二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

冒険の書をあなたに2

INDEX|68ページ/213ページ|

次のページ前のページ
 

 根負けしたアンジェリークが長椅子の上に中身を広げ始める。
 それを眺めているうち、ルヴァはひらりと床に落ちた紙切れを拾い上げた。
「何でしょう、メモのようですが……ええと、私が読ませてもらってもいいですかねー」
 アンジェリークにはこちらの文字が読めないため、アンジェリークの了承を得たルヴァが代読し始める。
「アンジェさんへ、良かったら着てみてね。シルクのビスチェと天使のレオタード、踊り子の服、エッ……」
 袋の中から出てきたのは、女性物と思われる衣類────それも、結構な露出度のものばかりが続々と。
 言葉を途中で途切れさせたルヴァを訝しみ、アンジェリークがちらと彼のほうを見ると、耳まで真っ赤になっていた。
「……ルヴァ?」
 じっと見つめられたルヴァは、こほんと咳払いをしてから続きを読み上げた。
「…………ッチな下着と水の羽衣を入れておきます、とのことです」
 言いながら、広げられた衣類へと視線が留まる。
 アンジェリークが純白でしなやかな手触りの下着を手にして眺め入る。
「シルクのビスチェはこれでしょ、レオタードってことは、こっちよね……ねえ、これどういう場面で着るのかしら。ダンスサークル的なのがこっちにもあるの?」
「まさかこれを着て出歩く、なんてことはないでしょうしねえ。こんな破廉恥な恰好……」
 だがしかし、実際そのまさかである。
 視界の隅に黒の下着が見えていたが、ルヴァはできる限りそちらを見ないようにして別の衣服へと視線を縫い止める。
「レオタードの背面に飾り羽根がついていますが、あなたには必要ありませんねー、天使様?」
 かつて女王候補だった頃には育成した大陸の民からそう呼ばれていたために、仲の良かった守護聖たちからも時折そう言われることがあった。
 そして宇宙の導き手となった現在、女王のサクリアの具現として翼が現れる。
 懐かしさが滲む彼の声音に表情を緩めたアンジェリークが恥ずかし気に「もう」と呟き、誤魔化すように水色の衣装を目の前へと掲げて見せる。
「出歩けそうなのって水の羽衣だけじゃない? これ綺麗よね〜」
 水の羽衣を自分の体にあてがい、透けそうで透けない不思議な質感の生地をまじまじと眺めている。
「涼し気ですねえ。この季節には少々時季外れのようにも思いますが、部屋着なら問題ないでしょう」
 どういう仕組みかは知らないが、部屋に通されたパイプから温風が入ってきて、戻ってきたときには部屋中がとても暖かくなっていた。
「そうね、ちょっと暑いくらいだし」
 そこでじいっとルヴァの視線が突き刺さる。
「……着てみられては?」
「えっ?」
「えっ?」
 ルヴァの提案に驚いたら驚かれ、アンジェリークがぽかんと口を開けて彼を見た。
「……………………み、見たいの?」
「はい」
 笑顔で即答されてしまったアンジェリークが、渋々と水の羽衣を片手に脱衣所に向かう。
 裾が水飛沫を模したような独特の美しいデザインの羽衣に目を落とし、それからちらとルヴァの様子を覗き見ると、長椅子に腰掛けて本を開いている。
 まずは下着を身に着けた状態で袖を通してみる。薄いが肌が透けることもなく、意外と暖かい。腰帯を結んだところでアンジェリークの動きがはたと止まった。
(……見えちゃう)
 襟の合わせ目は胸のかなり下側で重なるため、谷間部分が露わになり下着が丸見えになっている。
 やむなく下着を脱ぎ、素肌に直接羽織った。さらりとした生地の着心地はいいものの、やはり少々心許ない気もしてアンジェリークは困り顔で立ち竦んだが、意を決して扉を開けた。
「き、着てみた、けど……」
 アンジェリークの声にすぐさま反応を示したルヴァが、読み耽っていた本から視線を外す。
 そして無言のまま美しい衣装に身を包んだ恋人を見尽してから、ようやく頬を上げていく。
 沈黙の中見つめられる気恥ずかしさに耐え兼ねたアンジェリークが、おずおずと切り出した。
「……どう、ですか」
 照れ臭くて熱が集まり始めた頬を両手で隠していると、座って目の前の彼女を眺めていたルヴァが静かに立ち上がった。
「良く似合っていますよ。とても美しいです」
 青灰色の瞳の奥に情火を宿し、彼の右手が頬に添えられたアンジェリークの手に重なる。
 林檎色に染まる頬は既に熱いのに、それ以上に熱を帯びた彼の手がアンジェリークの手をそっと退かし、頬から下唇をなぞって首筋をゆっくりと下降していく。
 人差し指の先をくっと曲げて襟を挟み込んだところで、アンジェリークはこれから何が起きるのかを把握した。
「あ……の、ルヴァ」
「どうしました?」
 平然を装う声音────それでもほんの少しの焦燥を隠し切れない。
 言葉の続きを待つ様子もなく、ルヴァの手が合わせ目をくぐり無防備な胸を包む。
「待っ……、て」
「嫌ですか」
 淡々とした言い方とは裏腹に、ルヴァの手は強引に手の甲で羽衣を押し退けて白い肩と胸が露わになる。
「や、じゃ、ないけど……っ。明日早いんでしょ……」
 剥き出しにされた肌を隠そうと身を竦めたものの、その動きも途中で阻まれた。
「アンジェはもう休みたいんですか?」
 ぐいと腰を引き寄せられ、熱い手が物欲し気に背を這い回る。
「そ、じゃなくて……っ」
 容赦なく続く愛撫に耐え切れず、吐息が漏れた。その微かに漏れた声を聞き付けて、陥落間近を確信したルヴァがふっと笑みを浮かべた。
「……今日はもう、諦めてください」
 そう言ってルヴァは長椅子へとアンジェリークを押し倒し、白い肌に点々と刻印を残していった。

 散々愛された後でアンジェリークはヨロヨロと寝台へ上がり、シーツの中に潜り込んで不貞腐れていた。
 こんもりと丸まった塊の前で、正座したルヴァが眉尻を下げ弱り切った様子で話しかける。
「……アンジェ。何を怒ってるんですかー」
 どうにか恋人の顔を拝もうとシーツを引き剥がそうにも、かなり強く掴んでいるらしい。
「のどいたい」
 もそりと塊が動き、中から顔を半分だけ出したアンジェリークが、ガラガラに干からびた声でぽつりと告げた。
 考えてみれば本日二度目である。最後はいつも疑似的とはいえ、そこに至るまでのプロセスは通常の営みそのものだ。喉は勿論、体への負担も大きいに違いない────そう考えたルヴァだったが、久し振りに長い時間を共に過ごせる喜びが上回り、少々の無体を強いてしまったことについて謝る気は更々なかった。
「あー、それなら何か飲み物を取ってきますね。のど飴もありますよ」
「……今日のルヴァはすごーく意地悪です」
 拗ねた恋人の随分子供じみた言い草に、ぷっと吹き出してしまった。
「あー、あなたがあんまりにもそのー、可愛かったので。我慢できなくて……すみませんでした」
「ほんとは悪いと思ってないんでしょう?」
 両想いになったばかりの頃のように、シーツをそっとずらして額にくちづける。
「そうですね。どれだけ愛しても、足りることはないんでしょうねえ……これからも」
 他の守護聖たちの手前もあり、二人きりになったときにどうもタガが外れ気味だ、とルヴァは内省する。