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この程度の武装ならば、戦いに来たのではない事が、、分かるだろう。
靖王も林殊の考えは分かっていた。
軍で動けば、また戦が始まる、だからといって衛箏を見捨てられぬ。
自分が林殊でも、恐らく同じ事をするだろう。

昨日、衛箏が戻っていないに気が付き、皆、落胆していたのだ。
林殊が、自分の馬に乗せたのを見た者がいたが、衛箏の事が話題になったその時、林殊は衛箏の事を、一切何も言わずに、その場を去った。
きっと、ダメだったのだろうと、皆、話していた。
戦に出れば、配下がこんな目に遭うのは特別ではないが、仮にも衛箏は赤羽営の副将なのだ。林殊の片腕だったのだ。
その場を黙って去った林殊の悲しみは深いだろうと、皆、林殊の心を、思ったのだ。
誰もそれ以上追求しなかった。

その林殊の様子を、靖王は戦英から聞いていた。
きっと林殊は、その夜、自分の元を訪ねるだろうと、靖王は思っていた。
悲しみは抱え切れぬ。
だが、いくら待っても、林殊は自分の幕には現れず、靖王は不審に思っていたのだ。
もしかしたら、衛箏は生きているのではないかと、そう思った。
他の者ならまなだしも、自分の前では林殊は偽れないのだ。
林殊の隠し事を、見破る自信は十分にあった。
━━━だから来なかったのだ。一人で行く為に。━━━
相談されれば作戦を考え、共に向かい、林殊の補佐をするつもりだった。
林殊は来なかった。
初めから、自分一人で救出するつもりだったのだ。
例え単騎でも、敵に見つかれば追われるだろう。
林殊は衛箏を救出し、こちらの雲南軍営に向かう途中に追われた時の万が一を、靖王に託したのだ。
林殊と衛箏、二人乗りの騎馬では、たちまち追いつかれてしまう。

靖王と戦英は共に軍幕を出た。
空が白み始めたと言っても、まだ辺りは暗い。
林殊はとうに、助けに向かっている筈だと、靖王は思った。
衛箏を救出し、こちらに引き返した林殊が、靖王と出会うように、、、時間の差を作るために、夜明けに靖王に書状を渡すようにと、戦英に言って動いたのだ。
自分を含め、林殊に勘定され尽くされている様で、些か腹が立つ。
腹が立つが、自分は行くしかないのだ、そう思う。
━━━戦英は、夜明けより、幾らか早く私に書状を渡した。それは小殊の計算の中には入っているのか?。━━━
いくらでも早く救出したい、衛箏も、林殊も。
━━━早く発つ事に、悪い事はあるまい。━━━
もしも、逃げ切れずに、林殊と衛箏が南楚の兵と戦っていたなら、助ける事が出来るのだ。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

林殊と霓凰が馬首を揃えて、馬を操っている。
空が白み、辺りは薄明るくなっていく。
早朝の静けさの中、軽く駆ける馬の蹄の音が響く。
南楚の軍営にはまだ届くまいが、戦場にいる南楚の見張りの斥候には、この蹄は聞こえているだろう。
早く済ませようと、早駆けしたら、静寂の中、高らかに蹄の音が響き渡り、たちまち南楚の兵が駆けつけるはずだ。
薄闇の中、南楚軍は、まだはっきりとは、林殊達の様子を掴めまい。
恐らく、南楚の斥候は、様子見の状態だろう。

「霓凰、頼まれてくれないか?。」
おもむろに林殊が口を開いた。
「何?、まさか私を軍営にもどすつもりなの?。嫌よ。」
霓凰は流石に勘がいい。
霓凰を危険に晒すつもりは更々無い。
戻すならば今だった。説得させられるかが問題だった。
霓凰が邪魔だと言う訳では無いが、林殊一人の方が、何かと動きやすい。
「いや、違うよ。戦英に書状を頼んできたんだ。ちゃんと景琰に渡したのかが不安なんだ。この救出は、私と霓凰だけじゃ、やっぱり不安だ。」
「林殊哥哥!、見え見えじゃないの!。絶対に戻らないわよ。」
やっぱり見え見えだった。

「、、、、、、。」
林殊は馬を止め、遠くへ目を凝らし、囁かな何かをじっと聞いている様だった。
「、、、、何?、、、どうしたの?。」
霓凰は林殊の様子に、ただ事ではない何かを感じた。
「、、、、来る気だ、、、こっちへ、、。」
「哥哥、、、何が?、、、」
唯ならぬ、林殊の姿だった。
林殊は何かの気配を、感じているのだ。
霓凰の背筋が泡立つ。
「霓凰、、景琰をこっちへ呼んできてくれ、、一足遅れてこちらに向かう様に、頼んでおいたんだ。」
いつもとは違う林殊だった。
ビリビリと気を張る、林殊の波動が伝わってくるのだ。
霓凰にも緊張が走る。
戦場ではこうなのだ、林殊は、、初めて見る林殊の表情だった。
「霓凰、行け!!。」
力強い、体に畝るような、低い林殊の声。
霓凰は無言で頷く。
「哥哥、、無理をしては駄目よ。必ず、靖王を連れて来るわ。」
霓凰は、馬首を雲南軍営の方へ向け、馬を駆る。
林殊は必ず衛箏を助け出すだろう。自分の剣では林殊の助けにはならないかもしれない、霓凰はそう思う。
霓凰は実戦に出たことが無い。
実戦は普段、林殊と遊んでるようなそんなものとは違う。
林殊の力になるどころか、足手惑いになる、、、。
そうはなりたくない。
霓凰は、靖王を早くここに連れて来ることが、今、自分がするべきことだと思った。
静寂の中に、霓凰の蹄の音が響いていた。

霓凰を帰す為、少し脅すつもりの筈が、本当に南楚の兵が出てきた様だ。
遠くでこちらへ向かう、微かな蹄の音。騎馬兵と、遅れて向かう歩兵だろう。そう数は多くない。
静けさの中、林殊達の蹄が響いたのだろうが、逆に敵兵の気配も丸聞こえなのだ。
───霓凰を帰せたのは良かった。───
早く衛箏を見つけて、撤退せねばならなかった。

動かずにいるならば、この先の林の中。
林殊は、薄暗い林の中に入って行った。
「衛箏!!!、衛箏!!!、どこだ??。」
地形と方角を覚える事には、自信があった。
確かにここで隠れるように、衛箏に言ったのだ。この場所に間違いは無い。
じっと耳を澄まして、衛箏の声を聞く。
「、、、いた!!!。衛箏!!!。」
微かな声がする。衛箏の声に間違いない。
大きな岩のある方から聞こえる。
急いで近くまでゆき、馬を降りて岩の陰にまわる。
「衛箏!。」
「、、、小帥!。」
意識もあり、あの時以上に負傷はしていない。
だが、憔悴しているようだ、無理もなかった。
「すみません、小帥、、、。」
「いいんだ、戻るぞ。」
足の怪我の具合を見た。槍で一突きされたのだ。衛箏は自分で応急に、手当をしたようだが、かなり出血していた。
今は血は止まっているが、馬に揺られれば、また傷が開くだろう。
それ程、深い槍傷だった。
林殊が足に触ってみたところでは、折れてはいない様子だ。
衛箏に肩を貸し、馬に乗せる。
林殊は、衛箏の前に乗り、衛箏は林殊に掴まった。
「戻るぞ!!。」
手網を握り、馬の腹を蹴る。
長居は無用だった。早く立ち去るに限る。
───どこかで我々は捕捉されるだろうか、、、。
多分、追い詰められる、このままではきっと、、。───
今、衛箏が自分を掴む力は、そう強くない。
全速力で駆れば、衛箏は落馬するだろう。
難しい状況だが、逃げ切らねばならない。
───もしも、捕捉されたら、、、。───
そうなった時の覚悟もあった。
───できるだけ、逃げるしかない、、。───



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作品名: 作家名:古槍ノ標