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We belong to earth.

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ギュネイも足をつき、アムロの背中のついた砂を払いながら怪我の有無を確認する。
「大丈夫だよ、ギュネイ。俺、どれ位意識を失ってた?」
「数十秒程です。本当に大丈夫ですか?戻ったらきちんと検査しましょう」
尚も心配気に見つめるギュネイにアムロが微笑む。
「大した事ないよ」
「しかし!」
「ははは、ギュネイは心配性だな。本当に大丈夫だから」
「大尉!」
「ごめん、ごめん。いつもありがとな、ギュネイ」
ギュネイを見つめて微笑むアムロに、何故かドキリとする。
「大尉?」
「おじさん、ごめんなさい!わーん」
すると、腕の中の子供がアムロの無事に安心したのか突然泣き出してしまう。
「ああ、びっくりしたね。君こそ大丈夫かい?怪我は?」
アムロは子供に怪我が無いか確認しながら顔を覗き込む。
涙をポロポロ流す顔を見て、そっとその涙を拭ってやる。
にっこり微笑むアムロを見つめ、子供はようやく安心したのか、アムロにぎゅっと抱きついた。
「おじさん~!」
そんな子供をアムロも優しく抱きしめる。
「ふふ、大丈夫だよ」
何年振りかに抱き締める我が子の温もりに、アムロの瞳にも涙が滲む。
体温の高い、小さな背中。
前に抱いた時はまだまだ赤ん坊で、すっぽりと腕の中に収まっていたのに、今は手足が腕の中からはみ出る程になった。
片言しか喋れなかった言葉も、今ではこんなにもおしゃべりで、離れていた数年でこんなにも成長をした我が子に愛しさが込み上げる。
そして、こんな子供を自分は捨てたのだの思うと胸が苦しくなった。
すまないという想いを込めて、強く抱き締める。
「ごめんな…」
ボソリと呟くアムロに、子供がキョトンとした顔を向ける。
「どうしておじさんが謝るの?」
その問いに、哀しげに微笑むとアムロはもう一度子供を抱きしめた。
「…君に…悲しい想いをさせてしまったから…」
そっと耳元で囁くアムロに、側にいたギュネイがアムロの想いを察する。
「僕はおじさんが大丈夫なら悲しく無いよ?おじさんはどこか痛いところ無い?」
自分を心配してくれる子供に、アムロの瞳から涙が溢れる。
「おじさん!どっか痛いの?痛いところ僕がなでなでしてあげる!」
その言葉に、アムロが涙を零しながらも笑顔を向ける。
「どこも痛く無いけど…頭を撫ぜて欲しいな、ダメかい?」
「良いよ!」
子供はアムロの頭に手を伸ばすと優しく頭を撫でる。そして、その柔らかい癖毛の感触に、クスクスと笑い出す。
「前も思ったけど、おじさんの髪は僕と同んなじだね。赤茶色でクリクリしてる。僕の死んじゃったお父さんもこんな髪だったのかな?ママはサラサラの金髪だもん」
アムロはピクリと肩を揺らすが、動揺を悟られないように「そうか…」と答える。
「そういえば、君のお養父さんは?近くに居るんだろう?君に怪我をさせてしまった。謝らなければ…」
そう言ってアムロが周囲の気配を探る。
すると、横からそっと父親が現れアムロに声を掛ける。
「ここに…」
アムロは声のする方へと顔を向ける。
「すみません、息子さんに怪我をさせてしまった」
「とんでもない、こちらこそ息子を助けて頂きありがとうござます」
父親は子供をアムロの膝の上から立たせると、アムロの手を取って立ち上がるのを助ける。
「すみません、ありがとうございます」
アムロは立ち上がるが、左足に上手く力が入らずフラつき、それをギュネイが咄嗟に支える。
「おじさん!足を怪我したの!?」
力の入らない左足そっと触れると、アムロが優しく微笑む。
「違うよ、こっちの足は前に大怪我してね」
「痛いの?」
「怪我自体は治ってるから痛くはないよ。ただ、まだちょっと思うように動かないんだ」
アムロの言葉に、父親が少し悲しい顔をする。
おそらくアムロの素性を知っているのだろう。かつてのパイロットとしてのアムロを知る者が今の姿を見れば、二度とモビルスーツには乗れないであろう彼に同情を感じるのは当然の事だ。
ギュネイは父親を見てそんな事を思いながらも、先程から少しアムロに違和感を感じている。
『なんだ?何か変だ』

「息子と遊んで頂いてありがとうございました」
「いえ、こちらこそ楽しい時を過ごさせて貰いました」
アムロが握手を求めて父親に手を差し出す。
その手を、父親がギュッと握り返す。
「この子は妻の連れ子なんですが、自分の子供だと思って大切に育てて行きたいと思っています」
父親のその言葉と、手から伝わる誠実な想いに、この人ならばこの子とベルトーチカを幸せにしてくれるだろうと思う。
「そうですか…。この子も、さっき話していた時に、あなたの事がとても好きだと言っていましたので、きっと本当の家族以上に素晴らしい家族になれますよ」
微笑むアムロに、父親がそっと頭を下げる。
「ありがとうございます(アムロ大尉)」
最後の言葉は口には出さなかったが、アムロの心には聞こえてきた。
おそらく彼はカラバのメンバーだったのだろう。自分は覚えが無いが、面識があったのかもしれない。
「大尉、そろそろ…」
ギュネイの声に、アムロが頷く。
「それでは、私はそろそろ戻らなければいけないので…。良い旅を…」
「おじさん!行っちゃうの?」
縋り付く子供の頭をアムロがそっと撫ぜる。
「ああ、もう家に帰らないと」
「また会える?」
「ん…そうだね。ああ、そうだ。いつか君が操縦するシャトルに乗せてくれるんだろう?」
「うん!」
「俺はこのコロニーに居るから、その時はよろしくな」
「わかった!」
その返事に微笑むと、アムロは二人に別れを告げて公園を後にした。

しばらく歩いて、シャアやベルトーチカの待つエレカの元まで来ると、シャアが待ちきれないといった様子でエレカから飛び出してきてアムロを抱き締める。
「ちょっ!シャア!無闇に出てきちゃダメだろう、貴方自分の立場ってものを…」
と、言い掛けて、シャアの手が微かに震えている事に気づく。
そんなシャアを安心させるように、その大きな背中に手を回して優しく撫でる。
「心配するなよ。約束しただろ、ずっと傍に居るって」
「ちょっと!貴方達!私が居る目の前でイチャつかないでちょうだい!」
そんな二人をベルトーチカが間に入って引き離す。
「何をする!ベルトーチカ・イルマ!」
「ベル…ごめん!」
そして今度はベルトーチカがアムロに抱きつく。
「ベル!?」
「おいっ!私のアムロから離れろ!」
大人気ないシャアをナナイが諌めると、アムロがベルトーチカをそっと抱きしめ返す。
「ベル、ありがとう…」
「良い子でしょう?」
「ああ、良い子に育ててくれてありがとう…。それから…本当にごめん…」
シャアに対する想いを抑えられず、幼いあの子とベルトーチカをおいて宇宙に上がった。自分はなんて薄情で身勝手な男なんだろうと己を責める。
しかし…何度考えても、何度選択を迫られても、それでもやはり自分はシャアを選んでしまう。恐ろしく身勝手で傲慢な自分。
そんな自分のせいで、あの子やベルトーチカに辛い想いをさせてしまった。
片親の辛さを誰よりも知っていたのに…。
アムロはもう一度、ギュッとベルトーチカを抱き締める。
「ごめん…」
アムロのその言葉に、ベルトーチカがぐっと腕を伸ばしてアムロの腕を解く。
作品名:We belong to earth. 作家名:koyuho