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あの日の夏は海の底 前編

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ー 雲ひとつない空に太陽が照りつけている。
 蝉の鳴き声は酷くこだまして、暑さを助長し
 ていた。
 僕たち六つ子は、夏休みを迎えていた。

 「あー」

 「あー」

 「あー」

 「「「あーつーいーなぁー♫」」」

 合わせたわけでもないのに、いい感じにハモ
 っている長男、五男、六男を横目に僕は猫と
 戯れていた。

 「暑いよぉ〜お兄ちゃんいくらカリスマって
  言っても、さすがにこの暑さを乗り越える
  スキルはないよぉ〜?」

 グダッと横たわりながらいうおそ松兄さん
 は、宿題に頭を悩ませてるチョロ松兄さんを
 力なく眺めていた。

 「てかさぁ〜もうどっかに涼みに行かない?
  流石に死んじゃうんだけど…」

 トド松も机に突っ伏したまま話していた。

 「やきゅう!?」

 「十四松兄さん…それ死ぬやつ…」

 「なんで十四松はこうも元気なのかねぇ〜」

 「ハッスルっすよ兄さん!!」

 ダラけた二人とは違い、十四松は今日も元気
 いっぱいだった。
 カラっとした笑顔で親指を立てる十四松に、
 げんなりするおそ松兄さんとトド松。

 静かに宿題をしていたチョロ松兄さんも、鉛
 筆を投げ捨て机に突っ伏した。

 「あーもう無理!誰だよ宿題なんて考えた奴
  ケツ毛燃えろ!!!」

 「チョロ松ぅ〜お前に宿題は無理だよw
  お兄ちゃんと遊ぼうよ〜」

 「暑いのにひっつくな!!」

 汗だくのおそ松兄さんは、チョロ松兄さんに
 構って攻撃を仕掛けていた。

 僕は猫を外に返し立ち上がった。
 
 「あれ?一松、出かけんの?」

 チョロ松兄さんにしつこくひっつきながら、
 おそ松兄さんが僕の方を見た。

 「…暑いからさ…海行かない?」

 引きこもりの僕では考えられない提案をして
 しまった。きっと暑さのせいで思考回路が壊
 れたのだと、自分に言い聞かせていた。

 「え!?あの引きこもり松が!?」

 「ちょっと!闇松兄さん本気!?
  太陽の元に出たら溶けて消えちゃうよ?」

 「い…一松…暑さでやられたの?」

 散々な言われようである。チョロ松兄さんま
 で心底驚いていて、正直失礼だなぁと思って
 しまった。
 普段の行動を見てれば驚かれて当然なのだ
 が…

 「…行くの?行かないの?」

 僕は少し不機嫌気味に質問する。
 すると、十四松が嬉しそうに飛んで来た。

 「もちろん行きマッスル〜!泳ぐぞー!」

 「ん…十四松は決定ね」

 はしゃぐ十四松に少し口角が緩んだ。
 他の三人の方を見ると、複雑な顔をして悩ん
 でいた。
 当たり前かもしれない。いつもの引きこもり
 の僕が、自ら外に出て…ましてや海なんて普
 段なら考えられないし、何か企んでると思わ
 れてる節がある。

 「一松…俺も行きたい!
  暑いし、なんか面白そうだし?w」

 「え?それなら僕も行くよ!
  おそ松だけじゃ心配だし」

 「一人で留守番とか僕は嫌だよ!?
  仕方ないから今回は兄さんに付き合ってあ
  げるね!」

 三人にもいい返事をもらったので、僕はみん
 なの方を見てニヤッと口元を歪めた。

ー 海なんて久しぶりだ。
 というか、僕ら以外誰もいなく波の音だけが
 聞こえてくる。

 「そーいえば、カラ松兄さん誘わなかったけ
  ど…いいのかな?」

 トド松は写真を撮りながら、質問を投げかけ
 て来た。

 「何言ってんの?クソ松は演劇の練習で忙し
  いでしょ?」

 「まぁーそーだよねw」

 「それに彼女とデートなんじゃない?」

 「はぁ…本当ムカつく…」

 僕の一言にトド松は、スマホから目を離し僕
 の方を見る。

 「理不尽だよ!あんなイタイのがモテるなん
  てさぁ!」

 悔しそうなトド松は、後ろから走って来た十
 四松に思いっきりダイブされており、二人で
 豪快に転んでいた。
 おそ松兄さんも混ざりに飛び込み、高校生三
 人は砂まみれになっていた。
 チョロ松兄さんは少し離れた日陰でそれを見
 ながら、呆れたように笑っている。

 皆んなを思って海に来た…なんてのは綺麗事
 で、本当は僕がただ来たかっただけ。
 海に来て、この気持ち全てを波にさらって欲
 しいなんて、柄にもなく思ってしまった。
 だから海に来たのに…一面の青に僕は心を奪
 われてしまった。
 雲ひとつない空の青と、緩やかな波を立てる
 水面は境界線がなく、僕の視界は青色で埋め
 尽くされた。

 ”愛おしい”

 そう思ってしまった。

 ”あぁ…僕はこんな風に思うほど、カラ松を
  想っていたんだ”

 自覚すると心が悲鳴をあげた。
 僕は海に向かって走り、ダイブした。
 真夏の海も結構冷たいもので、一気に鳥肌が
 立ち…耳と尻尾が出てしまった。

 「うわ!一松何してんの?!」

 チョロ松兄さんの声に振り返り、僕は悪戯を
 した子供みたいに笑った。

 「いちまちゅ〜楽しそうだから、俺も混ぜて
  よぉ〜」

 おそ松兄さんが、助走をつけて僕の方へ向か
 ってくると、海に飛び込んだ。
 跳ねる水飛沫に太陽の光が、キラキラ反射し
 て綺麗だった。

ー 結局皆んなで海に飛び込み、砂まみれでび
 しょ濡れの僕たちは、水を滴らせながら帰路
 に着いていた。

 「てかさぁ…なんで一松兄さんあの時、飛び
  込んだの」

 疲れ切った顔のトド松が僕にそんな疑問を投
 げかけてきた。

 「別に…なんとなく」

 素っ気なく答えた僕。
 汚れた想いを流したかったなんて言えない。

 「何それ!?本当何考えてるかわかんないよ
  ね〜闇松兄さんはさぁ…」

 不服そうな顔で、服の裾を絞りながら言うト
 ド松に

 「ま!たまにはさぁ〜一松もさっぱりしたい
  時はあんだよ〜
  な!一松?」

 なんでも見透かしてるかのように笑う長男
 に、少しドキッとした。

 「楽しかったね!トド松!」

 「十四松兄さん…元気だね」

 十四松は、嬉しそうに言うと僕をみる。
 あまりの元気の良さにげんなりするトド松
 の頭を、僕は乱暴に撫でた。

ー 家に着いた僕らは、松代に散々怒られた。
 でも、それも楽しく感じてしまうほど今日は
 充実していた。

 夕飯ごろに、カラ松が帰って来た。
 
 「フッ!帰ったぜブラザー」
 
 いつも通り、痛々しい話し方をしていた。

 「あ!おかえりカラ松ぅ〜」

 「カラ松遅かったんじゃない?」

 「カラ松兄さん…デートとか言ったら殺す
  よ?」

 「おかえり!カラ松兄さん!!」

 帰って来たカラ松に皆んなが話しかけてい
 た。僕は黙ったまま、トド松のものすごい形
 相を眺めた。

 「今日は、部活だぞ!台詞もやっと覚えてき
  て、今は立ち位置を練習してるんだ」

 相変わらず演劇のことを嬉しそうに話すカラ
 松は、子供みたいだった。

 「頑張ってねカラ松!
  僕ら見に行くから」

 チョロ松兄さんがそう言うと皆んな頷いてい
 た。
 
 疲労が半端じゃなく、今日は皆んな寝るのが
 早かった。
 僕はまた眠れず布団から出て屋根に登る。