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星の糸 もう一人のウルトラマンACE (1)

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「……」

一瞬の静寂が私たちを包み込んだ。

「夕子…頼むから真剣に聞いてくれ。俺昨日実は悪い夢を見たんだ。君が他の男と一緒に現われ、この人が本当の私の運命共同体だと告げてどうしても去らねばならないと言ってどこかへ行ってしまう夢…男の顔はよく見えなかったけど…夢の中で君は、遠い星から来たその男から自分の使命を知らされもうすぐその戦いが始まるのだけれど、そのことでずっと悩んでいたと言ってた。俺夢なんて信じる質じゃないけど妙にリアルな夢で…ただの夢であってほしいけど最近君が悩んでいたのは事実だし」

「えっ何それ私身に覚えはないよ。どうして私がそれも他の男の人と一緒に星司さんの前から消えなくちゃいけないの?…そんなの嫌っ」

私の言葉を聞いた星司さんはギューと私を抱き締めた。

「離さないよ…俺たちは運命共同体なんだから…離さない絶対」

私たちはそこが多くの人々が行き交う場所であることも忘れしばらく抱擁していた。私は初めて抱かれた星司さんの腕の中で目を閉じしばしの間現実を忘れた。この幸福を絶対に逃すまい、もう後ろを向いて歩くのはよそう。そう心に決めた。

「…ミチルの事件の時はごめんな。あの時は君の嫉妬めいたものに動揺してたんだ。俺、子供の頃から心のどこかで正義のヒーローに憧れてて実際になれたことに興奮していたんだと思う。俺ずっと思っていたんだ正義のヒーローが恋愛なんかしちゃいけないんだって。確かに初めて君と出逢った時運命みたいなものは感じたけど、恋なんてしたらウルトラマンエースが弱くなるんじゃないかって疑ってた。だから運命共同体ってしか言えなくてでも俺たちの関係は普通の恋愛でもない気がしてやっぱり運命共同体だなって思うんだ。訳分かんないよな…俺も訳分からないけど君は俺のかけがえのない唯一のものなんだ。あの事件でそれが分かった。運命に逆らうことはできないって。俺はあの時、ミチルがV9の破壊工作に失敗して君が彼女を追跡していると知って、慌てて後を追ったけど見つけられたのはミチルだけだった。俺はV9のことよりも夕子の行方を無意識に聞いてた。その時思ったんだああ俺も夕子のことが好きなんだなって。君に代わりうる存在なんてないんだって。ミチルは夕子のこともV9のことも知らないと突っぱねるから俺はついカッとして彼女を殴った。それから何があったか分からないが、俺に何度も助けられたのに嘘ばかりついていたことを許してくれと懇願してきたけど、俺は最後まで許すって言えなかった。それが愛ってやつなのかな…」

「星司さん…本当に…夢じゃないのね」

愛してる、大好きじゃなくて私はあなたを愛しているのよ、星司さん。これから何が起きようとそれだけは変わらないわ。そして運命共同体として生ある限りどんな時も運命を共にするわ。でもそれが今は言葉にならない…言葉にならないほど愛してるの…それはきっとあなたも同じだと信じたい、いいえ信じてるわ。

「復讐するは我にあり…か。まいったな…僕にできるだろうか」

夢うつつの中で愛に酔っていた私はそれが誰の声か確かめることができなかった。

4

「それじゃあね、星司さん。今日は一日付き合ってくれてありがとう!久しぶりに楽しかったわ」

「いや待てよ、俺車で来たから送ってくよ。ただ俺君の家行ったことないからナビしてくれ」

「え…いいの?ありがとう」

「女の一人夜道は危険だからな…時間が押しちゃったし」

こうして私は星司さんの車で送られ家路につくことになった。

「今日も空は晴れてるな…十五夜って明日だったけ?もう満月と見分けがつかないくらい膨らんでて俺には分かんねぇな」

「本当ね綺麗な月だわ今夜も…」

「…今日はザワザワしない?」

「…うん、今日は大丈夫。だって星司さん守ってくれるんでしょ?」

「そっか…そうだよな」

星司さんは安心したというように微笑むと何気なくカーラジオのスイッチを入れた。

《えー今夜も綺麗な月夜ですね。気象庁によりますと明日の十五夜も綺麗な満月が見られそうです。そんなわけで次のリクエストは小鳥遊涼平さん演奏のヴェートーヴェン『月光』です、この曲は何でもヴェートーヴェンが最初の恋人ジュリエッタに贈った曲と言われておりまして月夜の下の恋人たちに是非お送りしたい名曲ですねぇ》

「…今小鳥遊涼平って言ったか?」

「ええ、あの人だわ多分…」

私と星司さんは思わず顔を見合わせた。

カーラジオから流れてくる音楽は哀愁に包まれ聞く人を悲しみの底へ引きずり込むような狂気すら感じられた。これが彼の持ち味なんだろうか。そう言えばさっきもちょっとだけ寂しげに笑ってた。あんなに綺麗な顔立ちで才能があって人当たりも良さそうな人が何故そんなに寂しいのだろう…周りがほっとかないだろうにあまりにも恵まれ過ぎて理想が高いのだろうか。

「なんだか哀しくて淋しい弾き方だな…あいつも淋しいのかな…」

「あいつもって星司さんも淋しいの?」

「うーん、昔はな、色々あったな…母子家庭だったし何か満たされないやり切れなさみたいなものはあったよ。つい周りの同級生と比べちゃってさ。父親がいないことで随分からかわれたし。君の家は羨ましいよ誰一人欠けてないし家族仲が良さそうで。まるで正反対の人生を歩いてきたんだよなぁ俺たち」

正反対…そっかそうだよね、星司さんにとって私はまるで別世界を生きてきた人間に見えるのね…でもね、私には私なりの悲しみはあるの。人間なら誰しもが生きてる以上心の何処かに悲しみがあるのは当然じゃない。

「…そんなことないよ。私には私なりのやり切れなさが一杯あったよ。星司さんより分かりにくいかもしれないだけ…」

「え?何があった?そんなに説明しにくいもんなのか…」

「そうね告白するには勇気がいることだわ…私のような経験をした人にとってはね」

「夕子…俺たち恋人になったんだろ。俺、そう言えば君の上っ面しか知らない気がする。話してくれよ夕子…俺君のことなら何でも知りたいんだ」

普段の私ならこんなこと告白する勇気はなかったかもしれない。でも好きな人に愛されてるって不思議ね…今なら何でも話せる気がする。