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MEMORY 尸魂界篇

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「出来るか、じゃない。するんだよ。言ってんだろ。ルキアに掛けられた罪科そのものが言い掛かりなんだ。」

 強い瞳で真っ直ぐ見つめる一護に、岩鷲も花太郎も言葉を呑んだ。
 夜一も考え込むように下を向いたが、溜息を吐いて顔を上げる。

「確かに一護の言う通りじゃの。では、儂は石田に伝言を伝えてくるとしようかの。」
「頼む、夜一さん。それとこれ、預かってて。」

 一護は懐から取り出した巾着袋を夜一の首に掛ける。

「なんじゃ?」
「大事な預かり物だから、絶対失くさないでくれな? 夜一さんが一番信頼できるからさ。」

 一護は夜一を見送ると、深く息を吐いて呼吸を整えて立ち上がった。

「花太郎。地下水路で叶う限り双殛の丘の近くまで行っとけ。」
「一護さん。」
「私の事は心配要らない。(生きてさえいれば)夜一さんが来てくれるから。」
「……一護さん? 今、言葉呑みませんでした?」
「? そう?」

 見掛けに拠らず鋭い花太郎に、内心ではどきりとしながらも、持ち前の無表情で躱した。
 花太郎と岩鷲が地下水路を進み姿が見えなくなると、一護は漸く地上に出て懺罪宮を見上げた。
 一角から更木剣八に情報が届き、懺罪宮への通路で待ち構えている事だろう。一護は静かに歩いて階段を上がっていく。一護少年は剣八が待っている事など知らず、一刻も早くルキアの元へ辿り着こうと走っていた。その上で剣八から逃げ回った時間があるから、歩いて階段を上がっても帳尻が合うだろう。
 上の段まで上がりきると、いきなり超重量級の霊圧が、一護目掛けて押し寄せてきた。
 昨日、恋次が負けたにも拘らず、一人の警備の姿もない理由が思い知らされた気がする。
 これでは平隊員などいても、剣八の霊圧に潰されて使い物にならなくなるのがオチだという事なのだろう。

「この超重量霊圧で殺気なんぞ向けられたら堪らんなぁ。」

 嗤うしかない、という心境の儘に声を漏らす一護の耳元に「オマエか?」と声が届く。

「! 恐怖映画より怖いね、こりゃ。」

 軽口を叩いてみるものの、体が震えないようにするのが精一杯だ。
 この時点では高い位置にいた筈、と思い出し見上げた一護の視界に大柄な男の姿が映った。

「いつまでそっちを見てやがんだ?」

 目の前に降りてきた剣八の姿を認めて、一護はぱちくりと瞬きを繰り返した。

「何を頓狂な表情をしてやがる。」
「ああ。………なるほどねぇ。一角が『ウチの隊長の強さを理解出来るまでオメェが生きてられりゃあ判る』って言ってたわけだよなぁ。」
「あん?」

 訝しそうに声を出す剣八に、一護は深く息を吐いた。

「あ~。少し霊圧散らしてくれねぇ? 身構えてなかったから、霊圧で息が詰まりそうなんだよなぁ。」
「知るか。」
「そーだよ。きちんと喋れてるじゃん。」

 肩に乗ってきた草鹿やちるに、一護は咄嗟にその足首を掴んでいた。

「やぁん。」
「頭でも踏まれたらやだからな。良い子にしてな。」
「キャハ、怒られちった。」
「別に怒ってないだろ。女の子なんだからお行儀よくしてな、って言ってんの。折角可愛いんだから勿体ないぞ。」
「アタシ、可愛い?」
「お前さんが可愛くなかったら可愛いの基準は崩壊してるな。」
「えへへ。」
「おい、やちるに胡麻擦ったって手加減なんぞしてやらねぇぞ。」
「あ………。」

 剣八の不機嫌そうな声に、一護は初めて気付いたという表情をする。

「ああ、悪い。おっかない顔より可愛い顔見てる方が精神衛生上…。」
「るせぇぞ。さっさとおっぱじめようぜ。」
「名乗るくらいはしてくれねぇ?」
「ん。ああ。俺は更木剣八だ。」
「アタシは草鹿やちるだよ。」

 一護の足元に立ったやちるが見上げて声を掛けて来るのに、一護はくすりと優しく笑う。

「黒崎一護だ。」
「一角から聞いてるぜ。」
「どうせ、過大評価だろ。」
「そうかぁ? 一角相手にして掠り傷一つ負ってねぇっていうじゃねぇか。」
「あれは一角が嘗めて掛かってたからだ。」
「じゃあ、俺は精々嘗めて掛からねぇようにするぜ。それでもハンデはくれてやる。」

 言って、剣八は一護の前に開けた胸元を晒した。

「斬ってみな。」
「!」

 一護は顔を顰めた。
 始解もしていない霊圧でこの超重量。
 始解もせずに隊長の卍解を相手取れる剣八に、ハンデを貰う事を恥と思うほど、一護は戦闘が好きなわけではない。

「ありがたくハンデ頂いておくさ。」

 一護は言ってにやりと口元だけで笑うと、浅打ちを抜いて突き出すように構える。

「走れ、斬月!」

 小さく霊圧が爆発して、浅打ちが身の丈ほどの大型の出刃包丁に変わる。

「ほう? それがテメェの始解ってヤツか。」
「………。」
「ほら、斬り付けて来いよ。」

 一護は心を落ち着けて、昨日刃禅を組んで斬魄刀達と行った修行の成果を出そうと呼吸を整える。

(早速本番行くぞ。手ぇ貸してくれ。)
『なんだぁ? いきなりやるのかぁ?』
(今の私の霊圧じゃ、月牙放散撃っても意味がない。)
『けっ、情けねぇ事言いやがって。先に斬らせてやるっつってんだ。接近して撃ちゃ良いじゃねぇか。』

 一護は天鎖に言われる儘に接近して、剣先を剣八の胸に当てて円を描くようになぞる。

「?」
「………月牙放散。」

 一護が静かに、だが鋭く呟き、剣先から放たれた霊圧の刃が、直接剣八の胸を切り裂く。
 月牙放散の凝縮された小さな刃が一斉に剣八の胸を切り裂き、全身に散る。

「!」
「ああ、失礼。『斬り付けて良い』だったな。『切り裂いて良い』じゃなかった。」
「面白れぇ事すんじゃねぇか。」

 言って、剣八も反撃するように剣を揮った。
 が、一護が霊圧で張った鎧に弾かれる。

「面白れぇ事してんじゃねぇか。」
「あんたの真似しただけだ。」

 一護は静かに言って、霊圧を上昇させていく。
 一護の霊圧が上がる様子に、剣八の口元が嬉しそうににやりと笑う。
 一護は不快そうに眉を顰めると、月牙弾道を唱えながら斬月を揮う。
 剣を揮う一護の腕が一瞬停まる位置で、剣先から凝縮された霊圧が放たれる。
 月牙放散で浅い傷しか負わなかった剣八は、敢えて一護の二撃目を避けずにおいた。
 結果、一護の月牙弾道は鎖結と魂睡の脇を掠めて、剣八の大きな体を貫いた。
 血飛沫が上がる。
 剣八は嬉しそうに嗤い、一護は眉を顰めて返り血を避ける。
 戦いを楽しむ剣八の様子は、今の一護には有り難くない物の筆頭だ。
 戦いに注がれる剣八の情熱は狂気染みている。

「あんたは戦う為に生きているんだな。」
「おう。これほど楽しい事が他にあるかよ。」
「私は生きる為に戦ってんだよ。」
「戦う事には変わりねぇだろ。楽しもうぜ、テメェも楽しめるだけ強ぇんだからよ。」
「ごめんだっつの!」

 叫ぶ勢いに載せて霊圧を上げる。

「オマエ相手なら、久し振りに全力でやれるな。」

 嬉しそうに唇を歪める剣八の嗤いは舌なめずりせんばかりだ。
 一護は、剣八が右目の眼帯を外す心算だと気付いて、眉間の皴を深くする。

(斬月、天鎖、奴の力が何倍にも跳ね上がる。私の霊力持ってけ。そして二人の力を貸せ。)
『よかろう。』
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙