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MEMORY 尸魂界篇

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 双殛の丘で、一護が白哉と死闘を始めた頃、瀞霊廷のあちらこちらで、大きな霊圧の持ち主達が死力を尽くし始めていた。

 既に決着の着いた組み合わせも中にはあるが。
 その一つである綾瀬川弓親は、檜佐木修兵から奪った霊力で我が身を潤わせてご機嫌になっている。

 第三市街跡で展開されてしまった山本元柳斎重國と、浮竹・京樂との対峙を察知した狛村左陣は、更木剣八との勝負をさっさと投げ出してそちらへ向かった。勝負を途中で放り出されてしまった更木剣八は、不完全燃焼で不満を抱えて座り込んでいる。

 弓親から逃げ出した檜佐木が荒げた呼吸を整えていたのが第三市街跡の近くだった為、山本総隊長の凄まじい霊圧を感じて顔色を変えた。

 虎徹清音を嬲っていたところを夜一に連れ去られた砕蜂は、百年の間に隠密機動総司令官の地位を得た己がその地位を捨てた夜一を越えたと自負し、嘗て憧れの的だった夜一に戦いを仕掛けた。百年の鍛錬を経ても越えられぬ差に、置いて行かれた寂しさが顔を覗かせて、砕蜂の心を挫いた。

 双殛の丘を見渡せる場所では、班目一角が、射場鉄左衛門と勝負を繰り返している。こちらは酒を取りに行く役目を賭けて楽しんでいるだけである。

「……さっきから気になっとるんじゃが……双殛んとこで朽木隊長と戦り合うとるんは誰かいの? 知らん霊圧じゃが……。」

 射場の疑問に、一角は瞬間答えようか迷ったが、彼ならば構うまい、と思い答えを返した。

「………。…多分、一護だ。」
「十一番隊の奴らか?」

 見当外れな答えが返り、一角の口調が荒くなる。

「なんで十一番隊の奴が朽木隊長と戦ってんだよ。旅禍だ旅禍!! 俺ァ一回戦ったから知ってんだよ!」

 一護の強さに心躍らせている射場に、一角は射場の本質は十一番隊向きだと改めて思う。

 双殛の丘では、完膚無きまでに力の差を見せ付けて叩き潰す為により効果的な形を模索して、白哉が一護の力量を測っていた。
 剣技を測り、瞬歩を測り、霊圧を測る。
 始解状態を保っているとはいえ、技の一つも見せず、白哉の攻撃に対して防いでいるだけの一護から何を測れると思っているのか。

「いくら隊長だからって、始解もせずに私を斬れると、本気で思っているのか?」

 白哉の剣を片手で構えた斬月で受け留めながら、一護は静かに問う。

「あんたは現世の生き人に過ぎない私が、尸魂界について、瀞霊廷について、護廷十三隊について、何も知らないとでも思っているのか?」

 一護は白哉の霊圧の微かな変化を読み取りながら口を開く。

「『千本桜』というんだったな、あんたの斬魄刀は。」
「………。」
「桜吹雪のような美しさとその陰に隠れた残酷で強靭な刃。意味も知らずに挑んでいるなどと考えるのは、あんたの傲慢だ。」
「この私に向かって、傲慢というか。」
「ああ、言うね。いくらでも言ってやる。真実を見る力を持ちながら見ようとせずに、義理とはいえ妹の命を己の手で奪うなんぞとほざく男が、傲慢でなくて何だ。」
「安い挑発だ。折角拾った命、そんなに捨てたいか。ならば見せてやろう。貴様の瞳に映る最後の光景が、私の千本桜である事を光栄に思うが良い。」

 白哉が正眼に構えて解号を唱える。

「散れ、『千本桜』。」

 渦を巻きながら一護に迫る刃の渦を、一護は眼を眇めて眺めると、斬魄刀を正面に向けてするりと円を描く。

「『月牙放散』。」

 一護が小さく呟くと、斬月の剣先から放射状に金色の霊圧の刃が飛び散り、千本桜の刃が悉く切り裂かれる。千本桜の刃を切り裂いて進んだ刃は、白哉の銀白風花紗(ぎんぱくかざはなのうすぎぬ)を切り裂く。一枚で瀞霊廷内に屋敷が10軒建つほど高価なものだったという記憶が、一護に微かに眉を顰めさせた。

「今の光は何だ。貴様の斬魄刀の能力か……? 黒崎一護……!」
「……そうだ。ほんの一部だがな。斬撃の瞬間に、私の霊圧を喰って、刃先から超高密度の霊圧を斬撃として飛ばす。大きさも数も形も私の思いの儘。それが斬月の能力だ。」

 大きさも数も形も自由自在、と一護は言った。
 巨大な斬撃も飛ばせると言外に告げているのか。
 それとも只のハッタリか。
 否。
 見た事もないからと龍を大蛇と間違えて吠え掛かる子犬など取るに足りぬ。大蛇と侮って吠え掛かるなら、その小さな体をないと思っている足で踏み付けてくれよう。

「始解を退けたくらいで勝った気になるなよ、小僧。」
「当たり前だ。隊長になる為の条件は卍解修得だろうが。到達しただけで歴史に名を残せる卍解が、始解如きでどうにかなると思うほど物知らずじゃないぞ。」
「ならば貴様は只の命知らずか。」
「はっ! 卍解に到達している事は、ルキアを殺そうとするあんたの誇りの一部らしいからな。私はあんたの誇りとやらを踏み躙る。兄であるあんたの口から、二度とルキアを殺すなんぞと言わせたりするか!」
「……思い上がるなよ、小僧。」

 静かに白哉の霊圧が上がる。
 一護はタイミングを計る為に集中する。

「…よかろう。それほど強く望むなら、私の卍解、その眼に強く刻むが良い。」

 高く掲げた白哉の手から斬魄刀が滑り落ちて地面に向かう。

「案ずるな。後悔などさせぬ。その前に貴様は、私の前から、塵となって消え失せる。」

 地面から巨大な斬魄刀が何本も現れる。
 一護は巨大さに驚く事もなく、静かに急激に霊圧を上げる。

「卍解、『千本桜景厳』

 白哉が唱えると共に、数億にも及ぶ刃が一護目掛けて走る。
 一護は慌ても怯えもせずに、溜めていた霊圧を解き放つ。

「卍解。」

 一護の呟きと共に、急激に高まった霊圧が一護を包み、凝縮し、爆発する。
 驚愕に目を瞠る白哉の視界で、爆発により数億の千本桜の刃が吹き飛ばされる。

「数億にも及ぶ刃による死角皆無の完全な全方位攻撃。」

 一護の声で、千本桜の真髄を示す言葉が届く。
 爆発により舞い上がっていた土埃が晴れた其処には、血のような赤で裏打ちされ裾が長く細身の体に沿った黒い服を纏い、手に漆黒の細身の刀を持った一護が立っていた。

「それが千本桜の真髄、だろう?」

 掠り傷一つ負わない儘其処に立つ一護に、白哉は目を瞠る。

「教えといてやるよ。私の卍解は『天鎖斬月』っての。」
「ー何だ、……それは。そのような矮小なものが…卍解…だと…?」

 白哉の目に映るのは鍔が卍を象った漆黒の細い刀。

「…成程…殛刑といい、卍解といい、貴様は余程我々の誇りを踏み躙るのを好むと見える……!」

 一護の卍解を矮小な物と莫迦にしたような物言いをする白哉に、一護の方が驚いた。膨大な霊圧を極限まで圧縮して刀の形に収める事が出来るのは、隊長格ならではの力量だ。大きさを誇りと言ってのけた白哉は、卍解の真髄を掴んではいないという事に他ならない。

「ならばその身に刻んでやろう! 誇りを穢すという事が、どういう報いを受けるのかという事をな!!」

 宣言した次の瞬間、白哉の喉元に漆黒の刀の刃先が突き付けられる。
 刹那、反応出来なかった自分に、白哉が驚愕していると、一護が刀を引いた。

「余裕の心算か。…驕りは勝利の足許を突き崩すぞ。」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙