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intermezzo ~パッサウ再会篇8

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「耳に入って来たその恐ろしい噂に…僕は茫然自失となって…自分が立っている地面が突然消え失せたかのように…その場に崩れ落ちた。地面にへたり込んだ途端に…永遠に父と母と…家族を…僕の愛する家族を…居場所を喪ったかもしれないという認識が心の中を支配し、その恐ろしさに僕はガタガタと震え出した。地面にへたり込んで声もなく震えている僕に…僕の頰にパチンという小さな痛みが走り僕は我に返った。ガリーナが茫然自失の僕の頰を張り、そしてギュッと僕を抱きしめてくれた。「しっかりしなさい!男の子でしょう?」と。そして「あなたの気持ちは、今のあなたの気持ちが私にはよーく分かる。でもね、例え最悪な事態を迎えても、私は…私たちは、あなたを一人放り出すような事は絶対しないから…。安心しなさい。…さ、うちに帰りましょう」と言ってくれた。…ガリーナも、ガリーナだって先の大弾圧で生死のわからない夫の安否が、気が違いそうになるぐらい不安だったんだ。なのに…僕を一人にはしないと言ってくれて、自分こそが折れてしまいそうなのに、僕の事を親身になって励ましてくれて…その有難さに、絶対泣くまいと誓った筈なのに、涙が溢れて来た。僕とガリーナはお互い支えあうようにアパートへ帰ると、二人で抱き合いながら声が枯れるまで泣き続けた。不安を涙が流し去ってしまうまで、声を限りに泣き続けた。気がすむまで泣いた後、僕に覚悟が出来た。この現実を、これからどんな現実が僕に待っていようともそれをきちんと受け入れよう。受け入れて、未来を見ようと。そして、それはガリーナも又同じようだった。涙に濡れたガリーナの黒い瞳は、いつもの優しくて、そして強い光を放っていた。僕とガリーナは「頑張ろう」ともう一度強く抱き合って、それからいつも通りに、夕ご飯の支度を始めた」

「あの時のお前は…ちょうど兄の反逆罪で国を終われてドイツへ亡命した頃の俺と…同じぐらいの歳の頃だったんだよな。いや、俺よりももっと幼いか。俺もあの時は現実を受け止められずに茫然自失の状態でアルラウネに手を引かれるようにして…国境を超えたんだ」

アレクセイがそっくりな面立ちの息子の語るあの夏の出来事に、かつての心がひしゃげるような思いで国境を超えた少年時代の自分を重ねる。