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あの日の夏は海の底 後編

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  何より一目惚れしたしな!」

 決めポーズでウインクをしながら言ってくる
 ポセイドンに笑ってしまう。
 
 「…仲良くなれて良かったよ」

 僕は俯いてボソっと呟く。

 「…一松?」

 突然名前を呼ばれ、咄嗟にポセイドンの方を
 見るが、彼が呼んだわけじゃない。

 岩場の影から見えたのはカラ松だった。

 「マズイよ!ポセイドン…」

 ポセイドンに隠れるように目配せする。
 しかし、彼は僕を庇うように前に立って様子
 を伺っている。

 「今、一松の名前を呼んでいたぞ?」

 「うちの兄弟だよ…次男が来たみたい」

 声を伏せながら質問するポセイドンに、僕は
 答えた。

 足音が近づいて来て、カラ松が顔を出した。
 
 「一松?」

 僕の姿を捉えたカラ松が、近づいてくる。
 間一髪で、ポセイドンを隠した僕は焦りを抑
 えようと呼吸を整える。

 「こんな所で何しているんだ…一松」

 「…別にクソ松には関係ないでしょ」

 「友達と会うと、おそ松に話していたが友達
  はどこにいるんだ?」

 質問してくるカラ松がみるみる怖い顔になっ
 ている。

 「…」

 「答えられないのか?
  とにかくこんな薄暗い所危ないから帰る
  ぞ」

 僕の腕を掴み、無理やり連れて行こうとした
 カラ松に、全力で抵抗したが、ビクともしな
 い。

 「離せよクソ松!」

 大きな声が洞窟に響いた。
 カラ松は、全く聞く耳を持たないで腕を引っ
 張る。

 抵抗していた僕を助けるに、ポセイドンが
 カラ松の腕を掴む。
 我を忘れていたカラ松が驚いて僕の方に振り
 返り、ポセイドンを見る。
 
 「一松が嫌がってるじゃないか…離せ」

 恐ろしく冷酷さを含んだ声に震えた。

 「お前は誰だ?一松とどんな関係なんだ?」

 カラ松は、眉間に皺を寄せてポセイドンを睨
 みつけた。

 「俺の名は”ポセイドン”だ!
  海の神で一松の友達だぞ」

 「…一松の友達なのか?」

 ポセイドンの言葉に、カラ松の殺気が治って
 いく。

 「そうだ!毎日遊んでいる」

 僕の腕を握ってた力が緩む。

 「なんだ、そういうことなら早く言ってくれ
  ブラザーのフレンドとの時間を邪魔すると
  こだったぞ〜」

 笑顔に戻ったカラ松に腰が抜けてしまった。

 「所でポセイドン?…だったか?
  すごくクールでナイスガイだな!」

 「それは俺も思っていたところだ!」

 二人は何故か意気投合していて、僕はかなり
 の疲労感を感じた。

 「ポセイドン!明日から俺が話をしに来てや
  るから、一松をここに呼ぶのは終わりにし
  てくれ」

 「なんでそんなこと、お前に決められなきゃ
  いけないんだよ!」

 カラ松の勝手な一言に痺れを切らした僕は、
 立ち上がり口を開いた。
 
 「俺は一松に何かあったら困ると思ってだ
  な…」

 「お節介なんだよクソ松!」

 蹴りを入れながら言う。

 「…悪いがソウルメイトでもそれは断るぞ!
  俺は一松とのスイートなタイムを味わいた
  いからな!」

 ポセイドンは、笑顔で言った。

 「そうか…それなら頻度を減らしてくれ、ブ
  ラザー達も寂しがってるからな」

 カラ松も笑顔で言う。
 二人とも目が笑ってないことに恐怖を感じ
 た。
 僕はまたカラ松に手を掴まれた。

 「ポ、ポセイドン…今日は帰るよ…」

 「そうか…また明日な!」

 僕は恐る恐る別れを告げた。
 僕の手を握る力が、どんどん強くなってい
 て、ポセイドンの言葉に返事することができ
 なかった。