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甘い水の中で 5

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直ぐには取り出す事が出来ず、とりあえず電波を遮って連れ去られた。
そして、拉致されて直ぐ身体を色々調べられて、発信機を摘出する手術が行われた。
その時何故か、全身麻酔をかけられた。
たかだか腕に埋め込まれた発信機を取り出すだけに何故眠らされたのか疑問に思っていたが…。
「それがどうしたんだ?」
「あの発信機は君の生体反応とリンクしていてね。君の心臓と脳波が止まった瞬間に連邦へと信号を送り…その後爆発する様にセットされていた」
シャアの言葉に流石のアムロも目を見開き息を止める。
「…え?」
「連邦は君の肉片一つも残らない程の強烈な爆弾を仕込んでいたんだ。流石に君の身体から摘出するのに手間が掛かってね。君には全身麻酔をかけてさせてもらった」
「なんで…そんな…」
アムロは訳が分からず、シャアへと困惑の視線を向ける。
そんなアムロに、シャアは小さく溜め息を漏らすと、その理由を告げる。
「身体の一部でも残っていれば、君のクローンを作れるからな。連邦は他の組織に君の死体が渡る事を恐れたんだよ」
「な!?」
あまりの事に、アムロの胸に怒りが込み上げる。
そして、それを側で聞いていたブライトも同様だった。
「だからアムロの捜索をあんなにあっさりと打ち切ったのか!?アムロは既に死んでいると思っていたから!!それにアムロに爆弾を仕込んでいただと!!貴様らそれでも人間か!?」
高官達を睨みつけて叫ぶブライト同様、シャアも高官達へと冷たい視線を向ける。
「ブライト大佐、口を慎みたまえ!NTアムロ・レイは危険分子であり、野放しに出来ない存在だ!地球連邦政府の為には当然の処置だ!」
高官の言葉に、ブライトが更に激昂する。
「何だと!あの戦争をアムロがどんな思いで戦っていたか分かっているのか!?まだ十五だったんだぞ!大人の都合で無理やり最前線で戦わされて!NT能力だって、生き残る為に覚醒した様なものだ!それを危険分子だなど!」
高官に掴みかかるブライト手を、アムロが掴んで止める。
「ブライト!」
「離せ!アムロ」
「ありがとう、ブライト。もういいよ」
「しかし!」
そのアムロの表情が余りにも穏やかで、ブライトは言葉に詰まる。
「もういいんだ」
「アムロ…」
「もういい…」
次第に切なげな表情に変わるアムロに、ブライトは小さく舌打ちすると、鷲掴んでいた高官の軍服を、乱暴に離す。
「くそっ!」
ブライトの勢いに、高官は少し怯えつつも、乱れた軍服を直しながらも叫ぶ。
「ブ、ブライト大佐!上官に対してその態度は何だ!」
しかし、更に睨みつけるブライトの態度に怯んで一歩下がる。
「ふ、ふん。今回は見逃してやる」
まだ怒りが収まらず、拳を強く握り締めているブライトの肩を、アムロがポンっと叩き、「ありがとう」とそっと囁く。

「そろそろ本題に入りたいが宜しいかな?」
シャアの一言で、一旦その場は収まり、皆席について会談が始まる。
「わざわざスウィート・ウォーターまで御足労頂き感謝します」
にこやかに高官達へと話し始めるシャアに、ブライトが怪訝な顔をする。
『その笑顔の下で何を企んでいる?…』
シャアの思惑に気付いていない高官達は、シャアのその柔和な態度に安堵すると、本題である交渉を始める。
「シャア総帥、本日我々がこの会談を申し入れたのは他でもない、貴殿のネオ・ジオンと友好的な関係を築き、平和的な共存を望んだからです」
「ほう…。平和的な共存ですか」
「はい、連邦政府としては、ネオ・ジオンの求める要求を、出来うる限りで受け入れ共存して行きたいと考えております」
「我々の要求を聞き入れてくれると?」
「全てとはいきませんが、可能な事は対応しましょう」
機嫌を伺うような、それでいて上から見下ろす高官の態度に、ブライトは反吐が出そうになる。
『相変わらずこいつらは自分たちの事ばかり考えて勝手な事を!大体こいつらは自分たちがどんなに危険な男と交渉をしているのか分かっているのか?』
ふと、シャアの後ろに立つアムロに視線を向ける。
アムロは、シャアの後ろに控えてその様子を伺っている。ネオ・ジオンの制服を着ている事に複雑な思いは込み上げるが、元気そうな姿にホッと肩を撫で下ろす。
おそらく潜入捜査中にシャアに拉致されたのだろうが、乱暴に扱われてはいなかった様だ。
いや、シャアがアムロに乱暴を働くとは思っていなかった。グリプスの時から、シャアはアムロに悪意を抱いてはいなかったからだ。むしろシャイアンから脱走していたアムロがエゥーゴに合流した事を喜んでいた。
過去に蟠りがあったとは言え、二人はそれを乗り越えていたと思う。
どちらかといえば、ネオ・ジオンの下っ端にアムロが捕まる事を心配していた。
やはり一年戦争を知るジオン兵にとって、アムロは忌むべき存在だろうから…。

シャアが側近のナナイに視線を向けると、ナナイは代表の高官へと書類を手渡す。
少し緊張した面持ちでその書類に目を通す高官の表情が、虚をつかれた様に緩む。
「シャア総帥これは?」
「和平条約を結ぶに当たり、連邦にのんで頂きたい条件です」
にっこり微笑むシャアに、高官がニヤリ笑う。
「本当にこれで?」
「ええ、我々が求めるのは争いでは無い。連邦から独立し、このスウィート・ウォーターに独自の自由自治を実現したいだけなのです」
他の高官が驚いてその書類に目を通す。
そして、代表の高官に少し不安げな表情を向ける。
「本当にこんな条件で?もしかして何か裏があるのでは?一度持ち帰って確認するべきかと!」
「しかし、時間を置けば別の条件を付加してくるかもしれん、この内容ならば問題ないだろう」
コソコソと話し合いをするが、他の高官の懸念を無視して、最後には代表の高官が意見を通してこの条件をのむとの結論に至った。
「分かりました。この条件をのみましょう」
「ではこの書類を正式に条約締結証書とし、サインをお願いしたい」
「待ってくれ!条件とは何だ!」
後ろで控えていたブライトが叫ぶ。
ナナイがシャアへと視線を向けると、シャアがコクリと頷く。シャアに了承を得たナナイが内容を読み上げて行く。
「一、連邦がハマーン・カーン率いる旧ネオ・ジオンから接収したアクシズのネオ・ジオンへの譲渡
二、ネオ・ジオンの連邦からの離脱、三、アムロ・レイの正式な除隊手続き及び、ニュータイプ研究所内の検体サンプルの破棄、以上です。この条件をのんで頂けるのならばネオ・ジオンは連邦への武力行使を致しません」
「それだけ?このコロニーが連邦から離脱してどうするつもりだ?そうなればこのコロニー…、「スウィート・ウォーター」へ送られている連邦からの支給物資がストップするぞ?アクシズの譲渡にしても、あそこには大した鉱物資源もないだろう?」
ブライトの疑問にシャアが穏やかに答える。
「支給物資については何とか目処が立っている。アクシズについては元アクシズ提督のマハラジャ・カーンとの約束があってね。あそこを守って欲しいと言われていた。管理には少し金がかかるが約束を違える訳にはいかないからな」
作品名:甘い水の中で 5 作家名:koyuho