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二騎の騎馬が、草原を駆けていた。
靖王と戦英だった。
『雲南軍営から、南西の方角へ、、』
林殊の書状の方角は、丸っきり南楚の軍営のある方向だった。
━━━何故そんな危険な場所に、衛箏を置いてきたのだ。━━━
戦場になった、草原では流石に隠し切れなかったのかもしれない。
敵軍営の足元といえは足元、まさかそんな場所に負傷した小隊の副将が居ようとは、南楚軍は気付くまい。
雲南は援軍を得た、攻められるばかりの南楚軍の方が、被害は甚大だ。

林殊に限って、そんなドジは踏まないと思っているが、敵軍に囲まれてはいないか、靖王の気持ちは逸るばかりだった。
いくらでも早く追いつきたい。

靖王は、向こうから、こちらへ向かってくる単騎を確認した。
━━━林殊だろうか。もう連れてきたのか?。━━━
だが、違うようだった。
「、、、、霓凰??。霓凰も来ていたのか?。」
きっと、林殊は出発する所を見つかったのだろう、霓凰は勘が良い。

早馬だった。
━━━何かあったのか、、。━━━
悪い予感がする。
霓凰も靖王を見つけて、一心に馬を走らせてくる。
「靖王殿下!!!。」
三人が合流する。
「林殊哥哥が、、、林殊哥哥が、、南楚兵に囲まれるかも知れないわ。」
必死で駆けて来たのだろう、霓凰は息を切らしている。
「霓凰、先導しろ。」
霓凰は力強く頷き、馬首をくるりと変えて、靖王と戦英を林殊の元へ先導した。
三騎は南楚軍営の方へと向かって行った。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

案の定、衛箏の具合は良くはない。
林殊に掴まっているだけで精一杯なのだ。
馬の速度を上げられなかった
どんどんと、南楚の騎馬兵が、近づいてくるのが分かる。
南楚の騎馬は三騎程、その後に、大分遅れて歩兵がいた。
───このままでは捕まる。───
要は、衛箏さえ逃せば、自分一人なぞ何とでもなるのだ。
林殊は覚悟を決める。
「衛箏!、聞け!。」
「、、はい、、」
衛箏の意識はまだしっかりしている様だ。
林殊は、自分に掴まっている衛箏の手に、馬の手綱を握らせる。
「私は馬を降りるから、お前はこのまま馬を走らせろ!。」
「、、、は?、、、」
「この先に景琰がいる!。景琰をここに寄越すんだ!。」
「、、し、、、小帥!、、、。」
それだけ言うと、するりと衛箏の前から滑り落ちるように、走る馬から降りた。
一度、くるりと地面を転がり、立ち上がる。
その時もう、右手には剣が抜かれていた。
そのまま向かってくる騎馬に立ち向かってゆき、騎馬三頭の足を切りつける。早業だった。
切りつけられた馬は、もんどりを打ち、騎馬兵は、皆、落馬した。
───衛箏が捕まらなければいいんだ。
ここで景琰を、待つ!。───
この先へ、衛箏を追って、兵が行かないように、食い止めるのだ。
歩兵の姿も見える。程なくここへ到着するだろう。
思った以上に、この南楚兵を食い止めるのは、大変な事かもしれない。
林殊が一人で、ただ脱出する方が、余程楽なのだ。

落とされた南楚兵は怒っている。
「私は、赤焔軍赤羽営の林殊だ!。私と遊ぶのか?。」
───衛箏に、こいつらの意識が向かぬように、───
「私の首を持っていったら、手柄だぞ!。」
───こいつらとやり合うのは、骨が折れるだろうなぁ。───
何てったって、相手は鎧を付けているのだ。
林殊は、雲南軍営の、その辺に転がっていた、なまくら刀を拾ってきた。自分の剣では、切れ過ぎる。
剣よりも槍の方が、鎧にはまだ効きそうだった。
二人の兵士が、持っている槍を、林殊に繰り出す。
林殊は躱して、その内の槍一本を奪い取った。
三人とも、武術の腕は大したことは無いようだ。
林殊に比べたら、大概の者は、どうってことは無いだろう。
三人が持つ槍は、どれも良い槍とは言えず、こんな槍では時間がかかるだろうと思っていた。
───なんて使い難らい槍だ!!。手入れがなって無い!。───
自分の槍を持ってくれば良かったと、そう思った。
槍を持ってきたら、戦意満々と受け取られてしまうだろう。
その様には出来なかったのだ。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

「小殊の馬だ!!。」
━━━見つけた。━━━
林殊は上手く衛箏を連れ、脱出出来たのだ。
靖王は喜んだが、馬が近づくにつれ、不安へと変わる。
馬上にいるのは、衛箏、一人だけだった。
「衛箏!!。小殊は、、、小殊はどうした!!。」
近づいてくる、衛箏は青ざめている。
出血が酷いのだ。
やっとここまでたどり着いた、そういう感じだった。
「、、、殿下、、小帥は、、一人で、、、向こうで、、」
衛箏は切れ切れに言葉を出し、自分が来た方角を指さした。
「霓凰、衛箏を連れて行け。」
「分ったわ。」
霓凰の返事も聞かずに、靖王はもう馬を馳せていた。戦英も後に続いた。


当の林殊は、騎兵の後から到着した歩兵までが加わり、イライラしていた。
「あ"あ"あ"あ"あ"!。」
持ってきた剣は、潰れてとうに使えなくなっていた。
あの剣はやはり、良いものでは無かった。馬を切った時に、馬の装具に当たって、刃は欠れてしまった。
兵の幾人かは、林殊に打ち付けられて蹲っていた。
事実上、もう停戦なのだ。
今日、雲南軍営から、和議の使者が行く筈だ。
だから、この兵士達を斬ろうとは、思っていなかった。
初めに来た騎馬は倒してしまった。逃げる馬には使えなかった。
鎧の兵士を、打ち付けて倒すのが、何と果てしないことか、、。
「、、もう、この位にしないか?。私は、戦をしに来たわけじゃないんだ。」
相手の兵士達は、聞く耳を持たなかった。
言葉が終わるやいなや、次々に槍や剣が向かってくるのだ。
林殊には、武術の稽古を付けている様相だが、南楚の兵士は真剣だった。
───応援の南楚の騎兵が、早く到着しないものか、、。
そうしたら、馬を奪って逃げてやるのに、、、───
向こうから、馬と歩兵が来るのは見えているのだ。
───遅いなぁ、、───
昨日、全軍で戦って、南楚軍は恐らくロクな馬が、残っていないのかも知れない。
「しかも弩弓隊か、、、。」
次第にはっきりと見えてきた部隊を見て、うんざりしていた。
間もなく来るように見えて、中々到着しない敵の部隊は弓隊だった。
弓隊では、あまり林殊の方へは、寄っては来ないだろう、、。

林殊の耳には、もう一つ、別の蹄鳴が聞こえていた。
待っていた音だった。



──────────────

━━━小殊!!!━━━
林殊は、二十人程の南楚兵に、囲まれているだろうか。
斬り倒してしまえば、あっという間に決着が着くだろう。
だが、林殊がそうしない理由も、靖王には良く分かっていた。
戦を後腐れなく、終結する為だ。
南楚兵が、真ん中にいる林殊を、槍や剣で突ついているのだ。
飛び跳ねて躱したりと、中々、忙しそうだった。
そして、林殊が戦うその先に、弓部隊がいるのも分かった。
━━━弓は面倒だ。━━━

「戦英!!、突っ込むぞ!!。」
そう叫び、林殊と南楚兵の塊に、馬もろとも突進した。

靖王の馬に気が付いた南楚兵が、わらわらと林殊から離れ、道を開ける。
忠義に厚い兵士五人程が、まだ林殊とやり合っていた。
作品名: 作家名:古槍ノ標