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MEMORY 尸魂界篇

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 ふうっと深い溜息を吐く一護に、死神達は目を瞠る。何より正確な戦力の分析と冷静な状況判断を、僅か十六の子供がしてのける事は寧ろ脅威だった。

「そんで一護ちゃんは、対戦するたんびに力を高めとったって事なんやね。」
「おそらくは藍染の思惑通りに、な。」

 苦い表情をする一護に、現世での無表情に馴れている雨竜や茶渡は思いがけず一護の表情が動く事に驚いていた。

「そんでも一護ちゃん、藍染隊長の思惑を見事に外したやないの。」
「あれは私じゃなくて浦原さん。」

 一護は溜息を吐いてルキアを見遣る。

「浦原さんが隠し持ってたのを見つけた時に、同じ見掛けの別物を作ってくれって言ったら、ルキアや私の命と引き換えにするほどの物じゃないから持ってけって渡してくれた。」

 一護の言葉に“鬼の喜助”を知る者達に驚愕が走る。
 この一件に、浦原が関わる事は避けられないらしいと、元柳斎は内心で溜息を吐いた。

「藍染の話を儂らに届ける為に天挺空羅を使ったのは判るが、藍染と対峙しながらでよく使えたの。」

 話を逸らすように元柳斎が口を開くと、一護はチラリと白哉に視線を向ける。

「双殛の開放を上から見下ろしている時に距離を測っておいたお陰で、磔架を壊してから白哉と対戦している間に、地面に描けたんだよな。天挺空羅。」
「!」

 一護の言葉で、白哉は一護が白哉と対峙しながら月牙放散や月牙天衝を放つ時にやけに地面に筋を刻んでいた事を思い出す。

「兄は私と対峙しながらそんな事まで為していたというのか?」
「霊圧籠めなきゃならないし、敵が紋の上にいなきゃ送れないから大きいのが必要だったんで。」
「………よもや、私の殲景まで利用したのか?」
「あれのお陰で、藍染は気付かなかったみたいだな。反膜で浮き上がって、初めて気が付いたんじゃね?」

 肩を竦める一護に、ギンが呆気に取られる。

「あん時に不自然なまでに霊圧の影響範囲を拡げとったんは、地面に刻んだ紋を隠す為やったん?」
「うん。だっていくら白哉と戦ったばかりだからって、白哉の霊圧残滓がない所に、私の霊圧残滓が多くあったら不自然が過ぎて探られるじゃん。」
「藍染隊長やったら、あの時の話聞かれたからてどうという事あらへんのと違う?」
「あの藍染が、浦原さんや私に手玉に取られた事を護廷に知られて、本当に何とも思わないのか? 奴は私が鬼道を使えないわけじゃない事知らないだろう?」
「あ、そうやね。霊殊核やっけ? 暴発したんを一護ちゃんが調整出来ん所為やって思うとったんやわ。……もしかして、反膜で浮き上がった時に見えた天挺空羅の紋を描いたんが朽木隊長って、錯覚させる心算やってん?」
「思い違いをしてくれてたら後が楽かもねぇ?」

 にやりと笑う一護に、ギンは溜息を吐き両手を肩の高さに上げて降参のポーズを取る。

「かなんなぁ。けど、藍染はんの強さは半端やないで? ええの?」
「……手がないわけじゃ、ないんだ。」

 ぽつりと言って、一護は唇を噛み締める。
 知っている答えを、一護は何があっても口にする心算はなかった。
 瞼も降ろして口を噤んだ一護に、ギンは何かあるとは思ったが、訊く心算はなかった。

「で、市丸の事だけど。」
「ふむ。」
「匂い、とかは私の勘だけど、多分、市丸が藍染を敵としている理由に思い当たる節があるんだけど?」
「なんじゃ?」

 話を切り替えて口を開いた一護に、場が引き締まる。

「今回、藍染は浦原さんが作った崩玉を奪う為にあれこれ策を弄したわけだけど、奴、自分でも崩玉を作ってないか?」

 一護はギンに視線を真っ直ぐ据えて質問した。

「……判るん?」
「やっぱそうかぁ。奴のいかにも『自分は頭が良いんです~』な態度から、やってるかも知れないって思ったんだけど、当たりかぁ。」

 一護が深く溜息を吐くと、それがどうしたと言わんばかりに元柳斎が眉を顰める。

「藍染は、自分で作った崩玉に死神とか流魂街の住人とかの魂魄を与えてたんじゃないか?」
「……よう、其処まで見当が付くもんやねぇ。感心するわぁ。」
「市丸。あんたの大切な誰かが、その被害者になったな?」
「………当たりや。」
「ギンにそんな大切な人がいたの?」

 乱菊の声に、一護は黙り、ギンも無言を貫いた。
 一護の“記憶”では、当時のギンは白哉よりも幼かった筈だ。その幼い子供に、血塗られた道を選ばせたのが自分の存在だなどと、ギンは知られたくはないだろう。

「藍染が自分で作った崩玉は、奴の手元にあるのか?」
「あるけど……あれは、魂魄を要求するばかりの代物で、使い物にならんようやよ。」

 ふうん、と一護は呟き、懐から取り出した崩玉を翳す。

「一護……。」
「ん?」

 隣から懸った声に、一護はルキアを見る。

「それが私の魂魄に隠されていた代物だというのなら、一体何時、私の中から取り出されたのだ?」
「……多分、浦原さんがルキアの義骸をメンテナンスした時。」

 ルキアが眉を顰める。ルキアの義骸のメンテナンスは、一護が料金を持ってくれると言ってくれて、月に一度くらいの割で受けた筈だ。

「私の中から崩玉を抜いたのなら、浦原は何故、普通の義骸に換えてくれなかったのだ? さすれば霊力が戻り、一護に持っていかれた霊力も誤魔化せたではないか。」
「あ~。その分も、ルキアは浦原さんを怒って良いと思うぞ。」
「何?」
「所謂、敵を欺くには味方から、だな。浦原さんが、紅姫の柄に忍ばせて隠し持ってたのを、偶然私が見つけなきゃ、白を切り通す心算だったんだ、あの人。」
「何だとっ⁉」
「ルキアの命と引き換えにするほどの価値があるとは思ってないっつったから、私が貰い受けてきた。」
「何時だっ⁉」
「ルキアが尸魂界に連れ戻されてから、一週間くらいした頃、かな。」

 小首を傾げる一護は可愛いと思う。思うが、一護も一護ではないか。
 一護は始めから藍染の狙いを知っていたらしいのに、ルキアを囮にして、その所為で恋次や白哉が深手を負った。

「それなら、一護も、恋次と兄様に謝罪すべきではないか?」
「あ?」
「回りくどい真似をしなければ、兄様達が傷を負う事はなかったのではないか?」

 眉を顰めて見上げてくるルキアに、一護は苦笑する。

「四十六室の異変に気付かずに従順に従った結果だろ。恋次にはルキア抱えての囮を引き受けてくれた事で、白哉には藍染から庇ってくれた事で、感謝はしてるが謝罪はしないぞ。」
「恋次も囮だと知っていたのか?」
「知ってたぞ。藍染た……奴の狙いの物がルキアの中にはなくなってる事も聞いてた。」

 傷を負ったのは自分が未熟だったからだ、と恋次が言う。

「兄様は……。」
「話してなかったさ。朽木隊長が、旅禍の言葉なんぞ信じるわけがなかろ。」

 一護は膠も無い。

「あの時、兄様が藍染……から、一護を庇ったのは……。」
「私が女だって知った所為らしい。」
「それだけで庇うのは変だ。」
「ルキアには勇音さんの天挺空羅、聞こえてなかったのか?」
「虎徹副隊長の?」

 首を傾げるルキアに、勇音がルキアには報せていなかったと口を挟む。
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙