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星の糸 もう一人のウルトラマンACE (1)

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「…なら言うわ。でも軽蔑したりしないでね。星司さん私ね、いじめられっ子だったの。子供の頃の私は、コミュニケーションが下手って言うか学校とか大勢の人がいる場所で話すことが苦手で、やっと友達ができても距離の取り方が分からなくていじめのターゲットにされてしまったの。私の家は転勤族であちこちに転校したりしたけど環境が変わっても結果は同じだった。何度も何度もいじめられたの私…だから私は自分の存在価値が分からなくなって何度も死にたいと思った。周りが恋愛にキャピキャピ言ってても私には遠い世界の出来事のように見えたの。私には人から愛される価値はないんだ、愛されちゃいけないんだってそう思ってた。だけどね…本当はこの絶望的な孤独から救ってくれる王子様じゃなくて救世主を待ち望んでいたの、そう、今日の映画のマグダラのマリアのように。真実の私は誰かに愛して欲しかったの、守って欲しかったの、心の何処かでずっとそう願ってたの、それが私の夢だったの。バカな夢だと思っていたけどいつかそんな人に会えるんじゃないかって思うことが私の儚い生きる支えだったの。ううん会える予感が私には不思議とあったの。バカにされたくないから誰にも家族にさえ言わなかったけど、その日のために自分を磨こうと心に決めたら少しだけ強くなれたわ…登校拒否にもなりかけたけど私自分の人生を台無しにはしたくなかったの。いつか私を愛してくれる人にどうしても逢いたかったの。それが私を名実共に死の淵から救ってくれたの」

「…それで?」

星司さんは穏やかな眼差しで聞いていた。

「逢えたよ星司さんに…。あなたに逢えた時この人が運命の人だって直感したの。でも星司さん、ベロクロンにタンクローリーごと突っ込んでちゃうんだもの…私理性も何もなくなって追いかけちゃったの。ウルトラマンエースやウルトラ兄弟が何故私まで救ってくれたのか分からないけど、星司さんと共に地球を守る使命を与えられて星司さんとは違う意味で嬉しかった。いじめられっ子だった私が社会を守る使命を与えられたのよ、おかしな言い方だけど子供の頃の借りを社会に返せたような気分で胸がスッとしたの。そしてあなたに『運命共同体だな』って言われて死ぬほど感動した。もう一人で誰かの顔色を伺いながらビクビクしなくていいんだ、私には友情も恋も超えた魂の絆があるって思ったんだよ。それはウルトラマンエースとして日々戦う度に強くなっていく絆だと思ってたんだけどね…」

「…ごめん、何も知らなくて。俺自分の事しか見えてなかったな。…でもさ、これからは心配すんなよ、俺はずっと君の味方だし、ずっと守ってみせるよ必ず…何があっても」

ああ運命の神様、私の人生最大の夢は叶ってしまったみたいです。こんなにも幸せで私はいいのでしょうか。どうかこの幸せを誰にも壊されませんようにお守りください。

長いような短いような夢の時間が過ぎ車は私のアパートの前で止まった。

「それじゃ…ありがとう星司さん。また明日ね」

「…ああお休み…でもちょっと待って夕子」

「え?何」

振り向いた私の唇に星司さんは自分の唇を重ねた。それが私のファーストキスだった。この夜も私が興奮のあまり眠れなかったのは言うまでもない。

5

翌日は十五夜だった。私と星司さんは三日前と同じように竜隊長に定期パトロールを命じられて出かけた。命じられた時、私たちはつい昨日のことを思い出して照れてしまったけど、周りの皆も何かを察したらしくニヤニヤしていた。

「みんな何か感づいてるな」

「知られたら困る?」

「困るってわけじゃないけどやりづらいよな…でも仕方がないかな、俺が選んだ道だからな」

「そうね…私もそう後悔はしてない」

「だな…後悔なんてできないよな…これが運命なんだから」

「……」

そっか、運命か、私は改めて星司さんの言葉を噛み締めた。

「あっ星司さん見て、綺麗な満月ね…雲一つないわ」

「…本当だ。まさに吸い込まれるような満月だな。夕子、気をおかしくすんなよ」

星司さんは冗談っぽく笑った。

「大丈夫よ!でももしおかしくなったら星司さん守ってくれるんでしょ?何があっても」

「まあな」

星司さんは昨夜と同じように微笑むと何気なくラジオをつけた。

《えー今夜は一際美しい十五夜ですねー。そんな今夜もリクエストが届いております。小鳥遊涼平さん演奏のドビュッシー、『月の光』。しかし小鳥遊涼平さんという方は本当に人気がありますねw。あれだけの美男子で才能があってジェントルマンですから世の女性たちがメロメロなのも無理はありませんが…ちょっと経歴が変わった方で三年前に突然彗星の如く現われたピアニスト界の寵児…その前の経歴が全く分からないんですね。そんなミステリアスなところも魅力なんでしょうかw》

「三年前?俺たちがTACに入隊した頃だよな。しかし世の中にはいるんだな突如現われるなんて化け物みたいな天才だろ」

「…化け物って。でもピアニストなんて誰に知られることなく一夜で大成とかするものかしら?私も習ったことあるけどあれにはものすごく努力が必要よ」

「へぇ…なんか匂うな。案外人間じゃなかったりして」

「ええ?まさか…」

私は昨日会った小鳥遊涼平を思い浮かべようとした。確かに何もかも浮世離れした人だったけど悪い人には見えなかった。どこか寂しげな影はあったけれど。一体彼はどんな過去を背負ってきたんだろう?そんなこと聞いてくれる人もいないのかな…だとしたらすごく淋しいよね。

ラジオから流れる音楽は今日も哀愁が深い。そしてしばらく時間が経ってタックパンサーは箱根山付近を通過しようとしていた。

「あれ?あんなところに人がいる。何やってんだ」

その人は満月を真っ直ぐ見つめると誰かに合図を送るように月に手を振った。そして月の方でもそれに呼応するようにキラリと光るものがあった。

「何なんだ一体…」

星司さんはタックパンサーのブレーキを引くとその人物に詰め寄ろうと降りて行ったので私も慌てて降りた。

「おい、こんなとこで何してるんだ?…あれあんたは確か…」

彼はおやっという表情で我に返ったかのようにこちらを見た。

「ああ…あなた方は昨日の…南さんに彼氏さんじゃないですか。今日はお仕事ですか?」

気まずそうな顔で微笑したのは昨日会った小鳥遊涼平だった。

「それはこっちが聞きたい。こんなとこで月に手を振るのもピアニストの仕事か?俺は北斗、北斗星司だ。あんたは本当に人間なのか、誰かに合図を送ってるように見えたしあの月の光は何なんだ?」

「…言い訳はしませんよ。僕は確かに宇宙人だ。でもあなた方の敵ではないですよ」

「は?」

「僕は三年前にある目的と使命を帯びて地球にやってきた宇宙人です。地球が属する銀河系の隣りにあるアンドロメダ銀河には、かつて惑星ヤハウェという地球そっくりの環境と地球人そっくりな人々が住む星がありました。ヤハウェは超高度な科学文明を享受し人々の暮らしはより豊かになっていくはずでした。ところが…」

小鳥遊涼平はそこで言葉を区切ると表情を曇らせた。

「ところがどうしたんだよ?」