの言葉を切っ掛けに、一同がぞろぞろと歩き出す。
 視線の先ではクックルが出入り口からトコトコと歩いてきて、向かって右側の道を行くのが見え、ロザリアはふと足を止めた。
「……あら?」
 急に立ち止まった補佐官へ、アンジェリークが不思議そうに首を傾げて尋ねる。
「どうしたの、ロザリア」
「大きな鳥が……」
 麗しき女王補佐官は迷いなく歩き去っていくクックルの姿に視線を縫い止めたまま、少し上の空で言葉を返した。
 ポピーが彼女の視線を辿り、すぐに説明をし始める。
「あっ、あれはクックルーっていう鳥の魔物さんです。たぶん巣に戻るところですね」
 鳥と聞いて先を歩いていたマルセルがすぐに引き返してきて、目を輝かせている。
「鳥の巣があるの? 近い? わー、可愛い鳥さんだねえ! ねえランディ、見てみようよ!」
 すっかり観察モードのスイッチが入ってしまったらしい緑の守護聖に、幾人かはくすくすと笑う。
「分かったよマルセル、引っ張るなって。ほんと動物好きだなあ」
 マルセルに腕を引かれ苦笑いを浮かべたランディが少々呆れた調子でそう言うと、マルセルの頬がぷっと膨れた。
「ランディだって動物好きでしょー!」
「マルセルほどじゃないよ、俺は……それにしても、どこに巣があるんだろ」
 早速興味を引かれた彼らの様子に、アンジェリークの目がにっこりと笑っている。
「気になるわね、ちょっと見学しましょうよ。あ、他の皆さんは戻ってていいからね」
 気を回したアンジェリークが扉の前で立ち竦むジュリアスたちへ言葉をかけると、それぞれが頷き、一言を残し去っていく。
「では失礼します」
「また後程。お風邪を召されませんよう」
「私も戻ってるよ。じゃーね」
 ティミーも見慣れた光景とばかりに肩をすくめ、ジュリアスたちの後ろについていく。
「ぼくも戻ります。ポピー、案内頼んだよ」
「はーい、任せてー」
 そして好奇心旺盛な居残り組がクックルの歩いていく先を追う。
 クックルは城壁の上に飛び乗り、じっと下を覗き込んでいる。それを見ながら、ポピーの説明は続いた。
「サンチョの家の真裏に木があって、そこの洞に────」
「ピキャアアアアアアアアアアアアア!!!!」
 話の途中で突如聞こえた悲鳴のような鳴き声に、ランディの顔が険しくなる。
「なんだ!?」
「あ、この声は……」
 ポピーの説明を待たずランディがすぐに身を乗り出して、小さな家の裏にある木を探す。
「あれかな、鳥の巣って」
 マルセルも慌てて下を覗き込む。
「そこしかないね。……待って、木の下に何かいるよ。黄色い……」
 木の洞からは、額板が盛り上がった青い鳥が顔をのぞかせている。クックルとは違う種類のようだ。
「ピキャアアアアアアアアアアアアア!!!!」
 木の下でうずくまっていた黄色い生き物が、先ほど聞こえた鳴き声の持ち主だった。
 ポピーがすぐに状況を理解し、思わず声を上げた。
「コドラン! また追い出されちゃったんだ!」
 コドランを見つめていたマルセルが、隣のポピーに問いかける。
「あの黄色い子、コドランっていうの?」
「はい、ドラゴンの子供なんです。子供時代がとても長くてまだ幼年なので、クックルがお母さん代わりに面倒を見てて……」
 クックルは城壁の上で緑色の冠羽を逆立てながら羽を大きく持ち上げ、前傾してくちばしを小刻みにカチカチ鳴らしている。威嚇の姿勢だ。
 そんなクックルの姿を目に留めて、洞の中から顔を出していた青い鳥、ホークブリザードのブリードが話し出す。
「お帰りダーリン! 早く戻っておいでよー!」
 ブリードが軽い調子で声をかけた途端、クックルの冠羽がMAXまで逆立った。
「ブリード…………あんた、またアタシのおちびちゃんを突き落としたわね? 早く出て行きなさいよ」
「だってアイツ、ボクらの愛の巣には要らないだろ? ドラゴンキッズなんか邪魔だろ、君の子じゃあるまいし」
「……………………おい、今なんつった」
 アンジェリークの調和のサクリアの影響で、固唾を飲んで見守っていたマルセルたちにもしっかりと事の経緯が明らかになっていた。
 底冷えのする声音で口調が変わってきたクックルを見たマルセルが、不安げにポピーへと顔を寄せ声を潜める。
「……ねえポピー。あの子すっごい怒ってるけど……」
「あー……いつものこと、なんですけど。もうちょっと様子見ましょう」
 ブリードは酷く苛立っている様子のクックルに気づいているそぶりもなく、陽気に話し続ける。
「だからー、君の卵ならボクがあっためてあげるって言ってるんだよ。リュカに子守を頼まれただけだろ、ほら、コイツだってさ」
 そう言ってブリードが巣の奥から白い塊を銜えてぶら下げた。
 ミュウーと子猫の鳴き声が響き渡り、くちばしの先でもぞもぞと動く白い塊にアンジェリークは釘付けになる。
 頭の割には大きな口と、長い舌が特徴的な猫だった。
「あの子……前にもうちょっと大きくて舌の長いシマシマの猫ちゃんがいたけど、同じ種族かしら」
 以前ルヴァの髪と顔を舐め倒していた猫と、柄と大きさこそ違うが似ている────そう思ったアンジェリークの言葉に、ポピーが反応を示した。
「あっ、その子は多分、プリズニャンのプリズンです。あっちの子は二匹目のプリズニャンで、ミヤーケ。通称ミケです」
 ミュウー、と助けを呼ぶ子猫の甲高い声が響き、クックルが首を伸ばして叫ぶ。
「ミケちゃん!」
 子猫は逃れようともがくが、ブリードのくちばしは先が少し曲がっていて、滑りやすい魚や小動物を捕食するのに長けた形状をしているために逃げられない。
「コイツも要らないよ。アルビノのプリズニャンなんか、どうせまともに育つわけないし」
 そして、プリズニャンの子猫ミヤーケが巣から放り出された。
 アンジェリークとロザリアが小さく悲鳴を上げたのとほぼ同じタイミングで、すかさずランディが俊敏な動きで城壁から飛び降りる。
 一切の躊躇いなき行動に誰かが止める暇もなく、マルセルがすぐに下を覗き込む。
「ランディーッ!!」
「ラ、ランディさま!?」
 驚いて叫んだマルセルとポピーをよそに、ランディは華麗に宙返りを決めて着地した。
 ランディの着地より早く落下したミケが、ばいんとワンバウンドして芝生に転がる。近くにいたコドランが覚束ない足取りで近づき、ぴゅうぴゅうと甘えた声音で鳴いていた。
 すぐに駆け寄ったランディがミケを両手に抱きかかえ、怪我はないかとあちこち見まわしている。
「……ランディ、どう!?」