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第三部8(108) 覚醒

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「ライト…つけないで」
― ガリガリに痩せてて…恥ずかしいから…。

情熱のひと時の後、アレクセイの腕の中でユリウスが消え入りそうな声で呟く。

カーテンの隙間から射しこむ月の光のみの柔らかな闇夜の中で、妻の白い身体と金の髪は自ら発光しているように柔らかに輝いている。
ミモザ薫るミュンヘンのあの邸で―、少女の頃の彼女を初めて抱いた時と同じように。

「細いけど…柔らかくて、綺麗だ」

そう言ってアレクセイが後ろから妻を抱きしめ、白い首筋から背中に唇を滑らせる。

ユリウスの身体を自分の方へ向けさせ、顔を引き寄せる。

「髪、切っちゃったのか…」

少し残念そうにユリウスの頭を大きな手でくしゃくしゃとかき回す。

「今頃気づいたの?遅いよ!」

髪をかき回されたユリウスが少女のようにプウっと頬を膨らませて夫を睨んでみせる。

「はは…悪かった悪かった。…お前、生活のために髪を売ったんだよな…。本当に済まなかった」

アレクセイの長い指がユリウスの髪に絡んですっと梳き通し、その指はそのまま滑らかな頬を撫でる。

そんな夫の胸にユリウスは小さな金の頭をすり寄せると

「気にしてないよ。…髪なんてすぐ伸びるもの」

と小さく呟いた。

「そうか…」

二人が固く抱き合い、そっと唇を合わせた。

作品名:第三部8(108) 覚醒 作家名:orangelatte