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はじまりのあの日10 歓迎会と思い出

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「さ~て、リュー、何が食べたい~。大人気無いのが群がる前に」
「ユキも。まず食べたいの、取ってあげようじゃない」

メンバーを牽制しつつ、リリ姉と紫様。さっき群がっちゃったわたし達、バツ悪し

「ぼく、かぼちゃまんじゅうがたべたいです。りりねえさま」
「ゆきは、アイスがいいです、ぽ父さん。チョコとまっちゃのトッピングで」

弾けるエンジェルスマイル。萌え上がりながらも、リクエストの品を手渡す、リリ姉、紫の彼

「さあ、オリバーさん、いろはさんも、遠慮しなくて良いんですよ」

キヨテル先生も、傾斜を復元させながら

「あたし、まずラーメンが食べた~い」
「ボク、Biscuit Pleaseデフ~」

こちらも輝く、天使の笑顔。IA姉が、先生を手伝って、なんとか手渡す。天使様にお菓子を配り終えて、銘々好みの食べものを取る。いろはちゃんは、小鉢のラーメン。小テーブルへ移動。腰を下ろしてまったりと

「がっくん、はい、米焼酎。二次会は焼酎からだったよね」
「ありがたいじゃない、リン。覚えてくれて感謝~」

ご機嫌で杯を満たすわたし。注がれる彼も上機嫌。アテは、ホタルイカと揚げ浸し。テーブルに酒瓶を置く。自分用の、プリンとウエハースも置く。お酒を含む彼、わたしはその膝によじ登る。杯を置き、手伝ってくれる彼

「リンちゃん、ぽ父さんのおひざにすわるんだ」
「あ、うんユキちゃん。がっくんの膝、わたしの指定席なの~」
「ハハッ。これだけ観ると、どっちが年上か分かんね~なぁ。ケド、ウチも好きなんだけどね、この光景」

膝に乗せる彼、座るわたし。初めて観たユキちゃん。以外にもこの日まで、観たことなかった。イタズラっ子モード、茶化してくるリリ姉。でも、眼差しは暖かなものだ

「シテイセキってなあに~」
「ここは、わたしだけの場所ってコトだよ~」

何時だったか、彼に教えてもらった言葉を口にする

「確かに~。リンちゃんだけの場所だよね、神威のアニキの膝。アニキ好きの、グミね~さんでも乗せてもらえないもん」

小首を傾け、可愛らしく聞いてくるユキちゃん。答えたわたしと、同意するMikiちゃん。浮かぶ表情は愉快全開

「ホントだよね~。わたしもぽ兄ちゃんの膝、座りたい。でも、何だか出来ない。リンちゃんの場所なんだよね、ぽ兄ちゃんの膝」

少し寂しげなめぐ姉。でも、わたしの『指定席』を肯定してくれる。心からありがとう

「そうなんだぁ」

ぽつりと言って、リリ姉と話している、キヨテル先生をチラ見のユキちゃん。その視線、先生は気付かない

「そういえば、双子ちゃんは乗ってたけど~。ミクは座ったこと無かったわね、神威君の膝」

不思議そうに聞く、めー姉。エビチリを摘まみ、焼酎を一口

「う~ん、なんかねぇ。座ってみたかったけど、双子ちゃんか、リンちゃん。何時も占領されちゃってたから~」

珍しく、眉を下げながらミク姉『タイミングを逃した』とも口にする

「何かもう、オレ達『古参組』には日常の光景だよね。殿の膝にリン」
「ゎたしもそ~だよ、カイトのに~さん。ゎたしの心の栄養剤~」

バニラアイスをコーヒーウォッカに浮かべるカイ兄。チーズビスケ、チョコビスケを美味しそうにIA姉。二人とも上機嫌

「そういえばさ、リン」
「なぁに、がっくん」

匙を使って、プリンを食べさせてくれる。さすがスイーツ好きの二人のお眼鏡に叶ったプリン。濃厚、しっとり、本物の『Pudding』である。後からかけたカラメルソースも、とても美味しい

「ちょっと聞かせて。初めて会った日の歓迎会。あの時から、俺の膝に乗ったじゃない。レンも一緒だったけど。でも、先に乗ったのはリンだった。どして。普通さ、家族でもないのが来たら、警戒しそうじゃない。しっかも初対面は、あんな侍姿でさ」

紫の彼が聞いてくる。確かにそうか。普通、警戒するかもしれない。打ち解けるには、時間が掛かるのも当然だろう。プリンを味わいながら考える。でも、侍姿を観たわたし。完全な子供思考だもの『カッコイイお侍さん』と思った『綺麗な人だ』とさえ感じた。それに、わたしには確信があった。何故なら、初めに飛びかかっても、彼は無碍にあしらわなかった。あの日のわたし(チビ)を。考えを、揺るぎないものにした出来事は

「ん~と、覚えてるかなぁ、がっくん。あの日『待たせるわけにいかない』って言ってたコト。わたしのリボン、結んでくれたこと」
「ん、あ~あ、あった。早めに降りようって思ってさ。階段降りたら、リンが居たじゃない。ヤッチマッタかって思ったよ。後輩の俺が、先輩待たせちゃって」

そう、そんな細やかな気遣いができる人。あの日のわたし『わかんないや』と返してた。でも、どこかで、分かったのだろう

「優しい人じゃなきゃ、そんなこと考えない。そう思ったんだぁ。会ったばっかりの子供のさ『リボン結べる』なんてお願い。ちゃあんと聞いてくれる人。優しい人だ~って、すぐ分かった」
「あ、初めての日、そんなことあったんだ。オレが下に降りたら、既に懐いてたもんね。リンが殿に」
「初耳だ~。しかもおれ、一人だけ遅れちゃったもんね~がく兄~」

バツが悪そうなレン。着替えに、時間が掛かっていたのだろう。間違いない。何故なら

「あの辺りだったわね~。ようやく、レンが一人だけで着替えを始めたの。朝が弱い、夜が早いで、アタシが着替えさせてたものねぇ」
「甘えん坊だったもんね~レン。お風呂も―」
「めー姉もカイ兄もその話やめてぇぇぇぇぇ」

これが理由。恥ずかしい暴露を、これ以上されないよう、必死な片割れ。メンバーに、笑いのさざ波がおこる

「うふふ。でね、カイ兄より背が高い人観たの、あの日が、初めてだったんだ。今だって、がっくんが一番、背、高いもん。でね、この広くて大きな膝、乗ったら、どんな気分だろうなって。座ってみたら、すっごく気持ちよくって」

そう、凄く気持ちが良かった。いや、気持ちいいと言うのはちょっと違う。安心。安らぎ。ここは、わたしの場所なのだ。何故かそう感じた、彼の膝。でも、あの日のわたしには、それしか語彙がない

「あの日、そのまま船こぎ出しちゃったわね、二人とも。ふふっ、今リン位の歳なら照れも出ると思うのにねぇ。よっぽどお気に入りなのね、リン。神威君のお膝」

おかわりの焼酎をグラスに注ぐめー姉。隣のカイ兄にもたれかかる。兄もウォッカフロートを堪能している様子で

「『船』と言えば、殿。あの日のケンカの原因『船』だったよね。仕事終わって帰ってきたらさ。リンとレンが大げんかしてた日。家に入ったら、ミクが泣きながら走ってきてさ『タスケテ~』って」

その日のことは覚えている。でも、何故ケンカしたかは、よく覚えていない。身長だったか、おやつの取り分か、それとも、チャンネル争いか。些細なことで始まった大げんか

「あったなぁ。カイトと俺、メイコ、ルカで、仕事済ませて帰ってきた日だったな。ミクが大泣きで走ってきたじゃない『リンちゃんとレンくんが~』ってさ。帰ってこられたのが、不幸中の幸いだった」

言いながら、わたしの頭に手を置く彼。ぐい飲みの中身を含む