妖夢の朧な夢日記-aoi
やがて現と成る
いつもの庭仕事の最中
庭の一部である川
その清流の付近に落ちた葉を拾っていた
落ち葉というモノは常日頃適度に落ちている
落としたままにすれば葉は地中で分解され、
次の生命を育てる為の糧となる
つまり、拾わなくても良いという訳だ
しかしここは死の地
終焉の地
育つ生命さえもありはしない
木も花も土も蝶も蟻も何もかも
そうなんだ
自分自身、それ以外は生きていない
水でさえも
育てる水でさえも、死んでいる
故に、孤独だ
死の地で半分生きて半分死んで
半分死んでも死にはしない
死んでも生きているようなものだ
だから、だろうか
自分以外の生命に、敏感になるのは
この世界に入ってきた命―
―川の中流で、傷ついた烏が溺れていたのだ
落ち葉から目を離した先、直線状
羽を毟られた烏が、何かを訴えるかのようにこちらを見つめ
水面に浮いた羽根が、痛々しく見えて
飛ぶことのできない烏が
仲間から見捨てられて、独りで
その烏を抱き上げた
川の中に落ちないよう、自らの半身もどうにか利用して
腕で抱えた
烏は、彼女は暴れなかった
安堵したか、咽び泣いていた
ようやく、私の声が、届いたのね
そう言って―
障子の隙間から差し込んだ光で目を覚ます
烏には、どこか見覚えがあった
烏はただの烏ではなかった
彼女、だったのだ
隣で寝息を立てて眠る、彼女だったのだ
黒い羽を毟られ、涙を流しながら
濡れたままの羽根が
濡れたままの衣服が
妙に記憶と一致して
―これは
これは、
これは、なんなんだ
作品名:妖夢の朧な夢日記-aoi 作家名:桜坂夢乃