はじまりのあの日10 歓迎会と思い出
よ~し、わたしも『彼』のお手伝いしよう。でも、彼ら料理を手にしていないよね。ならば
「がっくん、カイ兄、何が食べたい~。わたし、持って行くよ」
「あにさま、かいさま、りくえすと~」
調理に向かう『二人』を気にして『彼』を気に掛けて、言うわたし。カル姉も心配り
「ありがとう。でも、大丈夫だよ、リン。皆と食べてて」
「食べてて良いじゃない、カル。焼きたてのも食べてほしい」
でもそれじゃ~、声を出そうとしたわたし
「それじゃ~不公平だよ、神威のアニキ~」
「リンちゃんと一緒に、お酌しま~す。かむさんっ」
枝豆を取り分け、Mikiちゃん。純米を手に取り、ピコ君。味方してくれる声に遮られる
「そうよ、み~んなで楽しむものじゃないの。カイト、何が食べたいかしら~」
「焼きたて食いてぇからな。必然、お前の所に行くぜカイト。ついでに、差し入れてやる」
先に『楽しんでいた』めー姉、テト姉も。彼らが作ってくれた料理を片手に、飲み物を手に。集まり始めるメンバー。ちなみに、テト姉の『食った』に反応しないのは『会ったときからだ、治るはずないじゃない』と紫の彼。出会ったのは小学校の入学式だったそうで。その彼とカイ兄の周り、出来る人の輪。談笑しながら食べる。土鍋ご飯が炊きあがり、蒸らす時間に入る
「この胸肉パスタ、赤ワインと良く合いますわ、氷山さん。香ばしくておいしいですわぁ」
「本当ですか、ルカさん。あ、トマト載せのモッツァレラバッカ、白に合いますよ」
「ふ~ん、酒は飲めないもんな、ウチはまだ~。センセ、ワインて美味い、それ、一口飲ませてよ」
成人を迎え、お酒を窘めるようになったルカ姉。甘いロゼワインで上機嫌。辛口、白ワインを楽しむキヨテル先生。ワイン好き二人、意気投合。横のリリ姉、ややつまらなさそうに、口を尖らせる
「いけませんよ。リリィさん、未成年じゃないですか」
「い~じゃ~ん。一口、ヒトクチだけ~」
驚きと、やや咎める声色の先生。いたずらっ娘モードのリリ姉、さらに先生に絡みだす
「な~、いいじゃ~んセンセ。ここだけの話しにすれば~」
「お~いリリ、テルを困らせんな。大体真似して、他の子供が飲みたい言ったらどうすんだ~」
獰猛に言い放つ、紫様。やや、ご立腹だ。何故なら、語尾に『じゃない』が付いていない、一切。ぐうの音も出なくなるリリ姉が涙ぐむ
「そうですよ。皆さん、お酒は二十歳に成ってからです。リリィさん、良い子にして下さいね。後で、ハニーティーを煎れて差し上げますから。楽しく、デザートの時間を過ごしましょう」
言って、リリ姉の肩に手を置く先生
「テルだって、そんなに飲む方じゃないんだ、リリ。これから、お前の好きな『越後牛の塩胡椒焼き、パイン添え』焼いてあげようじゃない」
今度は、優しい言葉を掛ける紫のおにぃ。涙を拭い、微笑むリリ姉
「も~、フッタリ(二人)とも石頭~。ありがと~センセッ。おにぃ」
憎まれ口は、リリ姉の照れ隠し。今思えば、意気投合するキヨテル先生、ルカ姉に嫉妬していたのかもしれない
「お酒飲めなくたって、楽しいよ~リリちゃん」
「ん、めぐ姉もゴメン。コレ、美味いのセンセッ。一個ちょ~だい」
年齢はルカ姉と同じなので、飲んでも良いめぐ姉。ただ、お酒が苦手。今度はご機嫌で、モッツァレラバッカをつまみ上げるリリ姉。そのやや前方では
「カイ兄、何食べたい。おれ取ってくるけど。はっふっ」
グラタンを食べながら、レン。熱かったらしい、あわてて、飲み物を流し込む
「ほ~ひ、はひひい、ほはへ~(は~い、カイ兄、お酒~)」
野菜サラダを頬張るミク姉。手にはお酒
「ありがとう、レン。じゃあ、Mikiちゃんが握ってくれたお寿司を。ミクにも感謝をいたします」
レン、ミク姉が兄を気遣う。越後以来、日本酒にはまっているカイ兄。最近は、度数の低いスパークリング清酒が好み。兄曰く
「度数が低い分、長く飲むことが出来るからさ。それに、甘くって美味しいんだ~このお酒」
と言うことだ。お酌するミク姉。隣に陣取る、めー姉と杯を合わせるカイ兄
「さあ、出来たぞリュウト。熱っいから、気を付けて食べようじゃない。まとめて五枚焼いたから、皆で食べてほしい。切り分けは、そこのナイフでな。つまみにも最適じゃないの、メイコ様」
「ありがとうございます、にいさま」
「ふ~ふ~してあげるね、リュ~くん」
紫様とリュウト君のやりとり。切り分けてネギ、かつお節、ショウガ醤油をかける。冷まして、食べさせてあげるめぐ姉。口の周りを拭いてあげる
「ありがとうございます、めぐねえさま。にいさま、とってもおいしいです」
微笑ましいやり取り。メンバー全員、心が温まる
「ふふふ、ありがとう神威君。アタシは、ネギ味噌で頂くわ~」
「Thank youでゴザル、神威殿。拙者ハ、キムチで」
「かるは大根おろしと、刻んだおねぎで~」
ご機嫌が上機嫌へと高まるめー姉、アル兄。取り皿の上でトッピング。飲める二人は、食べてビールを、ジョッキ半分まで流す。至福の吐息。カル姉の手には野菜ジュース。わたしは、松皮造り数切れと塩、ワサビを持って、彼の横。自分用の飲み物はレモンティー
「はい、がっくん好きだったよね、お刺身で日本酒。あ、これからお肉焼くでしょ、手伝うよ~」
「ありがとう、リン。ああ、その前に、網、換えちゃうから。そしたら横で、野菜焼いて欲しいじゃない。塩胡椒で、お肉食べたいヤツはコッチにお~い~で~」
網を換え、牛肉を焼き始める。わたしは野菜。玉ねぎ、パプリカ、茄子。トウモロコシにタレを塗る。ミク姉が買ってきた空豆、塩水に漬け込んで置いたもの。サヤごと豪快に焼く
「はいっ、かむさんどうぞ。お酌で~す」
「あにき~、枝豆もど~ぞ~」
「ありがとうお利口さん。二人もたくさん食べてほしいじゃな~い」
ぐい飲みを手渡し、お酌を始めるピコ君。調理台に枝豆を置くMikiちゃん。すると隣の焼き台から
「Mikiちゃん、こんのお寿司すっごく美味しいよ。うっわ~、これすごい」
わたし達はもう、試食済みのお寿司。紫様とMikiちゃん、二人の『合作』不味いはずがない。カイ兄の言葉に、一目散。お寿司に群がるのは、レン、アル兄、ミク姉
「はいはい、だ~か~ら、みんな。天使様が優先だってば」
「少しは学習しろっつ~の~。ったく、天使組の取り分けちまうぞ」
今度はさすがに困り顔、めー姉。リリ姉、呆れながらお寿司を取り分ける
「ああ、リュウト。さっき食べてたおいなりさんは、ピコが作ってくれたじゃない。お礼言っとけよ~」
「ぴこさん、ありがとうございます。とってもおいしかったです。にいさま、おしえてくれてありがとうです」
深々と頭を下げるリュウト君。天使のみんな、四人全員、お利口さん。お料理に、我先にと群がらない辺りも慎み深い。逆に自分が恥ずかしい
「っと、焼き台の近くに置き場ね~な」
「デハ、何卓かを移動させるでゴザル」
でもこうやって、何事も率先して動き出すアル兄。やっぱりこのメンバー素敵。焼き台の周りに小型テーブル到着、完全に野外バーベキュー付き立食パーティー会場
作品名:はじまりのあの日10 歓迎会と思い出 作家名:代打の代打