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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 口を尖らせつつも子供たちの意見を優先させる母の姿に、守護聖たちは微笑ましく目を細めた。
 ビアンカが片手をかざし、すかさずティミーがぱちんと手のひらを合わせた。
「任せて。首根っこ捕まえてでも連れて帰るから!」
 そう言ってにやりと不敵な笑みを浮かべるティミーに続き、ポピーも手のひらを打ち合わせ、笑みを浮かべる。
「さすがお母さん、理解あるー!」
 現金な子供たちの様子に、ビアンカは呆れた口調で言い返した。
「もー、調子いいんだからー!」
 わいわいと騒がしく言い合いをしている母子を横目に、リュミエールが小声でルヴァを呼ぶ。
「ルヴァ様は、行かれるのですか」
 不安に打たれた顔で発された言葉に、ルヴァはリュミエールと視線を重ねてから、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ええ……私もリュカの顔を知っている人間ですしね。この一連の問題については、まだ謎も多いです。何か手掛かりがないか、この目でじっくり見てきますよー」
「……そう、ですか」
 最愛の人を置いてでも行くのか────彼の声音にはそんな感情が滲んでいた。
 そのやりとりを聞き、ふうんと声を出したのはオリヴィエだ。
「あーらら、ルヴァも本気出しちゃう〜? そんじゃ私も本気出しちゃおっかな」
 長い前髪をゆっくりとかき上げて、挑むような目つきで艶然と笑う。
「……悪夢なんか見てたって何の足しにもならないじゃない。楽しい夢に変えてあげたいよね、どうせならさ」
 ほんの少しでも明日に希望を持てるようになってくれたらいい、と口にこそ出さないがオリヴィエは願っている。過去の出来事が現在の異変へどう繋がっているかはよく分からなかったが、彼なりに手を尽くそうとしているのが周囲にも伝わっていた。
 それまで戸惑っていた様子のランディが、ようやく自らの希望を口にする。
「俺は……こっちに残ります。オスカー様やティミーが向こうに行くなら、俺は残ったほうがいいですよね。俺の剣の腕で戦力になれるかは、分からないけど」
 ランディの言葉にティミーが安堵の表情を見せる。口角を上げてランディに握手を求めた。
「そうしていただけたら助かります。ピピンとサンチョも十分鍛えてるけど、あんまり動きは素早くないんで……よろしくお願いします」
 二人ががっしりと握手を交わし爽やかに会心の笑みを見せ合うその横で、ゼフェルが彼らを気にする様子もなく話し出す。
「オレは行くぜ。どんな文明のトコか興味あるかんな。マルセルはどーするよ」
 行けと言われたら行こうかな程度に考えていたマルセルが、ゼフェルの質問を受けて戸惑いの表情になる。
「ぼく? うーん……ねえ何だっけ、薬草の……パデキア? 王様だけでどうやって持って帰るのかな。買えるだけ買っても限界はあるし、もしこっちで育てるなら土の様子とか見たほうがいいよね、きっと」
 マルセルは大農園の出身らしい切り口でそう話すと、どうしたものかと小首を傾げて考え込んだ。
「まあ、そうだな。ルヴァもすぐ調べるだろーけど、植物相手だったらおまえやリュミエールのほうが詳しいだろ。なぁオッサン?」
 誰がおじさんですかとぼやきつつ、ルヴァはゼフェルの声に答える。
「あー、そうですねえ。調査に加わって貰えたら私としては大助かりですが、どうですか?」
 ルヴァの言葉にマルセルとリュミエールが顔を見合わせ、真剣な顔でこくりと頷き合った。
「分かりました。ぼくも行きます」
「わたくしも、微力ながらお手伝いいたします」
 それぞれの処遇が決まっていく中、水晶球に目を落としたきり黙っている闇の守護聖へ、ジュリアスが問う。
「そなたはどうするのだ」
 ゆるりと視線が動き、ジュリアスの深い青の瞳と視線が交錯する。
「私は……行かねばなるまい。水晶球がそのように指し示しているからな」
 僅かに動揺したジュリアスの頬がぴくりと動いたが、声音だけはいつも通りを装って言葉を発した。
「……そうか。ならば無事に戻ってこれるよう願っておく。くれぐれも無茶はするな」
「言われずともそうする……」
 クラヴィスは呆れたような声音で告げると、息だけで微かに笑った。

 残留する者、しない者と二手に分かれることになり、アンジェリークは託されたオーブに視線を縫い止めて、何かを考え込んでいた。
 最終決定を告げて次の行動に移るはずが、これでは女王陛下の言葉を待っている守護聖たちに示しがつかない────と思った補佐官ロザリアがゆっくりと音のない息を吐き、催促を始めた。
「陛下、どうなさいました?」
 ロザリアの声に促されたのか、伏し目がちにオーブを見ていたアンジェリークの長い睫毛が上がり、一同を見渡す。
「……少し、確認したいことがあるの。ちょっと待っててください」
 そう言って、アンジェリークは守護聖たちを残して静かに部屋を出て行った。

 オーブを胸に抱え妖精の女王の前へと引き返したアンジェリークは、女王の穏やかな視線に促されてゆっくりと話を切り出した。
「マスタードラゴン様のように、わたしたちのサクリア……魔力のようなものをオーブに閉じ込めることって、可能なんでしょうか」
 妖精の女王が薄い色素の睫毛を瞬かせ、少し考え込むような仕草を見せた。それからおもむろに当たりの柔らかな口調で言葉を紡ぎ出す。
「サクリアというものが入るかどうか、判断はできませんけれど……そのドラゴンオーブ程度のもので良いのでしたら、私が以前作った試作品が幾つか残っています。どのみち使う機会もないものですから、持って行ってください」
「ありがとうございます!」
 妖精の女王の指示で、宝箱に入れられた幾つもの水晶球が手渡された。
 アンジェリークはずっしりと重い箱を落とさぬよう細心の注意を払いながら、満面の笑みでもう一度お礼の言葉を告げた。

 守護聖たちの部屋へ戻ってきた頃には重さに耐え兼ねてヘロヘロになっていたが、肩で扉を押し開けたところで気付いたオスカーがすぐに駆け寄り、アンジェリークから宝箱を取り上げる。
「陛下、これは……?」
 そこそこ重さのある宝箱を床に置き、オスカーが不思議そうに尋ねた。アンジェリークは宝箱を開け、中から水晶球をひとつ取り出す。
「さっきのマスタードラゴン様の様子を見てね、わたしたちのサクリアも入れられないかなって思って……」
 ロザリアも水晶球を片手に取り、ひんやりと冷たい質感の水晶球をまじまじと眺める。
「ドラゴンオーブより少し小さめですわね。数こそ山のようにありますけれど、これを全部頂いてきたんですか?」
 にこにこと笑いながら水晶球を一人一人に渡していくアンジェリーク。
「ええ、使い道がないって仰ってたわ。ここで皆さんにサクリアを入れていって貰えば、こちらの調整に使えるかもって」
 最後に受け取ったルヴァが相好を崩して喋り出す。
「あーそうだったんですか。では早速試してみま……」
「あぁぁぁぁああああ!! ないっ!?」
 ルヴァの言葉を遮ったオリヴィエの頓狂な声に、全員が固まる。
 見ればぱたぱたと体をはたき、真顔で何かを探している。
「うっわー化粧ポーチ忘れてた! 一旦取りに戻ってもイイ……?」
 ええ〜っと年少組から嫌そうな声が出るも、オリヴィエは両手を合わせて拝み出す。