妖夢の朧な夢日記-aoi
闇を抱きながら
緑色が、揺らぐ
悲しいのか寂しいのか
思いつめているのか
歪な目の形をしていたという
そんな事実しか認識できぬままに
そも、瞼の形さえ見えない
ただ、その瞳が潤んでいるだけ
恋しいのか愛しいのか
誰かを望んでいるのか
しかし、ここに緑色の目以外の姿は見えない
暗闇の中で光る双眸
どうにかしてその姿を目視することができないだろうか
灯りを探す
明かりを探す
しかし、スイッチはどこにも存在しない
壁すらない
動いても動いても、目の前には宝石のように輝く二つ
刃のように尖って
命火を絶ってしまいそうな、諸刃の剣
誰かを傷つける度に、あなたも傷ついていく
この暗さはただの暗さじゃない
あなたの、心の奥
どうしろと言うのだろうか
見知らぬあなたの精神
その奥深く、底に侵入するようなことをして
赦されるのだろうか
そも、侵入して良いのだろうか
許されるのだろうか
それでも、目の前のあなたが
緑色の眼が
孤独に打ちひしがれた眼差しが
己の心を打ち貫いてくる
的確に、苦しみそうな所を
恐怖でしかないあなたは、何を望んでいるのだろうか
物言わぬ口からは、何も分からない
もし、受け入れられることを望んでいたのならば
受け入れられる人を妬んでいたのなら
ああ、そうだ
自身がされたように、受け入れればいい
―まだ自分の事を、受け入れてはいないけれど―
そっと、手を伸ばす
包み込むようにして、腕を回す
体があった
体温が伝わってくる
温かくて、なんだか、眠ってしまいそうな―
主の呼びかけで、顔を上げた
どういった訳か、業務中に居眠りをしていた
けれど、どこか良い思いをしたような気がする
しかし、気がするだけ
眠ってしまった事に気づくと、自責の念に駆られる
―そうだ、妖夢。私、温泉饅頭が食べたいの。
5日程休みを与えるわ。ゆっくりしていきなさい。
そんな事を言って、主は微笑む
疲れているのよ、貴女……
遠回しにそう言われたと思って、
確かにそうかもしれない、なんて考える
これ以上無理をして、主に心配させる訳にはいかない
行こう、地底へ
作品名:妖夢の朧な夢日記-aoi 作家名:桜坂夢乃