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あの日の夏は海の底 前編

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 膝を抱え、星を見ながら今日の事を思い出し
 ていた。
 不意に気配を感じて後ろを見ると、カラ松が
 屋根に登って来ていた。

 「眠れないのか?一松」

 優しく言うカラ松に、顔を戻し俯く。

 「別に…」

 素っ気のない返事に、カラ松は笑顔を浮かべ
 た。

 「…なんなの?早く寝なよ」

 「いや、俺も眠れなくてな」

 「あっそう」

 「俺が隣にいるのは嫌か?」

 「…寝る時だって隣でしょ」

 変なことを言うカラ松に、僕は笑みを浮かべ
 た。

 「あのさ…演劇…頑張ってね」

 勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。

 「ありがとう…一松
  絶対見に来てくれよ」

 演技めいてないカラ松は、微笑む僕の頭を優
 しく撫でた。
 
 ”今夜は最高”

 そう心で呟き、空を見上げた。

ー 僕は眠い目をこすりながら、欠伸をひとつ
 した。
 昨日眠れなかったせいで、すこぶる眠いの
 だ。
 顔を洗いに行くと、出かけようとしているト
 ド松がいた。

 「トド松出かけんの?」

 僕が声をかけると、トド松がこちらを見た。

 「うん!出かけるよ!
  一松兄さん起きるの遅すぎ!
  みんな出かけちゃったよ?」

 「まじかー…まぁ、俺は予定ないし」

 「ちょっ!闇を出さないでw」

 「フヒヒ…サーセン」

 トド松とくだらないやりとりをしていると、

 「あ!そろそろ行かなきゃ!
  あのね、カラ松兄さんデート行くらしいん
  だけど僕がチョイスした服、何着か渡して
  あるからコーディネートしてあげて欲しい
  んだけど」

 トド松の言葉に驚き、僕は言葉を失う。

 「まって…俺には荷が重いよ…」

 焦りながら言う僕に、ごめんのポーズでトド
 松がウインクした。

 「本当ごめん!頼んだよ〜」

 そう言うと、僕の返事も聞かずに走って行っ
 てしまった。
 寝起きの脳内はパンク寸前で、デートやらコ
 ーディネートやらの言葉がぐるぐる回ってい
 た。

 とりあえず、顔を洗って頭を整理する。

 ”カラ松は今日彼女とデートだから…その服
 を僕がコーディネートする”

 考えただけで吐き気がして来た。
 自分の好きな相手が、他の人とデートに行く
 のに…服装を考えてあげるなんて…
 どす黒い感情が渦巻くと同時に、弟として応
 援してあげるいいチャンス!っと自分に言い
 聞かせた。

 平然を装い部屋に入ると、カラ松は困った顔
 をこちらに向けた。

 「あれ?一松じゃないか
  トド松はどこに行ったんだ?」

 「トド松なら出かけたよ」

 「へ!?トド松が俺の服装をダメ出ししたの
  に…ほったらかしはないぜブラザー…」

 落ち込むカラ松の肩をたたく。

 「今日、彼女とデートなんでしょ?」

 気持ちを押し殺し優しい弟の顔をした僕に、
 カラ松は困った顔を緩めて頷いた。

 「そうなんだ…今日は彼女のバースデーで
  な!」

 「…じゃあ、特別なデートなんだね」

 「あぁ…だからパーフェクトファッションで
  行こうと思ったら、トド松に止められてし
  まってな」

 苦笑いをするカラ松に呆れつつ、それでも彼
 女とのデートに気を使ってる姿を見ると、胸
 が痛む。

 「…コーディネートしてやるよ」

 僕がボソッと呟くと、カラ松は驚いた様子で
 こちらを見る。

 「さっき、トド松に頼まれちゃったし…
  まぁ、任せてよ」

 僕は柔らかい表情をカラ松に向けると、カラ
 松は驚いた顔を緩め嬉しそうに笑う。

 「それじゃあ、よろしく頼むな一松」

 その何気無い一言…ただ名前を呼ばれただけ
 なのに、物凄く嬉しくてたまらなかった。