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MEMORY 序章

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「そう。で、この子達が浦原さんから貰ったペンダント『晶露明夜』に宿る『瑠璃月』と『碧星』と『金紗』。瑠璃月、碧星、金紗。浦原さんは貴方達と私を出会わせてくれた人なんだから、小さな事で一々睨まないの。」
『『『はぁい。』』』
「素直で可愛い子達ッスね。」

 うんうんと頷く浦原の言動に揶揄いを感じて顔を顰める碧星に、瑠璃月と金紗が宥めているのを見て、一護は溜息を吐いた。
 晶露明夜とはペンダントの名称ではない。ペンダントに宿る力の名称だ。三人の話に因ると、一護の霊力は大きくてコントロールが難しいという。瑠璃月の風“旋風”と、碧星の共鳴“木魂”と、金紗の包囲・凝縮“晶露”があり、本来は同時に行使出来る能力だが、一護の霊力が大き過ぎて調整する必要がある為、一つずつ若しくは威力を弱めて二つの能力を使うのが精一杯だという。
 三人の話を聞いた一護は暫く考え込んだ。考え込んだが結局深い溜息を吐いた。

「ん~。晶露明夜を使い熟すにも、浦原さん相手に練習するしかないわけだけど、まともに剣を交える力もない今の私じゃ、使えないって事、になるねぇ。」

 困惑頻りの一護を眺めていた浦原は、くすりと笑って口を開いた。

「今日はもう時間がないッスけど、週末から此処で剣の修行もしましょうかね。」

 浦原の言葉に一護は目を瞠る。

「場所提供して貰ってるのに、これ以上、相手までして貰って良いの?」
「構わないッスよ。黒崎サンは最低限の基本は習得済みだ。あとは数を熟して馴れていくだけッス。お付き合いしましょ。」
「わっ……。」

 一護は思わず浦原に抱き着く。

「ありがとう、浦原さん!」
「おっ、と。」

 不意を突いて勢いよく跳び付かれて、流石に浦原も驚いたが、一護の華奢な体が飛び付いたくらいでは小動もしない。

「そろそろ上に上がらないと門限に遅れますよン。」
「あっ! いっけねっ!」

 一護は晶露明夜の刀を一振りで空間に溶け込ませるように消して、慌てて梯子に取り付いた。季節柄、黒崎家の門限までは外も何とか明るいが、浦原商店から自宅までの間には幾つかの辻があり、中には逢魔が時には通りたくない場所もある。浦原商店近くと自宅近くはそういった辻がないので、遠回りすれば済む事なのだが、そうすると時間が懸かるのだ。この地下に降りる梯子は随分深くまで下りるので、登るとなるとどうしても時間が懸かる。家に帰るには制服に着替えなければならないから、その時間も必要だ。

「ふぇ~ん。門限破る時は浦原さんに送って貰わなきゃならないんだよぉ。」

 必死で梯子を登りながら、一護が半泣きでぶつぶつ呟くのを、浦原はくすくす笑いながら聞いていた。
 初めての地下勉強部屋からの脱出は時間が懸かり、地上に出るまでに到底門限に間に合わない時間になってしまった一護は、電話を借りて門限に間に合わない連絡を入れた。地下から上がってきた浦原が、目の前に突き出された電話を受け取ると、電話の相手の一心は、一護を家まで送り届けるように言ってきた。
 一護が浦原に送って貰うのは初めての事ではない。一護の誕生日当日、常もより早い門限を告げていなかった為に、雨とジン太に引き留められて門限を過ぎてしまい、一心の命令で浦原は一護を送って行ったのだ。
 一護は逢魔が時に通りたくない辻を、浦原に送られて初めて、嫌な感覚なしに歩く事が出来た。浦原が、自分と一護の周りに歩く速度に合わせて移動する結界を張っていたのだ。
 今日は浦原は初めから一護を送る心算でいた。地下勉強部屋を造った事と、一護の持つ能力について一心に報告する義務があると思ったからだ。
 毎朝のジョギングの成果なのか、一護は歩くのが速い。浦原が普通に速く歩いても、息を荒げる事もなく遅れずに付いてくる。が、擦れ違う他人の気配を気にしている。

「黒崎サンはアタシと歩いてるの、他人に見られるのは嫌ッスか?」
「私、制服だし。浦原さん、髭剃ってないと見た目中年のおじさんだから、間違うと女子中学生と不審者に見えるよ?」
「ま、ひどいっ! こんなハンサム捕まえて。」
「その恰好が浦原さんのハンサム度を半減させてると思うんだけど?」
「駄目ッスか?」
「似合ってるところが凄いというか、怖いというか………。」

 溜息を吐く一護に、浦原がきょとんとする。

「浦原さんて、服に自分を合わせる人?」
「………面白い言い方ッスねぇ。」

 浦原も最近漸く子供の鋭い言動が、見透かすという類ではなく、感じる儘に言葉にしている結果だと感じられるようになってきた。読み取っているのではなく、感じ取っている事を素直に言葉にしているだけらしい。
 一護は、物事の本質や事実を感じ取る感受性を持ち合わせているようだ。
 浦原に対する信頼は、どうもそこから来ているらしい。浦原自身は、一護を懐までは入れていないのだが、一護の方は浦原も含めて浦原商店の者達を懐に入れてしまったようだ。



作品名:MEMORY 序章 作家名:亜梨沙