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MEMORY 尸魂界篇

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 年長者としての在り様なのか、白哉は斬って捨てると言っている相手にすら諭すような物言いをする。これが隊長という職務に就く者の心得だろうか。

「…もう一度言おう。」

 厳かに神託を告げる巫女の様に威厳を籠めて白哉が宣言する。

「貴様のそれは卍解ではない。そんな矮小な卍解などありはしない。旅禍風情が卍解に至る事などありはしない。」

 白哉本人は厳かに事実を告げいている心算なのだろう宣言は、一護の耳には滑稽に聞こえる。事実を見極めようともせずに前例に照らし合わせるだけで物事を決め付ける。数百年停滞した時間を生きる死神の、これが実態なのだろう。

「…悔いるが良い。今の一撃で私の喉を裂かなかった事をな。…奇跡は一度だ。二度はないぞ、小僧!!」

 千本桜景厳が一護を追う。
 白哉の視線が一護を追い掛ける事で数億の刃が一護を襲う事を識る一護は、縦横無尽に走り回り、時折接近しては斬り掛かる。千本桜には“無傷圏”がある筈だ。無意識でも有効なのか、測りながら、一護は少しずつスピードを上げていく。
 白哉は卍解を習得して五十年以上。片や一護は卍解を習得して僅かに十日余りでしかない。修練の時間が圧倒的に及ばない。白哉は未だ視線だけで千本桜を操っている。
 この儘追い掛けっこをしていても月牙天衝を撃つ隙も掴めない。
 無駄に霊力を消耗するのは得策ではないと考えた一護は、白哉を挑発する為に一気に駆け出す。
 霊圧の鎧を纏いながら駆け抜ける一護を白哉は視線だけで追いきれなくなり、掌を拡げて千本桜を操る。スピードが二倍になった事でそれを感じた一護は、高く跳び上がり全方位からの千本桜の攻撃を誘う。
 白哉が捉えた!と思った次の瞬間には、数億の千本桜の刃は悉く一護に叩き落された。信じ難い光景に、戦いの中にありながら白哉は茫然とした。

「奇跡は一度、だったよな。」

 背後から聞こえた声にハッとする。

「じゃあ、二度目は何だ?」

 白哉が一護の剣を掴んで矛先を変える。

「…そうか…卍解としての戦力の全てを、その小さな形に凝縮する事で、卍解最大戦力での超速移動を可能にした…それこそが貴様の卍解の能力というわけか…。良かろう…ならばその力ごと……。」

 白哉の声が激昂する。

「全て圧し潰してくれる!!!」

 一護は冷めた目を向けて口を開く。

「へぇ。少なくともこの矮小な形の斬魄刀を、四大貴族の筆頭・朽木家のご当主様は、卍解だとお認め下さるわけだ?」
「!」

 己の言葉を覆した事に白哉が一瞬力を抜いた隙に、一護は刀を引き抜く。

「自分の知識の範疇にない事実を前に、一々誇りを穢されたのなんのとほざく程度の誇りなら、始めから持つな!! 月牙天衝!!」

 一護は至近距離から白哉に向けて月牙天衝を放つ。
 至近距離である為軽く振った程度だが、一護が上げた霊圧を喰った天鎖斬月は、小さい分超高密度な霊圧の刃を放つ。
 無傷圏であった為に千本桜の刃は白哉の身を護れはしなかった。

「!」

 白哉を傷付けても、一護の眼は冷静な儘だ。何の感情の動きも見せない一護の眼は、本当に現世の子供の眼かと疑いたくなるほど静かだ。
 その静かさが、白哉の怒りを煽る。

「月牙天衝……だと……天を衝く、か…大それた名だ…。」

 超速戦闘だけでなく、始解の能力を微塵も損なわずに使える。それも始解の時には小さかった霊圧の刃の規模が桁違いになる兆しが見える。

「…見るがいい…黒崎一護。これが、防御を捨て、敵を倒す事だけに全てを捧げた千本桜の、真の姿だ。」

 白哉が唱えると周囲に縒っていた数億の刃が集約されていく。

「殲景・千本桜景厳。」

 千本の刀がぐるりと囲み結界を作る。

「案ずるな。この千本の刃の葬列が、一度に貴様を襲う事はない。この『殲景』は、私が必ず自らの手で、斬ると誓った者にのみ見せる姿。見るのは貴様で二人目だ。」
「…そりゃどうも。」
「行くぞ、黒崎一護。」

 身の内に溜め込んだ霊圧が暴走を始める一歩手前状態を維持しなければ、白哉相手の卍解維持は出来ない。が、今の一護の状態は、自分の霊圧を制御しきれずに暴走し掛けている。
 一護はチッと舌打ちすると、霊圧の鎧を厚くする。
 それでも落ち着きを見せない霊圧に、首から下げているペンダントに触れながら唱える。

「金紗! 晶露!!」

 一護の左手の中に現れた刀の刃先から霊球が次々飛び出し白哉を囲んでいく。

「何の真似だ?」
「流石に卍解修得してから十日余りじゃ、五十年以上修練してきた隊長様と対等に戦り合うなんてのは無理だからね。知らない事にはお弱いらしいから利用させて貰うまでだ。」

 剣先から飛び出してくる霊球に、次々霊圧が籠められていく様を見て取り、白哉は霊球を破壊しようとするが、霊球はするりと白哉の剣先から逃げる。
 霊球を破壊するよりも一護を斬る方が得策と考えて一護を捉えようとするが、一護の霊圧を孕んだ霊球は金色の光を放ち邪魔になる。

「白雷。」

 一護の呟きに応じて、霊球の一部が白哉に向かって白い光線を放つ。
 咄嗟に張った断空で避けるが、反対側から蒼い光が降り注ぐ。

「蒼火墜。」

 遅れて一護の声が耳に届いた。
 断空が間に合わず何発か食らってしまう。

「鬼道が使えるとは知らなかったな。」
「奥の手ってのは、隠しとくもんじゃねぇの?」

 この程度の鬼道が奥の手というなら、大した力は持っていないという事になる。

「この空間はあんたの霊圧で満ちてる。って事は此処で起こった何もかも外部には漏れないって事だからな。感謝だ。」

 一護の言葉にふと疑問を覚える。が、そんな事に構っている場合ではない。

「そろそろ決着を着けるとするか。」
「ありがたいな。これ以上長引くと後に響く。」
「後、だと……?」
「あんた一人倒したからって、それでルキアを処刑しようと思う奴がいなくなるわけじゃない。私はこの後が控えてんだよ。」
「……よくも愚弄してくれるものだ。二度とそのような事言わせぬ。」

 深手を負っているのは白哉の方で、一護は数は多いが深くはない。

「千本桜景厳、終景・白帝剣。」

 剣から溢れた霊圧が、翼を広げた鳥のような形を作る。

「綺麗なものだな。」

 一護は呟くと、天鎖斬月を構える。

「悪いが私にはそんな凄い技はないぞ。斬月は私の霊圧を喰って斬撃に霊圧を載せて飛ばす技しか教えちゃくれなかったからな。」

 一護は霊圧を籠めて天鎖斬月を揮う。

「月牙弾道。」

 静かに、技を放つ。
 一護の眼は最後まで冷静だった、と白哉の記憶に残った。
 激突した二人の位置が入れ替わり、一護の体から血飛沫が上がる。天鎖斬月を支えに崩れないように体を保った一護の後ろで、支えに出来る剣を失った白哉の体からも血飛沫が上がる。

「一つ訊きたい。」

 一護は静かに問いを口にする。

「何故、兄であるあんたが、ルキアを処刑しようとする?」
「………知れた事。それが掟だからだ。」
「死神能力譲渡は、冤罪なのにか?」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙