妖夢の朧な夢日記-aoi
扉の外へ
ヒトは何かしらに理由を付けたがる
生まれた瞬間から、全てに意味を求める
私のこの病気だって、治す為の理由に違いない
病気というものを建前にして、今の私をおかしいとする
けれど、私自身、おかしかったと思うのだ
来てくれた人妖の名前を、その来た瞬間で思い出せなかったのだから
以前はそうでもなかったのに、理由なくヒトに固執していたのだから
それは、こじつけなのかもしれない
それこそ、自分への暗示かもしれない
しかし、それ位の事しか思い当たる節がない
それ位の事でないと、彼女に会いに行く理由にはならないのだから
思い出せなかった、会いに来なかった
あと一人の仲人の顔と、名前
思い出せば何が変わるかは分からないが、
私がヒトに固執した理由が本当に彼女ならば
会ってみる意義はあるだろう、というのが自分で出した結論
友人だって言ってくれた。
"どうするかは妖夢の気持ち次第"って。
私は意を決して、この空間から出てみることにした。
安らぎと安心を与えてくれたこの空間から出て、
温かかった現の空間から出て、
幻想(ゆめ)に帰るのだ。
朝、日が昇るのと共に目を覚ました。
心はもう、身体はもう、結論を見出して落ち着いている。
かといって病気が治っている訳ではなく、
精神も安定はしていないから、些か不安なのだが。
「おはよう、妖夢。もう起きたのね」
友人が病室の扉を開けて、覗いてくる。
「ええ。今日はちょっと、外に会いたい人が出来て」
それを聞いた友人は、目を丸くする。薄々びっくりするだろうなと勘付いていたのだが、これまでのものとは。面白いけれど……そこまで塞ぎこんでいたの?私。
何だか、嘘!?妖夢が外に出るの!?嘘!?みたいな顔してる。なんとか飲み込んだみたいだけど……目に見えて病んでいたのだろう。不覚。
「そ、そう。外出ね。一応、後で師匠に許可を取っておこうかしら。身体に痛みがある訳ではないから、構わないのだろうけれど。何処に行くの?」
「紅魔館、かしらね」
「紅魔館!?あそこって湖の真ん中に浮かんでいるのよね。飛べる?付き添いましょうか?」
友人は私を案じているのだろう。しかし、彼女には仕事がある。今出ていって、後で溜まった仕事をやらされるのは彼女だろう、ならば。
「大丈夫よ。飛べなくなっていたって、当てがいるもの」
「そっか」
悲しそうに顔を伏せるのを見て、私は考えた。
「その代わり、一緒にご飯、食べてくれる?」
「喜んで!!」
彼女は満面の笑みを浮かべて、喜んだ。
作品名:妖夢の朧な夢日記-aoi 作家名:桜坂夢乃